富士時報
第62巻第8号(1989年8月)
電気鉄道技術特集
曽根 悟
重政 猛征,木下 繁則
電気鉄道は、大量輸送用交通機関の中枢として、極めて重要な位置付けにあり、このために、安全・快適などを追求した良質な輸送サービスの提供が要求される。この要求を、より完全に満たすためには、システム全体としてのインテリジェント化が必要であり、その手段としてエレクトロニクス化がある。ここでは、エレクトロニクス化関連の事項を中心に、電気鉄道分野の車両システム並びに地上システムについて、現状(若干の経過を含む)と今後の展望について概説する。
諸星 幸信,義則 直人,内藤 裕宣
GTOサイリスタの進歩に伴い、誘導電動機駆動による電気鉄道車両の実用化が急速に進められている。富士電機では、4,500V3,000Aの逆導通GTOサイリスタを適用した次世代新幹線電車及び直流電車用PWMコンバータ装置、VVVFインバータ装置及び主変圧器の開発を行い、地上総合組合せ試験を実施した。
本稿では、富士電機が開発した主回路システム及び機器の特徴と総組合せ試験結果について紹介する。
星野 栄雄,大堀 優,井上 一夫
東海旅客鉄道(株)が1989年3月から関西線に投入した213系新形電車の製作に当たって、富士電機はその電気システムの取りまとめに参画した。この電車では、界磁添加励磁制御方式を採用した主回路システムと低圧直流給電方式を採用した補助電源システムの協調設計を行い、添加励磁装置はじめ補助回路負荷機器の電気システムに最新のトランジスタ応用技術を盛り込むなどの方策により、総合的な小形・軽量化、省エネルギー化を図った。本稿では、電気システムの概要、富士電機が製作した機器、組合せ試験結果を紹介する。
諸星 幸信,千崎 文雄
新生JRの誕生とともに、各地に新形式車両が誕生し活躍している。在来線交流電車分野においても、小形・軽量、高性能、経済性を追及した新形車両783系、811系、719系が登場している。
今回、富士電機で製作した主制御整流装置RS400K、RS401K,RS52と各電車の主回路システム概要について述べる。特に783系、719系は交流回生ブレーキ方式を採用しており、同制御方式について紹介している。
石橋 秀明,小西 義弘,藤原 宏和
最近のパワーエレクトロニクス技術の進歩により、保守性に優れ、小形・軽量、低騒音の静止形電力変換装置を使用した車両用補助電源装置が増加している。
富士電機では、種々の静止形電力変換装置を使用した補助電源装置を多数製作・納入している。
本稿では、最近、富士電機が製作・納入した補助電源装置の中から、(1)721系新近郊形交流電車用、(2)24系客車用、(3)キハ85系特急気動車用、の3例についてその概要を紹介する。
矢野 和博,桐畑 文明
富士電機が所有する大形ゲートターンオフ(GTO)サイリスタ(4,500V 3,000Aアノードショート形、逆阻止形、逆導通形)について述べる。また、車両用半導体変換装置における大形GTOサイリスタの適用技術について、冷却技術を中心に現状と将来展望を紹介する。
古川 義夫,長谷 吉二,北島 宏
従来から、車両用冷房装置は直流架線電圧を補助電源装置で交流に変換し、誘導電動機によって駆動する方式が採用されている。車両用冷房装置は建築用に比べ、小形・軽量化が要求される。富士電機は直流架線電源から直接に直流電動機を駆動する直流冷房装置を開発し、需要家の要望にこたえている。この方式は電源装置が不要のため、交流方式に比べ、冷房設備のトータル設置スペース、重量、価格の点で短い編成や1両だけで運用される電車や冷房改造に適している。本稿ではその特長、方式や納入例などについて紹介する。
佐藤 洋,新井 隆,藤田 洋
電気鉄道分野では、最近地下鉄関係を中心に、運営に関連した設備を統合管理し、日常運用業務と保守業務の連係強化を図ることを目的とした設備管理システムが計画され始めている。設備の統合管理を的確に行うためには、計画時点における検討、体制の整備が重要である。
本稿では、電気鉄道用設備管理システムを計画する場合のポイント、富士電機のシステム設計思想を述べるとともに、既に電力、防災、信号、通信などを含めた各種設備の統合管理を実施している札幌市交通局設備指令システムの概要を紹介する。
平野 肇,牧野 喜郎,新井 隆
電気鉄道変電所、駅配電所などの制御保護装置は最近の変化が著しい。ディジタル保護リレーについては、従来の装置形に対し、ユニット形を製作中であり、制御装置については、分散型も使用され始めている。遠制装置については、マイクロプロセッサを応用したものが主である。監視システムとして、パーソナルコンピュータを応用した監視、記録装置が使用されている。これらについて、富士電機のハードウェア、システム構成例、機能、特長などについて紹介する。
田中 滋夫,津田 信吾,吉川 春樹
電気鉄道地上設備におけるパワーエレクトロニクス応用は、き電用整流器、回生電力処理装置、半導体直流遮断機などがあげられる。
本稿では、これらの応用分野全般のシステムについて概括し、幾つかの実納入システムについて述べる。更に、現在研究を進めている新直流き電システムについても紹介している。このシステムは直流3,000Vをき電しつつ、1,500V車両を適用できるというもので、現存車両の適用、変電所数の低減など鉄道電化費用削減に寄与できる特長あるものである。
田中 滋夫,粟飯原一雄,向峰 清
半導体素子を密封タンクに収納したユニットタンク方式フロン沸騰冷却整流器は、電気鉄道用のニーズである、高信頼性、無保守、不燃、無騒音などにこたえるものとして、広く採用されている。
最近の国際的なフロン生産、使用規制への状況に対応して、塩素を含まないフッ化炭素を冷媒とした新形整流器を開発した。
基本構造は従来品と同じであるが、これまでの製作、フィールドでの経験に基づき、より完成度を高めた。本稿では標準仕様、容量系列、構造、保護システムなどを紹介する。
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注
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