富士時報
第63巻第7号(1990年7月)
汎用インバータ・サーボシステム特集
深尾 正
中村 和男,柳瀬 孝雄
汎用トランジスタインバータ・サーボシステムは、産業界の好況に支えられて活況を呈している。また、市場からの汎用可変速システムへの要求もFA機械など高級化志向が顕著となっている。富士電機ではこれらに対応して、汎用トランジスタインバータの新系列、G7シリーズを開発、発売した。32ビットDSPを搭載した多機能、高性能インバータである。またサーボシステムもディジタルサーボ、PCと結合した位置決めシステムなどを開発した。本稿では富士電機の汎用可変速システムの全系列を紹介する。
中嶋 幸男,川畑志農夫,松本 吉弘
汎用インバータFVR-G7シリーズは、32ビットDSPと超LSI,ASICなどにより、高性能、多機能化を図ったシステムインバータである。すべての操作はタッチパネルモニタで対話形式の構成をとり、従来の6倍の機能を簡単に設定できるように設計されている。最新のテクノロジーをベースに、豊富な機種シリーズとより広範囲の流通を目ざした付加価値の高いインバータである。
祖父江 勝,今村 一彦,大阿久康之
汎用インバータFVR-K7Sは、一般産業分野における装置の小形化要求にこたえて、32ビットDSP,超LSI,インバータ専用複合パワーモジュール、高熱伝導プリント基板などの新技術を開発、採用したコンパクト形全ディジタルインバータである。
富士電機の従来機種に対し、取付面積および体積ともに約50%に小形化し、さらに全閉構造を実現している。
汎用機として必要な機能を十分に備えている。なお運転操作は、タッチパネルで簡単に行うことができる。
藤原 喜隆,川畑志農夫,山添 勝
標準の誘導電動機を可変速駆動するトランジスタインバータFRENIC5000G/Pシリーズに、新開発のトルク演算機能を適用し、トルク制限制御やすべり補償制御などを可能にして、新しくFRENIC5000G7/P7シリーズを系列化した。
新シリーズは容量系列の拡大や、シリアルインタフェースなどをそなえ、さらにFA化の要求にこたえ、システム対応能力を大幅に拡張した。
本稿ではその概要、特長、標準仕様および適用技術の一端を紹介する。
八須 康明,藤田 光悦
近年、工作機械業界では加工時間短縮のための一つの方法として複合加工化を進め、主軸駆動装置に高速応答・高精度の要求が高まっている。これにこたえてディジタルACスピンドルドライブシステムFRENIC5000V3シリーズを製品化した。
このシリーズは、高速マイクロプロセッサによるDDC化を行い、高速応答・低トルクリプルを実現し、コンパクトなシステムとしている。本稿では、その仕様、特長、オプションを含めた運転特性について概要を紹介する。
鈴木 忠臣,高橋 哲朗,井上 幸雄
磁束制御形ACスピンドル駆動インバータFRENIC5000M2シリーズは、ベクトル制御に近い性能をもった経済的な工作機械用インバータとして、大変好評を得ている。
標準シリーズの容量系列拡大と同時に、広範囲定出力特性をもつFRENIC5000Wシリーズを系列に加えた。また速度制御ループを持たないV/f制御インバータで角度割り出し、オリエンテーション制御オプションなどをラインアップに加え、その適用範囲を拡大した。
松枝 弘宣,廣津 和則,竹並 克也
一般産業用汎用インバータに対し、より高い速度精度、より速い過渡応答性、多機能化の要求にこたえて、ベクトル制御方式のトランジスタインバータFRENIC5000VGを製品化し好評を得ている。さらに高機能インバータの適用の増加と大容量機の要求に対応しオプション機能の拡充と系列の拡大(~800kW)を行った。
本稿では主として大容量系列の内容と最新の適用例の概要を紹介する。
田中 良和,三木 広志
近年、インバータ市場の動向は、インバータ運転特有の電動機騒音を低減し、静かな環境でも適応できる超低騒音インバータへの要求が高まっている。この市場要求にこたえるため、超低騒音インバータFRENIC5000G6Nシリーズを製品化した。
このシリーズは、富士電機独自の磁束制御技術に加え、IGBT素子を適用することで、商用電源での電動機騒音に匹敵する低騒音化を実現した。本稿では、その仕様、特長について概要を紹介する。
鳥山 文雄,稗田 正昭,鈴木 達也
エアコンディショナ(エアコン)用インバータは、ヒートポンプ式エアコンに用いられ、急速冷房・暖房、室温一定などの温度制御、および省エネルギー運転が可能であり、さらにクリーンで安全な装置として近年著しい伸びを示している。
本稿では、富士電機のエアコン用インバータの概要を述べる。このインバータは16ビットCPUを搭載することにより、電動機の運転音を低減するなどの改良を行っている。
伊藤 豊,小村 克二
高速電動機駆動用インバータは、近年著しい発展がみられ、工作機械や木工機械分野において、加工精度、加工能力の向上、変速機構の省略、生産性の向上を目的として広く使用されるようになった。富士電機では高速電動機の標準化を図るとともに、駆動用インバータとしてFRENIC5000Hシリーズを販売してきた。このたび、汎用性の向上、機能の拡充を図った新シリーズインバータFVR-H5を開発した。本稿では、その特長、仕様、性能、機能について紹介する。
武本 昭夫,西郷 剛,中島 宏明
トタンジスタインバータのマイクロコンピュータ化が進むにつれ、機能、性能、操作性などが向上し、その用途が飛躍的に広がった。これに伴い、環境の悪い条件下でも使用できる全閉形インバータの要求も高まってきた。富士電機では、この要求にこたえるため、従来課題であった冷却効率の改善を図り、小形全閉形シリーズを開発し、すでに数多くの製品を国内外に供給している。.
