富士時報
第64巻第7号(1991年7月)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」特集
石渡 鷹雄
村山 衛,藤田 元嗣,松田 昌迪
昭和60年10月に着工した、動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)がナショナルプロジェクトとして進めている電気出力280MWの高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の建設は順調に進み、平成3年4月に予定どおり機器据付が完了した。
富士電機は、燃料出入機、炉外燃料貯蔵槽などの燃料取扱いおよび貯蔵設備、気体・液体放射性廃棄物処理設備などを担当し、動燃事業団および建設工事の工事監理を担当している日本原子力発電(株)の指導のもとに、「常陽」の経験および「もんじゅ」研究開発の成果をもとに設計、製作、建築に取り組んできた。
林 裕至,井上 隆
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」燃料取扱いおよび貯蔵設備は、新燃料を発電所内に搬入してから使用済燃料を発電所外に搬出するまでの処理、貯蔵を行うものである。燃料交換は原子炉停止時に、原子炉容器と炉外燃料貯蔵槽間で、燃料交換装置、燃料出入設備などを使用して新燃料と使用済燃料を一体ずつ交換して行う。炉外燃料貯蔵槽へ移送された使用済燃料は、所定の期間冷却された後、洗浄し缶詰にして再処理施設へ搬出されるまで、燃料池の貯蔵ラックに貯蔵される。
小林 修,尾崎 博
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」炉外燃料貯蔵槽は、原子炉で燃やした使用済燃料の減衰待ち貯蔵および新燃料の中継貯蔵を行うための、直径約6m、高さ約10mのステンレス鋼製構造物であり、内包する約160m3 の液体ナトリウム中に250体の炉心構成要素を貯蔵することができる。炉外燃料貯蔵槽の設計・開発は、ナトリウムの自然対流を利用した燃料冷却の確証、ナトリウムを内包する大型多重容量の地震時の挙動評価の把握、ナトリウム中無潤滑で使用する軸受装置の作動確認など、ナトリウム関連技術の研究開発を通じて十分な安全性、信頼性を確保している。
衣田 憲司,富田 孝昭
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」燃料出入設備は、燃料などの原子炉容器内外の出し入れおよび設備間の移送を行うものであり、原子炉容器、炉外燃料貯蔵槽内のナトリウム中から燃料などを出し入れすること、および高発熱の使用済燃料を取り扱うことが要求される。富士電機は、これらの要求機能を十分に満足した設備を設計・製作するために、動力炉・核燃料開発事業団の委託により、実寸大の燃料出入機本体を製作し、取扱い、冷却性能などの各種試験を行い、その成果に基づき、設計、製作を行った。
永野 正規,小塚 悦弘,新村 進
燃料取扱設備は、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」において燃料などの取扱対象物を所定の計画と手順に従い安全かつ効率的に取り扱うことが求められる。燃取系監視制御システムは、こうした設備の特質を踏まえ、集中監視、運転自動化などの機能を充実させることで運転操作性、信頼性の向上を図ることが要求されている。
本稿では、先行炉である「常陽」、「ふげん」などの建設と運転の経験を反映しつつ、最新の制御技術を生かし、これまで設計、製作、建設を行ってきた本システムの構成と機能の概要について紹介する。
水越 清治,小原 潔
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」気体廃棄物処理設備は、発電所の燃料取扱いおよび貯蔵設備、制御棒駆動機構、一次アルゴンガス系などから発生する廃ガスを吸引し、廃ガス中の放射能を有する希ガスを一定時間保持し、減衰処理して環境に放出するための設備である。この設備は、廃ガス圧縮機、活性炭吸着塔などから構成されている。
井上 隆,畠中 秀雄
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」液体廃棄物処理設備は、発電所内で発生する廃液を再使用または環境に放出できるよう処理することを目的として設置した設備であり、設備廃液および建物ドレン処理系統、洗濯廃液処理系統の2系統から構成されている。前者においては、自然循環方式の廃液蒸発濃縮装置が設置され、放射能濃度、固形分濃度ともに高い廃液を処理する機能を持たせている。
藤沢 盛夫,加藤 徳義
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」共通保修設備は、保修対象機器の移送、洗浄を目的として設置された設備であり、機器移送設備、機器洗浄設備から構成されている。保修対象機器は、主に定期点検時に機器移送設備によって保修エリアへ移送され、機器に付着しているナトリウムを機器洗浄設備により洗浄除去したうえ、再使用される。
井上 凱陽,安友 克美
富士電機では、放射線モニタリングシステムを長年手がけてきたが、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」に納入した放射線監視設備はこれらの技術を集大成したものである。信号の光伝送方式、ディジタル式レートメータと入出力制御装置、校正設備の組合せによる線源校正の自動化、高速増殖炉特有のカバーガスサンプリング装置など特長のある設備をもっている。本稿では、放射線監視設備の概略の紹介と主な機器について述べる。
菅野 政男
富士電機川崎工場において製作を行った高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の燃料取扱いおよび貯蔵設備のうち、燃料出入機本体、炉外燃料貯蔵槽の遮へいプラグや回転ラック、液体廃棄物処理設備の蒸発濃縮装置などはステンレス鋼などを使用した大型構造物であるが、高い寸法精度が要求される。これらの要求水準を満たすための製造体制、QA/QC上の配慮、製作方法などを紹介する。
鈴木 靖之,辻 紘一,清水 久
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の建設は、昭和60年10月の建物基礎掘削により本工事を開始し、昭和62年4月の原子炉格納容器建方完了、昭和63年10月の原子炉容器搭載完了などのマイルストーンを経て平成3年4月に機器据付が完了した。富士電機もこれらのマスター工程に併せて、工程管理、品質保証活動、安全管理に留意した工事体制を組み、当初予定の工期を235万時間無災害で達成した。
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注
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