富士時報
第62巻第9号(1989年9月)

ファジィ理論の発展に期待して

北森 俊行

計測・制御技術の最近の動向

竹内  実,黒岩 重雄,安原  毅

計測・制御技術について、最近の技術動向及び富士電機の現状、展望を述べる。PA・FA用センサの伸長の中で、新世代電子式発信器FCXシリーズの発表、光計装システムFFIの拡充、分析計の拡大など、センサ技術の展開を記述する。また、制御技術として、トータルオートメーション・EIC統合を推進する分散形制御システムMICREXの拡大や、汎用調節計Zシリーズを応用したFREE LINK SYSTEMなど、ミニオートメーションシステムの多様化、更にアドバンスト制御・AI技術の適用について記述する。

新世代発信器FCXシリーズの開発

玉井  満

センサ、マイクロコンピュータ応用などに関する最新の技術を駆使した新世代発信器であるFCXシリーズ発信器の開発を行った。特に新センサは、シリコン微細加工技術と半導体ウェハプロセスの応用により、従来形センサに比べ飛躍的に小形化し、高精度で広い測定範囲をもつ圧力センサである。プロセスの測定対象に応じて広範囲の小形の検出器を用意し、回路については、マイクロエレクトロニクスによりインテリジェント化され、高度の機能や性能向上が図られている。

光ファイバ式フィールド計装システムFFIのファミリー拡大

富永  滋,渡部 好三,伊藤 悦郎

FFIシステムは、光ファイバ伝送の数々の特長をフィールド計装に生かしたもので、従来からの空気圧式、電子式に次ぐ第三世代の計装方式として開発され、現在では、単独で、又は電子式、空気圧式と混在して各種プラントで使用されている。FFIシステム及び構成機器については、既に数多く紹介されている。本稿では、新たにFFIファミリーに加わった光―空気圧ポジショナ、差圧式流量積算計、光ファイバ式現場指示計、マスタステーション(ラック形)の概要について紹介する。

小規模計装FREE LINK SYSTEMの展開

御厨  隆,渡辺 孝男,松田 俊夫

富士電機は、汎用調節計の新シリーズとして、汎用形のマイクロコントローラEと、高機能形のマイクロコントローラHを提供している。更にマイクロコントローラHの上位伝送機能を用いた小規模計装FREE LINK SYSTEMとして、汎用パーソナルコンピュータと組み合わせたP&Zシステム、プログラマブルコントローラMICREX-Fと組み合わせたF&Zシステムも準備している。本稿では、FREE LINK SYSTEMの実プロセスへの適用例を中心に紹介する。

分散形制御システムMICREXの拡大

生駒 雅一,福住 光記,西川  彰

分散形制御システムMICREXは、昭和50年に発表以来、数回のレベルアップを経て今日に至っている。昭和62年年秋のレベルアップで、従来のシステムを規模、機能、性能ともに飛躍的に向上させた。これらはユーザーに高く評価され、多くの実績を上げている。これらの活動の中で、更に顧客の要望や先端技術の導入により、MICREXに対し、日々様々な拡大・レベルアップを行っている。ここでは、その数例を紹介する。

遠方監視制御装置

古川 幸信,日野 範明,塚本 弘和

遠方監視制御装置は、新分野への適用や集中管理の拡充といった世の中の動きに合わせて大容量データの高速伝送の要求が強まっている。この度、伝送プロトコルにHDLC方式を採用した新遠方監視制御装置(SAS-50/500)を開発したので紹介する。最大、9,600ビット/秒の高速伝送、伝送容量で1、024点の監視。256点の計測が可能であるとともに、ユニットのモジュール化などにより放射状・複合・階層化の自由なシステム構築を実現している。

AI・アドバンスト制御用ワークステーション

黒谷 憲一,高野 正心

プロセス制御分野をはじめ、FA、メカトロニクス分野において、AIの応用を含めたアドバンスト制御の実用化が進んでいる。AWSは、これらの適用のためのエンジニアリング作業を効率化することを目的とし、数式モデルをベースにした従来形制御からAI形制御を統一・包含した「統合化制御系設計支援ソフトウェアパッケージ」をワークステーションに搭載した。
マルチウィンドウで、日本語メニューによる対話形入出力やグラフ出力により、制御対象のモデル化や制御設計、知識ベースの構築などの作業が容易に行える。

自家用火力発電設備計測制御システム

村西 弘明,松崎 勇二

オイルショック以降のエネルギー情勢の変化、円高による経済情勢の変化は、産業界におけるエネルギー供給の主力を担う火力発電分野にも大きな変化を与えた。一方、近年のディジタル技術の著しい発達に伴い、高機能・高信頼性のディジタル制御装置が広く普及し、火力発電分野においても導入が活発化し、上記情勢の変化に対応した合理化が推し進められている。
本稿では、自家用火力発電計測制御システムにおける技術動向と、これに対する実施例を紹介する。

