富士時報
第65巻第2号(1992年2月)
変電技術特集
鬼頭 幸生
大瀬 克博,丸田 一臣,松本 俊郎
高電圧・大容量化と並んで、不燃化・防災性向上をねらってガス絶縁化などを図ってきた変圧器技術、三相一括形、複合形などによりコンパクト化を進めてきたガス絶縁開閉装置技術、およびマイクロエレクトロニクス技術を活用してディジタル化を図ってきた保護・制御・監視装置の技術変遷を述べる。更に電力品質の高度化、総合経済性の向上、環境調和をねらいとして、インテリジェント化、自律分散化、オールガス絶縁化、コンパクト化を進めることによって実現をめざしている次世代形変電所の開発構想とその取り組み状況について概説する。
貞川 郁夫,内藤 裕宣,橋本 信行
変圧器分野における、高電圧・大容量化への対応、オイルレス化・不燃化による環境調和の向上、小形軽量化などの諸要求に対して技術開発を進めてきた。油入変圧器では、鉄心・巻線、絶縁、低騒音などの技術を、ガス絶縁変圧器では、高落差放熱器や負荷時タップ切替器無接点制御システムなどの技術を、さらにモールド変圧器では小形軽量化をねらいとして開発した「一体注型方式」などの技術を紹介する。
安部 正彰,山戸 啓,飛山 良弘
近年、急速に普及してきたガス絶縁開閉装置(GIS)は、より一層の縮小化、高信頼度化が要求されている。
本稿では、富士電機が最近取り組んでいるGISの各種技術のなかで、縮小化技術及び制御回路の無接点化技術について、その概要を述べる。縮小化技術については、機器の複合化および相分離構造採用による取組みを行い、制御回路の無接点化技術については、各種性能検証試験を実施して、十分な実用性能を有していることを確認し、実用化への見通しを得ている。
小出 英延,岡本 達生,藤田 雅彦
富士電機では、磁気光学効果を利用したファラデー素子と、電気光学効果を利用したポッケルス効果の原理を使ってガス絶縁開閉装置用光CT、光PTの開発を行ったので紹介する。
これら光CT、光PTの比誤差温度性能はいずれも±1.0%以内の特性が得られた。さらに、光CTの短絡電流特性については実際に短絡電流を測定した結果、十分な制度が得られていることが確認された。
志賀 悟,金子 英男,小池 浩継
電力系統の絶縁合理化の動向と富士電機における酸化亜鉛素子の開発状況、および新しく開発した送電線用避雷器の原理、構造、特長について述べる。送電線用避雷器の特長について述べる。送電線用避雷器の特長は次の通りである。
(1)絶縁協調が優れている。
(2)サージ耐量が大きい。
(3)小形、軽量である。
(4)優れた防爆性を有している。
(5)耐候性に優れている。
堀江 正起,矢野 正祐
中電圧開閉装置は、近年の社会情勢から特に保守点検の省力化、縮小化などの要求が一層強くなってきた。これらにこたえるために、気中絶縁から空気-固体併用の複合絶縁などによる縮小化などで対応してきたが、従来技術では限界がある。今回、72kV以上のガス絶縁技術をもとに、低圧のSF6ガスを封入したアルミ鋳物容器に真空遮断器、三点断路器および接地開閉器を収納し、保守点検の省力化、耐環境性の向上、大幅な縮小化および安全性の向上を図った24kVガス絶縁キュービクルを製品化したので、その概要について紹介する。
小川 明栄,喜多村忠雄,八木裕治郎
高度情報化社会の進展により、ますます高品質電力の安定供給が要請されており、供給信頼度を一段と向上させるためには機器の信頼性向上が不可欠となっている。本稿では、発変電所のなかでも設備量が多く、電力供給のかなめとして重要な役割を果たしている遮断器のうち、設置台数の多い7.2kV真空遮断器を対象にさらに信頼性の向上を図り、メンテナンスの省力化を図った電磁操作形真空遮断器を開発したので紹介する。
伊原木永二朗,根岸 久方,松村 基史
ディジタル形保護リレー装置が出現してから約10年が経過しようとしている。この間、マイクロプロセッサをはじめとする電子技術は急速に進歩し、これらの技術を駆使した保護リレー装置も着実に進展してきた。また、変電所などにおけるディジタル制御装置の進歩も著しく、保護、制御を併せた総合ディジタル化へと発展している。
本稿では、ディジタル化された保護リレー装置および制御装置のシステム構成、ハードウェア構成を中心に概要を紹介する。
岩井 弘美,臼井 昇,原田 信康
ガス絶縁機器は外部環境の変化を直接受けない信頼性の高い機器である。しかし、装置の内部を目視点検できないため運転状態における以上の早期発見や、万一、絶縁破壊などの事故が発生した場合の事故復旧の迅速化を目的とした診断装置の適用が図られている。
本稿では、ガス絶縁機器における予測保全装置と故障点標定装置について、監視項目、センサおよび変圧器、さらに検出原理、電気的性能などについて概要と実用化の例を紹介する。
神山 一朗,渡辺 俊英,伊藤 敬三
変圧器の事故を未然に防止するための、(1)油中ガス分析を自動的に行う方式、(2)また、部分放電や油温度、巻線温度、LTCトルクなどのセンサ情報により異常を早期発見する方式、(3)これらの監視により、専門家などの構築した知識ベースを基に総合診断を行い、診断結果、異常原因、部位、処置方法などを出力する方式、(4)さらに、LTCの接点点検や活線浄油機のフィルタ交換時期の予測を行う方式、を紹介する。以上の方式はオンラインであるが、オフライン(他の変圧器の油中ガスデータ情報をキーボード入力)診断も可能である。
田中 滋夫,佐藤 達也,西村 祐美
大都市圏を中心とした代表的な大量高速輸送手段である電気鉄道(電鉄)の電源設備である電鉄変電所は、ディジタル制御技術やパワーエレクトロニクス技術の発展により、技術革新時代を迎えている。
本稿では、そのなかでも特徴的な分散形マイクロエレクトロニクス化配電盤システムを中心にその特徴、ねらい、納入実績および動向について述べる。また、今後実用化が進むと考えられる予測保全システムの検討に際して着眼すべきポイントを中心にしてモデル提案を行っている。
島田 陽二,廣谷 修治
一般産業用プラントの高機能化、複雑化、大容量化に伴い、特別高圧受変電設備の信頼性に対する要求が近年急速に高まってきている。これらの背景を踏まえて産業用受変電設備を計画するうえで配慮すべき事項をまとめるとともに、66/77kV受電設備として広く採用されているキュービクル形ガス絶縁開閉装置(C-GIS)の概要を紹介する。また、情報処理装置の飛躍的な能力向上により、運転監視の省力化と高機能化を果たしているCRT監視制御装置を紹介する。
中村 信男,牛村 祥夫
最近のビルは、インテリジェント化や社会のグローバル化の進展により、需用電力の増大や高品質電源要求、24時間365日無停電給電の要求などが増えてきている。また、防災面の向上から難燃化、不燃化の要求も高くなってきている。このような背景から、24~84kV級のビル用受変電設備では、二重化システムやガス絶縁機器の採用が増えている。稼働中のビル受変電設備の更新では、許容される停電時間単位で容量アップも併せて行う事例が出てきている。本稿では、これらの事例を主に紹介する。
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注
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