富士時報
第63巻第5号(1990年5月)
電気加熱特集/コージェネレーション特集
電気加熱特集論文
電気加熱の現状と展望
久保田 勉,大森 次治
本稿では、富士電機が業界を代表する優れた技術を開発・育成してきた誘導加熱とアーク加熱について、技術と需要動向について述べる。誘導炉は昭和39年に1号機を納入以来、今日まで約1,200台に達し、現在は高周波炉を主体に製作している。誘導加熱装置はビレットヒータ、エッジヒータ、薄板加熱装置など200台以上の納入実績がある。アーク加熱は、昭和4年に炉用変圧器を製作してから414台、7,125MVAに達し、平成元年には世界最大の130t直流アーク電源設備を製作した。
銅合金溶解自動注湯システム
川西 清和
自動注湯炉は、これまで主として自動車部品の鋳鉄鋳物業界で採用され発展してきたが、最近では銅合金の鋳物業界でも導入意欲が高まってきた。銅合金の自動注湯においては、製品品質の安定化という面からみて、溶湯温度の均一化と酸化の防止が基本的条件となる。このたび富士電機では、これらの条件を十分満足できる銅合金溶解自動注湯システムを完成したので、その概要を紹介する。
全自動夜間溶解システム
上野 定洋,加納 利行
従来の鋳鉄溶解には、主にキュポラやるつぼ形誘導炉が使用されてきた。全自動溶解システムは、鋳物工場の近代化を促進するために、富士電機が約120台の納入実績を有する溝形誘導炉を適用し、夜間電力を利用して全自動溶解するもので、中部電力(株)と共同で開発した。
本システムは、溶湯の連続測温、湯漏れ自動防止機構、操業自動管理装置など、新しい独自の技術を開発して鋳物工場の操業形態を刷新しようとするもので、その概要と適用例などを紹介する。
薄鋼板への誘導加熱の応用
松本 巌
薄鋼板への誘導加熱技術の利用は、比較的高温域(600℃以下)にまで範囲が拡大してきている。
本稿では、現在使用されている温度(300℃以上)での鋼板の磁気特性について、実験データから50kHzにおける鋼板の飽和磁束密度対温度曲線を計算し、紹介する。
トランジスタ式ビレットヒータ
原 雅人
富士電機が鍛造用ビレットヒータの製作を始めてから約10年経過し、その間に約120台の納入実績を上げることができた。ビレットヒータの高周波電源は、サイリスタ式が主流であったが、最近では半導体パワーデバイスの発展により、コンパクトで高効率のトランジスタ式が多くなっている。トランジスタ式ビレットヒータの販売実績は、中小規模の顧客を中心に、この2年間で急速に伸びてきている。本稿では、このトランジスタ式ビレットヒータF180H、F300Hについて紹介する。
新形ダイスヒータ
池田 泰幸
富士電機が急速加熱を主目的にダイスとリングを分離して過熱するという独自の誘導過熱式ダイスヒータを開発したのは、昭和53年である。今回、ダイスとリングを分離することなく急速過熱でき、しかもそのまま保温・均熱の行える誘導過熱式新形ダイスヒータを開発した。
直流アーク炉の電気計装設備
岡崎 金造
昭和63年にわが国ではじめて設置された直流アーク炉の成功と、翌年の世界最大直流アーク炉(130t)の順調な稼働は、大幅な生産性向上の期待とともに大きく脚光を浴びている。大形炉の建設が相次ぐなかで、富士電機もすでに3基目の試運転に入っている。
直流アーク炉は交流アーク炉に比べ、電極原単位、電力原単位も優位性をもち、電源系統に対するフリッカじょう乱も小さいという利点を有するが、電気計装システムはかなり複雑なものとなる。本稿では、システムの概要と系統じょう乱に関する運転実績を紹介する。
直接通電加熱
神尾 明,鯉江 和裕,西郷 宏治
直接通電加熱は、被加熱材料に直接通電し、ジュール熱を発生させて加熱する方式である。直接通電加熱電源装置として、従来、M-Gセット、IVR、グレボー、APRが使用されてきた。単相GTOインバータは、三相平衡負荷で低高調波であり、この方式で現在10,000kVA程度までの装置が製作可能である。応用例として、すずめっきラインのリフロー設備と工具の鍛造用棒鋼の加熱について紹介する。リフロー設備では、電源容量計算法、制御方法、加熱不均一性について考察し、最新の例を示す。
コージェネレーション特集論文
コージェネレーションの現状と展望
小寺 昭紀
コージェネレーションは一つの燃料源から電気と熱を同時に得るシステムで、従来の発電システムに比較して、総合エネルギー効率を70~80%に高めることが期待される。産業分野では古くから排熱、副生燃料などを利用したシステムが導入されてきているが、近年、省エネルギーの定着、熱需要の拡大などによって、民生分野にも広く普及してきてる。
本稿では、これら現状と普及のための条件、富士電機の取組みおよび将来展望について紹介する。
コージェネレーションシステム
大崎 勝,高野 安人,塩崎 靖
コージェネレーションシステムは、高いエネルギー効率が得られるため、産業用および民生用におけるエネルギーの効率的利用の有効手段として、今後ますます設置されるものと考えられる。本稿では、コージェネレーションの導入にあたってのシステム構成、運用形態、系統連系(コージェネレーションの系統連系技術要件)、諸官庁手続きなどについて紹介する。
コージェネレーション監視制御システム
腰 一昭,加藤 清,富永 純徳
コージェネレーションの監視制御システムは、コージェネレーション設備だけではなく、工場のプロセス管理、変電所の監視制御などにも対応できる広範囲なシステム構築が必要である。
コージェネレーション設備の総合運転管理システムとして、監視制御のTOMFINEシリーズ、トランジスタチョッパ方式のHIREX-85シリーズ、ディジタル保護リレーなどを紹介する。
富士パッケージ形コージェネレーションシステム
比良 允幸,島田 陽二,村山 寛
富士電機は、出力範囲が260~456kWのディーゼルエンジンを使用したパッケージ形コージェネレーションシステム(FCGPシステム)を開発した。本システムは電力会社の系統に連系して運転され、電力と温水を同時に供給するシステムである。温水負荷が安定している場合には、70~80%の総合エネルギー効率を達成できる。本システムは、発電装置パッケージ、排熱回収装置、発電機盤、系統連系保護継電器盤などによって構成され、ユニットごとに標準化されている。
産業用コージェネレーション設備
秋山 芳夫,渡辺 誠,堀江 芳昭
産業分野で多く採用されているのは、ディーゼルエンジン方式によるコージェネレーションシステムであり、排熱回収形態では温水回収が約半数で、蒸気回収および温水・蒸気回収とで約半数の利用状況になっている。
本稿では、産業用コージェネレーションの需要動向と納入事例について紹介する。
民生用コージェネレーションシステム
横幕 博行,中村 信男,日下 豊
民生用コージェネレーションシステムは、通商産業省から「系統連系技術要件ガイドライン」が示され、商用系統との連系が可能となったことなどを背景として急速に普及し、昭和59年から平成元年3月までにおよそ250件の設置状況となっている。
民生用としては、ホテル、病院、事務所、レジャー施設などがあるが、本稿ではホテルおよびレジャー施設の納入事例を含めて民生用コージェネレーションシステムの導入状況、特徴などについて紹介する。
-
注
-
本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。