富士時報
第62巻第11号(1989年11月)

特集論文

半導体複合デバイス技術特集に寄せて

大見 忠弘

半導体複合デバイス技術の現状と展望

内田 喜之

パワーデバイスをベースにした半導体複合デバイス、すなわちモノリシック形インテリジェントパワーデバイス、パワーモジュール、パワーハイブリッドICなどの技術動向についての考えを述べる。パワートランジスタ、パワーMOSFET,IGBTなどのパワーデバイスの高性能化、多様化の動きは著しい。更に、デバイス設計、半導体プロセス、パッケージ材料などの分野での技術革新も顕著である。これら技術の総合的成果として、複合化、インテリジェント化が進み、かつ従来より小形・軽量化されたデバイスが開発されつつある。

自動車用インテリジェントパワーMOSFET

藤平 龍彦,吉田 和彦,熊谷 直樹

自動車用インテリジェントパワーMOSFETスイッチ(IPS)を開発した。60V-3AのハイサイドスイッチをTO-220-5 pin のフルモールドに収納した。過熱、過電流、過電圧に対する保護、負荷開放検出、状態出力の各機能とレベルシフトドライバを内蔵し、マイクロコンピュータからの直接駆動を可能にした。-11Vの逆電圧クランプによりソレノイドドライブ時の高速化を図るとともに、自動車用に不可欠なサージ耐量を大幅に強化してある。自己分離形CMOS/DMOSプロセスによる1チップ構成とすることで、経済性の向上を図った。

小形化ダイオードモジュール

村上 幸男,鈴木 健司,長畦 文男

汎用インバータ、NC工作機械、ロボット、溶接機などのパワーエレクトロニクス製品の電源整流用ダイオードモジュールの新系列品の開発を行った。本ダイオードモジュールは、アルミ絶縁基板の採用、平滑コンデンサへの突入電流を考慮したチップ設計、拡散プロフィル、パッシベーション設計の見直しなどにより、小形・軽量化を図った。また、エポキシ樹脂直モールド、チップ用銅ベースの形状の改良により、高いパワーサイクル耐量、温度サイクル耐量を実現した。

パワー集積モジュール

新井 悦男,巣山 廣登,小田 佳典

エアコンディショナ(エアコン)用インバータ向けにパワー集積モジュールを開発したので紹介する。主な内蔵デバイスはAC100V電源入力倍電圧整流用2個組みダイオードブリッジ、インバータ用6個組パワートランジスタと温度検出センサである。新形モジュール構造の採用により薄形でコンパクトなパッケージを実現した。また、エアコン用インバータへの実装を十分考慮して端子形状、配列を設計した。

インバータ用インテリジェントパワーモジュール

重兼 寿夫,寺沢 徳保,宝泉  徹

従来、ベース電流が大きくコンパクトなドライブ回路が作りにくいなどの理由で30A以上のインテリジェントモジュールの実現は困難とされてきた。このたび、高hFEトランジスタを用いるなど新技術を開発し、500V/30A,50A,75Aのインバータ用インテリジェントモジュールを開発した。このモジュールにはインバータ用とブレーキ用に7個のトランジスタと高速ダイオード、並びにそのドライブ回路、ベース逆バイアス電源、光絶縁回路、過電流保護、過熱保護や自己診断機能を内蔵させている。

IGBT用ゲートドライブモジュール

桑原今朝信,寺沢 徳保,笹川 清明

近年、IGBTの採用が本格化してきた。従来のバイポーラトランジスタ用のベースドライブハイブリッドICに加えて、IGBTの性能を十分に引き出すためのドライブ用ハイブリッドIC(IGBT用ゲートドライブモジュール)を開発したので紹介する。本ハイブリッドICの適用によりIGBTを高速スイッチングモードで、また負荷短絡に対して安全に動作させることが可能である。

スイッチング電源用ハイブリッドIC

古田 政美,佐藤 博世,高宮 喜和

近年、小形化される電子機器の電源は、高効率、小形、軽量の特長を生かしたスイッチング電源が主流になりつつあるが、これは更に小形・軽量を目指し、高周波・高性能なスイッチング電源になりつつある。こうした電源の要求に対応し、主スイッチ素子としてのMOSFETと制御回路を熱伝導の良い金属基板に一体構造でまとめ、250Wまでの中容量スイッチング電源を簡単に構成できるようにしたパワーハイブリッドICを開発した。

超小型DC-DCコンバータ

古田 政美,逸見 徳幸,米田  保

バッテリー及びACアダプタを電源とする携帯用電子機器では、機器内部で必要とするDC電圧に変換する小形のDC-DCコンバータが必要とされるが、近年では更にその小形軽量の要求が強くなっている。この要求にこたえるため従来必要としていた回路基板、シールドケースを削除し、回路部品すべてをリアクトルの磁性体の中に組み込み、この磁性体に直接パターンを生成し回路を構成する構造とした超小型DC-DCコンバータを開発したので紹介する。

半導体圧力センサの応用技術

酒井 利明

半導体式圧力センサは、シリコンのピエゾ抵抗効果を利用するもので、半導体プロセス技術、微細加工技術の進展とともに集積化・低コスト化が進み、自動車、家電、産業、医療に用途が拡大している。富士電機では、ゲージ部、温度補償抵抗部、オペアンプ部をワンチップに集積化して小形化した圧力センサの開発、系列化を進めており、その概要、応用について紹介する。

普通論文

表面実装用半導体デバイスの系列化

菅沼 信孝,岩原 光政,荻村 好友

エレクトロニクス産業における電子機器の小形・軽量・多機能化が進む中で、電子部品を高密度・高速で自動装着する表面実装法が民生機器・産業機器を問わず拡大しており、これに対応した表面実装用半導体デバイスの開発・製品化が強く望まれている。
富士電機では、この市場動向に対応した各種表面実装用半導体デバイスを開発し製品化している。本稿では小電力用ダイオードを中心に紹介する。

製紙工場における塗料調成プラントの集中監視制御システム

河田 哲生,松本 正一,小野寺辰男

近年、製紙業界では著しい紙の需要の伸びと品質に対するニーズの多様化に伴い、生産設備の新規建設・増強が図られている。この中で、某製紙工場における塗料調成プラントの自動化に伴い、EIC統合化を図った塗料調成プラント集中監視制御システムを受注納入した。本システム上質紙の生産工程において、紙面に塗布する塗料の配合調成工程に適用したもので、データベース機能とプラントの集中監視・操作にUPOS,PID制御とシーケンス制御にMICREX-Fを使用した。

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