富士時報
第62巻第6号(1989年6月)

水処理と物語

宗宮  功

上下水道の電機・計装技術の動向

佐武  昇,河野道之輔,井部 成身

21世紀に向けて、都市機能を維持・充実させるために、上下水道事業にも計画的な投資が行われている。上水道は高普及率時代を迎え、量から質への新たな指標が掲げられ、また下水道でも量と質の両面の課題がある。一方、電子技術の進歩は目覚ましく、ハードウェアの進歩による機能の多彩化、またソフトウェア面でも画像処理、人工知能技術、診断技術が急速に進歩してきており、これらの技術を活用して、上下水道分野への適用が活発となってきた。本稿では、行政の課題と電機・計装システム技術について展望する。

上下水道と高度情報システム

臼井 正和,上本 憲嗣,高見澤真司

上下水道をとりまく環境が変貌している。需要家のニーズはより高質なサービスを望み、自治体内でも職員の労働環境改善が叫ばれている。一方、情報処理や通信にかかわる技術の発展は目覚しく、これらの技術を集約した高度情報システムの構築が可能となった。
本稿では上下水道の持つ課題と高度情報システム導入とのかかわりについて、ニーズを整理し、上下水道向け高度情報システムを提案、解説する。

上下水道プロセスオートメーションにおけるEIC統合化制御システム

伊藤 晴夫,上本 憲嗣

上下水道のプロセスオートメーションは電気制御システム(E)、計装制御システム(I)、コンピュータシステム(C)から構成されている。しかし各システム間のインタフェースの不統一やシステム構成の複雑さ、あるいは顧客の独自性・要求機能がシステムに十分反映されていない点などが指摘されている。今回、富士電機は電気・計装・コンピュータの3要素をより密接に結合させた「統合化制御システム」を開発したのでここに紹介する。

上水道監視制御システム

伊藤 晴夫,佐々木裕一

現在、上水道監視制御システムは水道施設の円滑な運転に不可欠な設備となってきた。富士電機はCIM構想による大規模監視制御システム新FAINS-1000シリーズを開発した。これは水道事業を水を作る企業とみたて、経営レベルからローカルコントロールレベルまで5段階に階層化したシステムである。また、小規模事業体は信頼性・維持管理が容易で経済的なシステムが望まれている。本稿では光センサ、ワークステーション、インテリジェントコントロールセンタなどで構成された小規模監視制御システムを紹介する。

下水道監視制御システム

松永 岩夫,泉田 明男,長原 洋二

下水道施設の建設は段階的に施工され、長期間に及ぶ。このため、下水道監視制御システムは年度計画に合わせて、増設性・拡張性が良く、また、システムの発展性も強く求められている。更に施設運用の信頼性確保や効率的な維持管理を目的として、経済的で信頼性の高い、また高品質なシステムが求められている。
富士電機では、これらの要求にこたえ、コンピュータ技術や通信技術の進歩を基盤にして、小規模から大規模までに対応できる、下水道監視制御システム「新FAINSシリーズ」を製品化した。

上下水道知識工学応用システム

守本 正範,鬼塚 正徳,山本 正典

上下水道におけるプラント運転管理の高度化のためにAIの適用が進んでいる。富士電機は、制御用AIツールEIXAX,ファジィAIツールFRUITAX、診断用AIツールCOMEX,FA用AIツールФNETを開発した。本稿では、EIXAXをベースに数理計画モデルと連携した知的最適制御(KOCP)を開発、上水道水運用制御に応用した事例とFRUITAXの下水道雨水ポンプ制御への応用、COMEXの汚泥処理運用支援への応用について紹介する。

上水道施設の計画・運転・維持管理支援システム

古山 仁則,斎藤 文弘

上水道事業は高い普及率を達成し、量から質への転換と経営基盤の強化が課題となっている。これらの課題の解決に資する業務支援システムを開発したので、設計計画、施設運転、維持管理の3分野における例をとりあげて、その機能・導入効果について紹介する。
特に維持管理支援システムについては、現在開発中のエキスパートシステムによる断水区解析についても述べる。

下水道施設の計画・設計・維持管理支援システム

岡田 俊雄,多田  弘,八代 一伸

下水道施設にかかわる計画、設計、維持管理の各業務を支援するパーソナルコンピュータによる支援システムを紹介する。計画支援システムは種々の計画情報をデータベース化し、計画立案に即した情報提供をする。設計支援システムは管きょの計画路線の決定、管きょの縦断図の自動作成を支援する。また、維持管理システムでは下水道台帳管理、水洗化促進管理、供用区域管理、更に機器の保守管理を支援している。そして、各業務で扱われる各種ドキュメントを円滑に管理できるドキュメント管理システムも合わせて紹介する。

