富士時報
第64巻第5号(1991年5月)
自動販売機特集
中野 賢一
井上 恵司,村上 博武
平成2年末,自動販売機の普及台数は初めて540万台を越えた。また,年間売上金額も5兆8,000億円に達した。自動販売機に対するニーズとしては,(1)売上げの拡大,(2)利用者へのサービス性の向上,(3)販売効率の向上,(4)多様化と拡大,(5)環境との調和,が挙げられる。本稿では,このニーズに対応する富士自動販売機について述べる。
小田 威夫,須藤 進
「イージーアクセス」とは,商品の選択,硬貨の投入,商品の取出し,返却硬貨の取出しの一連の動作が,自然の立ったままの姿勢でできる「人に優しい」新機構のことで,富士電機独自の呼称である。従来の下段取出しタイプでは,利用者にお辞儀をさせて商品を買っていただいているという感じが強い。本機は,商品選択ボタン,硬貨投入口,商品取出口,硬貨返却口など,すべてを操作しやすい中央部にそろえて配置し,利用者がわざわざ身をかがめずにごく自然に商品,釣銭を取り出せる自動販売機シリーズである。
上田 治幸,萩野 憲三,冠野 恭範
缶自動販売機に対する最近の市場ニーズとしては,多様化を続ける販売商品への対応,より集客力のあるデザイン,人手不足対策としてのサービス性の向上がある。これらのニーズへの対応を図るため,新四重および五重サーペンタインラック,新ベンドメック,明るくワイドなデザイン,庫内4室化構造などを開発し,富士缶自動販売機の新シリーズを完成した。本稿では,新シリーズの特長と,主としてサーペンタインラックおよびベンドメックの構造について概要を紹介する。
水谷 克己,林 輝明,濱本 賢一
カップ自動販売機は,販売飲料の多様化や味覚の高級志向による高機能化,ルート作業の増加や人手不足によるルート効率の向上が強く望まれてきた。このような背景により,市場ニーズに対応したカップコンビネーション自動販売機の新シリーズを開発した。
本シリーズは,(1)原料補充,清掃などルート作業時間の短縮,(2)汚れにくい内部構造や自動洗浄システムなど衛生性の向上,(3)販売商品取出し性の向上,(4)集客力の向上,(5)飲料特性の向上,を図り,取り扱いやすく,さらにおいしい飲料の提供を可能にした。
井上 正喜,岩崎 義昭,田中 幸博
たばこのテレビ広告の規制強化や自動販売機のロケーション確保の困難など,市場環境が厳しくなる一方で,たばこの新商品開発が活発化している。また,現在,たばこの総売上高の40%が自動販売機で販売されており,たばこメーカーにとっても販売店にとっても,経営戦略上,自動販売機は重要な位置を占めている。このような市場動向のなかで,集客力の強化と取扱性の向上をねらいとして新シリーズの開発を行った。本稿では,これらの特長,仕様,構造について紹介する。
冨永 博,宇野 嘉夫
冷凍食品は,食の簡便化・多様化・グルメ志向および電子レンジの高普及を背景にして,急激に伸びてきている。しかも,長期保存が可能であるという自動販売機に向いた特長をもっている。富士電機では,今後の将来性の高い冷凍食品業界へ新規参入するための機械として,冷凍食品自動販売機を開発した。本稿ではその特長,仕様,構造の概要を紹介する。
渋田 博士
ここ数年,自動販売機のファジィ適用の研究を進めているが,その一つとして塩素濃度の安定制御を実現したカップ自動販売機を完成した。塩素発生による飲料水の衛生維持においては,味覚向上のため,塩素濃度の安定制御が重要な課題である。しかし,塩素濃度の各種変動要因の解析が難しく,従来のカップ自動販売機では十分な制御ができなかった。そこでファジィ制御により変動要因の影響度を推定,制御し,塩素濃度の安定制御を実現した塩素発生装置(オプション)を完成したので紹介する。
川崎 治夫,海野 覚
自動販売機の制御部は,機能の多様化により,マイクロコンピュータを搭載した分散制御方式が主流となってきた。このように制御部が複雑になってくると,制御部に故障が生じた場合,どの制御部が故障したかを判断するのに時間がかかった。今回,この故障診断にエキスパートを応用したパーソナルコンピュータで動作する故障診断システムを開発した。主な特長としては,17項目の所見(自動販売機の状態の質問に対応する解答)を入力することにより,10種類の制御ボックス,スイッチの故障を判断できる。
槙田 幸雄,杉野 一彦
近年,自動販売機はユーザーである飲料メーカーやオペレータにとって有効な販売手段として無くてはならないものとなってきている。自動販売機情報収集システム(ACS)は,これら自動販売機を効率的に活用してゆくために開発したものである。富士電機では各種ACSを開発しているが,本稿では各種方式と最新の具体的実例としてオンラインACSを紹介する。
田中 敏美,羽生 裕,吉富喜一郎
近年は,情報化社会,カード化社会と呼ばれており,いろいろな所で,いろいろなカードシステムが実用化されつつある。富士電機も,カードに関するあらゆるビジネスチャンスにトライし,徐々に納入実績をあげている。本稿では,カードシステムに対する富士電機の取組みの現状と,分野別カードシステム,システムを構成するコンポーネント機器の開発状況を紹介する。
横森 伸二,堂面 俊則,山縣 遵
自動販売機の普及に伴い,それに搭載する通貨関連機器にも高機能化・多様化の要望があり,さらに最近では利便性の向上という要求が高まっている。そこで,今回,オペレータの釣銭回収業務の効率を向上させる「釣銭合わせ機能付コインメカニズム」,また利用客が釣銭硬貨を容易に取り出すことが可能な「釣銭リフタ」,さらに自動販売機のデザインの自由度を向上させる薄型で上下逆取付が可能な「薄型紙幣識別機」を開発したので紹介する。
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注
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