富士時報
第65巻第8号(1992年8月)
ネットワーク技術特集
齋藤 忠夫
山口 太平,井部 成身
産業制御分野のネットワーク技術は、通信技術と情報処理・制御技術が一体化した複雑な構造を持っている。
上層の通信プロトコルの国際標準化は、TCP/IP系とOSI系の二つに集約された。LANとWANは光伝送技術の発展により、本質的な差異がなくなる方向にある。
FA分野の上位ネットワークには開放形のプロトコル採用が有利であるが、下位ネットワークの分野で標準方式が定着するには、まだ多くの課題が残されている。
木下 政利,中島 千尋,古山 仁則
制御用ネットワークは、自動化システムの基盤技術として重要性を増している。制御用ネットワークには、マルチベンダシステムを実現するオープンネットワークと、制御用途に特化したメーカー固有のネットワークとがある。富士電機ではオープンネットワークとしてMAP、Ethernet(TCP/IP)を製品化している。固有のネットワークとしては、DPCS-F,F-Net、FFIバスを富士電機標準として種々の製品に適用している。富士電機では、これらの制御用ネットワークを中核とする「統合化制御システム」を実現している。
中島 千尋,田中 貢,垣堺 健
フィールドネットワークシステムは自動化システムの下位に位置し、制御装置と現場機器との接続を目的とする。機器の多様化に伴い高速応答性、高信頼性、経済性とともに多機能性が求められている。富士電機では他社に先駆けF-NetおよびFFIバスを開発し、当社標準として種々の装置、機器に適用している。他社も上記システムに接続可能な機器を多数用意している。また、オープンシステムを実現する国際標準および業界標準のフィールドネットワークシステムに対しても積極的に取り組み、いち早い製品提供に努めている。
加藤 勝,野中 正樹,林殿 勉
MAPネットワークシステムについて、富士電機の開発成果を述べる。最初に、フルMAP、ミニMAPの向上生産自動化システムにおける位置づけとプロトコル階層、および富士電機がMAPの開発に取り組んできた経緯と現在のサポート製品を述べる。次に、MAPの核となるMMSについて、FAパソコンのソフトウェア製品を中心として説明する。この中で、適合性試験の概要についても触れる。また、FTAMサポートについては、その概念、ライブラリ構成についてサポート内容を述べる。
古河 幸信,清水 進,杉田 浩平
遠方監視制御システムにおけるネットワーク技術は、テレコン装置の基本技術である通信回線ネットワーク技術をはじめとして、今日では、制御所のコンピュータシステムと接続する技術、発変電所の設備と接続する技術などをも包含している。これらの技術は、高速のネットワークで結合されるようになってきた。
本稿では、コンピュータとの結合方法について技術的な変遷をたどることから現状の技術、近将来の技術動向について紹介する。
渡部 好三,池田 卓史
FFIは、世界で唯一商品化されているフィールドバスであり、物理層に光ファイバを採用した先進のフィールド計装システムである。昭和60年に発売以来多くのユーザーに納入されており、フィールドバスの特長、光ファイバ伝送の特長を生かし、フィールド計装の合理化、信頼性の向上などに貢献している。
本稿では、FFIシステムを制御システムのネットワークの観点から紹介する。光ディジタル伝送をフィールドから上位コンピュータシステムまで可能にしたFFIは、国際標準化の点でも注目されている。
石澤 輝明,及川 弘
広域ネットワーク技術の応用展開分野を二つ紹介している。
第一は、ISDNを利用した遠隔監視制御で、事例は銀行自動サービスコーナー向けである。ISDNの特性を生かして、データと画像の多重伝送を行い、応答性と臨場感を一層高めた形で実現している。
第二は、電力需要家系情報ネットワーク方式で、事例は電力量計の遠隔自動検針向けである。検針端末の設置環境に応じて、電話網、CATV網、低圧配電線など、さまざまな伝送路構成とし、実用目的のフィールド検証を行っている。
川崎 治夫,槙田 幸雄
近年、自動販売機(自販機)のルートサービス業務においては、多品種少量販売や交通渋滞などによって配送効率が低下してきている。この解決策として最近注目されてきたのが、電話回線や無線通信を利用したネットワーク技術による「自販機POS:販売時点情報管理」システムである。
本稿では、自販機POSシステムの種類と特長を述べ、さらに最新技術である「特定省電力無線」を利用した無線自販機POSについて紹介する。
常泉 哲男,下村 智,宮村 尚孝
電力系統制御システムは広い地域に分散して配置されている。近年はシステム間の連係を強く求められてきており、それに伴って異メーカー・異機種コンピュータ間接続が必要となってきた。
富士電機は今回、他メーカー3社〔(株)日立製作所、(株)東芝、三菱電気(株)〕と協力して、中部電力(株)と共同で、通信プロトコルの国際的標準のOSI(Open System Interconnection)を適用した電力系統制御用コンピュータネットワークを開発した。本稿ではその内容について紹介する。
古屋 眞,成島 剛史
FA分野におけるネットワーク技術の現状と動向を考察し、FA用ネットワークに具備すべき条件について記述する。また、FA分野へのネットワーク技術の応用例として、加工・組立工場のFAシステムを紹介する。トータルFA/CIMの構築には、工場内の各種のFA機器間およびコンピュータの間の高速データ伝送を行うネットワーク(LAN)が不可欠である。マルチベンダ対応の富士電機のネットワーク技術を、事例を通じて述べる。
黒江 潤一
EIC統合化制御システムとそれを構成するネットワークおよび石油オフサイトにおける応用事例を紹介する。
製油所ではオフサイトの近代化、すなわちポンプ・バルブのリモート化、操油の自動化(オートラインアップなど)および最適なスケジュール運転による自動化を積極的に推進している。オフサイトで監視操作する機器は広大な製油所内に点在しているので、その自動化および統合化に際しては、いかにしてプロセス制御レベルおよび現場制御レベルのネットワークを構築するかが重要である。
藤原 正裕,高見澤真司,豊島 英文
世の中が豊かさを求める時代となり、行政にもサービスの向上が必要となりつつある。公共分野も社会基盤としての建設の時代から維持管理の時代に入り、管理の質的向上のためのネットワーク化が始まった。
本稿では、上下水道、道路など公共各分野のシステムにおけるネットワーク化の状況を幾つかの事例で紹介する。
秋山 芳夫,漆原 信行
石油化学向け変電所では設備の更新、新設を問わず分散形制御システム(DCS)の採用が一般的である。
DCSを構築するにはネットワーク技術が不可欠であり、システムの性能を大きく左右するといえる。
本稿では、大・中規模変電所および付帯する発電機の適用例をあげ、設備概要、ネットワークシステムを紹介する。
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注
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