配水管網の水質解析シュミレーション技術

伊藤 晴夫,黒谷 憲一,窪田 真和

配水管網の水質、主として残留塩素濃度の解析技術について、解析方法、適用技術、解析例を述べる。
特に、水質の時間変動を求める動的水質解析法とそれを用いた塩素注入量制御法の新しい方式を紹介する。
水質に関するシステム技術は、まだ緒についたばかりであり、不明な点が多い。今後、実システムへ適用して、これらの問題解決を図っていきたい。

上下水道向け電気設備用ローカルネットワークシステム

橋爪 彰一,中原 泰男,佐々木英雄

上下水道分野では情報ネットワーク化の推進と相まって、施設の工事計画、設計の効率化、工事施工の簡略化、工期の短縮、メンテナンスの簡便さなどの機能が要望されてきている。そこで、現場盤、コントロールセンタ、高圧配電盤内にユニットを内蔵しシリアル伝送をする「ローカルネットワークシステム」:商品名FALONET(Fuji Aqua Local NET work)を完成した。本稿では、FALONETのシステム構成、機能、特長、適用例について説明する。

上下水道用新水質自動分析計

西方  聡,篠原 泰三,中村 裕介

閉鎖性水域の富栄養化は今や大きな社会問題となっており、窒素、リンの除去及び自動計測の必要性が高まってきている。富士電機ではこの度、上下水道用新水質自動分析計を4機種〔アンモニア分析計、全窒素分析計、三成分窒素(T-N,NO2-N、NO3-N)分析計、全リン分析計〕新シリーズとして開発を完了した。
これらは電極が非接液、前処理は常温常圧の反応、無希釈で測定可能など自動測定に適した独自の測定原理を採用しており、機種ごとに測定原理、実試料の測定例について述べる。

水質検査ロボット AQUASTER

守本 正範,清水 康次,高安  誠

水質検査業務は検査項目が多く、分析の前処理にも多くの時間や労力を必要とする非常に煩雑な業務である。そこでこの問題を解決するために、6~12個の試料水この装置にセットするだけで、後は水質検査の前処理工程から水質分析、データ作表まで自動的に行えるように、前処理自動化装置に光電光度計とプリンタを内蔵した水質検査ロボットを開発した。本装置は上水試験方法に準拠しており、個人差の無い再現性の高いデータを得ることができる。

嫌気性・好気性バイオリアクタを用いた下水処理システム

佐々木康成,初又  繁,伊波 克雄

近年発展の目覚ましいバイオテクノロジーを応用した下水処理システムを開発し、パイロットプラントスケールで実証実験中である。本システムは嫌気性バイオリアクタ、好気勢バイオリアクタ、汚泥処理用嫌気性バイオリアクタから構成されている。主な特長は、(1)省エネルギー、低コストである、(2)汚泥発生量が少ない、(3)処理水質が良好である、(4)維持管理が容易である、などである。
本システムはこれらの特長から、ニーズが高まりつつある小規模分散形下水道に好適である。

上水道の高度処理とオゾン処理技術

酒井 英治,森岡 崇行,本山 信行

上水の水源水質の悪化に伴い、水道水の異臭味などの問題が注目されている。この対策として従来の浄水処理プロセスに対して、更にオゾン処理、活性炭処理、生物処理などの高度処理が導入されようとしている。
本稿では高度浄水処理の概要及びオゾン処理設備の構成、機能などを概説し、臭気物質のオゾン分解や接触池の混合特性、排オゾン分解触媒などの実験の概要を紹介する。

電気浸透脱水機

山口 幹昌,新井 利孝

上下水道を初めとする各種排水処理施設から発生する汚泥の減容化や、安定化の手段として脱水という操作は普遍的に用いられている。しかしながら、それらは機械的な炉過や圧搾力に頼る手段のため、ある一定の脱水の限界値を有していた。
今回、汚泥処理プロセス全体の効率の向上を目的とした、電気浸透脱水という、脱水性、経済性に優れた脱水システムを開発した。
本稿では、この電気浸透脱水の概要を紹介するとともに、その経済性などについても述べる。

上下水道用可変速制御装置の新技術

宮岸  徹,大澤  悟,佐々木英雄

交流電動機の回転速度制御技術の進歩は目覚ましく、VVVFインバータを初めとした応用製品の適用も広範囲にわたっている。
上下水道の分野でもトランジスタ式VVVFインバータの技術進歩に伴って、電動機の運転制御に新たな応用が行われている。富士電機は市場ニーズにマッチし、かつ信頼性の高い電動機の運転制御を行うため、電源高調波低減形VVVFインバータ、バッテリー駆動形電動弁VVVFインバータ、遠心分離形汚泥濃縮機の高効率運転について、新製品の開発及び適用技術の確立を行った。

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