(財)電力中央研究所納入溶融炭酸塩形燃料電池発電システム実験設備

伊崎 慶之,丸山 晋一,小林 益之

燃料電池発電プラントの開発と実用化への関心が大きな高まりを見せている中、富士電機は、10kW級溶融炭酸塩形燃料電池実験設備を(財)電力中央研究所に納入した。本設備は、機械、配管、電気、計装、コンピュータすべてを富士電機が納入しており、(1)新世代光計装FFIによる監視・制御の実施、(2)起動・停止、試験手順、データ収集をDCS(MICREX)により大幅に自動化・合理化、(3)広範囲な運転条件(最大圧力7kg/cm2・G、最高温度700℃)、(4)3段階の非常停止(ES-1,2,3)などを特徴とする画期的な燃料電池実験設備である

鉄鋼における最近の計測制御システム

森  孝一,中谷 一彦,笹谷 俊幸

鉄鋼プラントの計測制御技術の動向について、社会動向、技術動向を踏まえて、最近のシステム事例により、高炉から熱処理炉までの全般にわたって紹介する。
各プラント共通の動向として、EIC統合化システム、アドバンスト制御、AIの導入が進んでいる。

EIC統合を目指した大規模DCSのプラントへの適用

藤原  哲,小出 哲也,鈴木 孝通

近年、製鉄所のエネルギーセンタ機能向上に対する力点は、省力化におかれており、従来のアナログ計装をディジタル計装にリプレースすることで、オペレーションの大幅な合理化を目指す傾向にある。
本稿では、NKK京浜製鉄所におけるエネルギーセンタを例に、計装制御のみならず、コンピュータシステムとデータベースを共用し、テレメータ・テレコントロール装置を使用した遠隔監視操作も可能なEIC統合化システムを紹介する。

最近の都市ごみ焼却計測制御システム

小林 恒明,後藤 正晴

最近の都市の清掃工場は、公害防止設備、余熱利用設備などを備え、大規模かつ複合プラントとなっている。これらの設備を効率よく、安全に運転・管理するために、分散形制御システム(DCS)MICREXが積極的に導入されるようになってきた。
本稿では、清掃工場の計測制御システムの動向について説明し、富士電機の最新DCSを用いた都市ごみ焼却計測制御システムIICS-1000を紹介する。また、システム内で重要な役割を占めるようになってきたコンピュータシステムについて説明する。

セメント・ガラス工場における計測制御システム

高田  憲

セメント工場あるいはガラス工場においては、計装制御システムに富士電機の推奨するEIC統合化システムが採用される例が多い。分散形制御システムMICREXをはじめとする制御システムは、このEIC統合化システムを実現するために開発された製品であり、数多くの特長を備えている。
本稿では、セメント工場とガラス工場に使用されるMICREXを主体とする計測制御システムの基本的なコンセプトについて、MICREXの特長をまじえながら紹介する。

最近の化学プラントにおけるDCS

東  尚巳

近年、化学プラントにおいては、従来計器の更新時期に計装方式を分散形制御システム(DCS)に変更するのが通例となっている。特に最近ではDCSの高機能化により、工場単位や全社的な合理化システムとしてのDCS化が盛んである。
本稿では、爆発性反応プロセスを含む大規模化学プラントでの事例を基に、DCS化の目的、システムの公正と特長、導入効果について紹介する。

SBSプラントの計測制御システム

劉   青,ハンチョンギ,島田 耕司

中国石油化工総公司岳陽石油化工総廠ゴム廠向けのSBSプラント用分散形制御システムを北京燕山石油化工公司研究院と共同開発した。SBSプラントのプロセス技術は中国側が有しており、富士電機はハードウェアを提供した。本システムの製造形態こそ、本格的な日中合作案件であると関係者は自負している。
本稿では、SBS生産設備、制御システムの構成と機器の機能、反応槽の制御方式、マンマシンインタフェースについて紹介している。また、SBSについても紹介している。

ビールプラントにおける計測制御システム

世木 良成

近年のビール需要の高まり、ニーズの多様化、省力化及びビールの品質の向上と均一化を目的としてビール製造会社では大規模な設備投資を行っている。また一方では、高度に発達したコンピュータシステムとディジタル機器を用いた自動化技術があり、それらの積極的な導入が図られている。ここでは、ビール醸造工場における最近の計測制御システムの例としてサントリー(株)利根川ブルワリーの濾過工程制御システムを紹介する。

自動車工場における設備管理システム

後藤 光平,梅基 一生,宮原 明彦

自動車工場においてもユーティリティの維持管理は重要性を増し、安全で効率の良いシステムが求められている。
本稿では、本田技研工業(株)に納入した設備管理システムについて、その概要を紹介する。設備、システム構成のほか、工場内LAN使用によるCIMの構成、保守管理の自動化などの特長について述べる。

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