本稿では、その全閉形シリーズの概要を紹介する。
柴田 安彦,鈴木 義廣
構造が簡単で堅ろうなかご形誘導電動機は、産業界の各種用途に主動力として使用されている。近年は、省力化、生産性向上などの市場要求とパワーエレクトロニクス技術の発展が相まって、インバータによる可変速運転が増加している。
富士電機では、各種用途にマッチしたインバータ駆動用電動機を市場に供給し、好評を得ている。本稿では、これらインバータで駆動される専用電動機の仕様、特長について概要を紹介する。
中原 雄三,大庭 茂男
かご形誘導電動機の可変速駆動は、トランジスタインバータの進展につれ、急速にその適用範囲が広がっている。本稿では、インバータ応用回転機として流体機器への応用、特に高風圧、小風量のリングブローと高圧のクーラントポンプへ適用し成果をあげたので、これについて紹介する。
栗田 茂文,井本 博幸
FA,FMSに代表される自動化、省力化の技術は、ますます高度化、多様化の傾向になる。これらの要求にこたえて、DCサーボモータの発売以来、順次、ACサーボモータ、ESモータ、シーケンス機能付位置決め装置を開発、系列化し、メンテナンスフリー化、フレキシビリティの向上を図った。汎用プログラマブルコントローラ(PC)の適用が拡大するに従い、各種機能の階層化、分散化のニーズが高まっている。これにこたえるため、各種の位置決めモジュールをPCのベースボート上に付加可能とし、システムの機器のコンパクト化を図った。
藍原 隆司,井本 博幸,隈元 修一
ディジタルサーボシステム「Dシリーズ」は、上位制御機器からのパルス列に従い、位置決め制御を行うパルス列入力方式のACサーボシステムである。制御回路部に、DSPと8ビットCPUを採用し、速度制御応答200Hz/-3dBの高速応答を実現した。また、パルス補正機能、手動運転機能などの各種位置決め機能を搭載し、タッチパネルによる各種位置決め機能の設定・表示が可能である。
本稿では、その仕様、構成などについて概要を紹介する。
荒川 宏泰,田村 安治,木村 有
各種産業機械の高度化に伴って、ACサーボの需要が伸長している。反面、使い勝手、価格などの欠点がある。一方、在来の可変速機では、性能面で適用に制約があった。この状況を踏まえ、画期的な商品として、昭和63年に「ESモータ」を発売し、高い評価を得ている。今回、容量範囲の拡大、機能向上、オプションカード装着化で適用範囲を拡大した「高機能シリーズ」と、コントローラをよりコンパクトにした新「標準シリーズ」を開発し、仕込化した。電動機も、ギヤ付、ブレーキ付など、品ぞろえを充実させた。
相田 忠勝,鈴木 康平
プログラマブルコントローラ(PC)と電動機とを組み合わせて使用する機会が非常に多くなるに従い、PCの位置決めシステムの高精度化、高速化が要求されてきている。
この要求に対応すべく、今回MICREX用高機能位置決めモジュールFGU120B:アナログ指令出力2軸コントローラ、およびFGU130B:パルス列出力1軸コントローラの2機種を開発した。
本稿ではその仕様、機能および制御方法の概要について紹介する。
土岐 匡,長谷川和彦,松本 治美
最近のパワートランジスタインバータは、著しく性能が向上し、高応答性、粘り強さ、通信機能など、システムとしての系の中に組み入れるに必要な諸機能が充実してきた。本稿では、特に大容量のトランジスタインバータを砂糖の遠心分離機とクレーン設備に適用した例、およびこの高機能を適用する機械の特性に適合させ、周辺の制御機能も取り込んで複合化し、専用インバータとして市場に出している紡績用インバータとタンクレス給水システムの例について紹介する。
松永 哲夫,白石 博隆,軽部 邦彦
鉄ビレットヒータなどの産業用途向けに、バイポーラトランジスタを使用した誘導加熱用インバータを長年製作してきたが、その技術をベースにして、汎用向けの小容量加熱用インバータを開発した。特に業務用電磁調理器への適用は安全、高効率などの利点が高く評価され、多くの実績を積み上げている。さらに、一般工業用の各種設備にも使用可能で、その用途は拡大の一途をたどっている。本稿では、その技術内容、特長および適用例を紹介する。
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注
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