富士時報
第65巻第10号(1992年10月)

パワーエレクトロニクス応用機器特集

究極の電力変換器を目指して

赤木 泰文

パワーエレクトロニクス技術の現状と展望

井村 輝夫,原   力,高橋  浩

パワーエレクトロニクスはエレクトロニクス、制御、電力の結合・融合した新しい技術分野として定義されて二十数年が経過した。その間に一般産業分野から、交通輸送分野、電力分野、民生分野、情報通信分野へとその応用分野を拡大し、今や主要な産業の基盤技術の一つとして活用されている。
本稿では富士電機の最新パワーエレクトロニクス技術、特に電源装置を中心に、その開発現状の一端を概観して、需要家各位のご理解、ご支援をいただく一助としたい。

パワーデバイスとその適用技術

笹川 清明,五十嵐征輝,黒木 一男

パワーエレクトロニクス製品は、パワーデバイスの進歩と回路および制御技術の発達によって、一般産業分野へ急速に普及してきている。パワーデバイスの開発動向として、高速スイッチングが可能で容量系列が豊富なIGBTの開発、性能改善が進んでいる。
本稿では、今後のパワーデバイスの中心となると考えられるIGBTの適用技術、(1)ゲート駆動回路、(2)スナバ回路、(3)IGBTスタックを中心に紹介する。

IGBT式大容量UPS

梅沢 一喜,青山 謙司,古泉 辰雄

今回開発したIGBT式大容量UPS(UPS600-A/3シリーズ)は、世界で初めて、大容量UPSにPWMコンバータを採用したものであり、入力電源容量の低減、高力率化を実現した。
また、PWMインバータにおいては、新制御方式により、UPSの並列運転時の瞬時値制御を実現し、大幅な出力性能の向上を図った。これらの技術を支えるIGBT回路においても、大電流プリント板およびヒートパイプ冷却などの技術によりIGBTパワーモジュールを製作した。本稿では、以上の技術に関して紹介する。 

新シリーズ中容量UPS

廣瀬  順,谷津  誠,佐藤 秀雄

コンピュータのダウンサイジング、ネットワークシステムの分散化が進行し、中小容量UPSの需要が高まるとともにその責務は重要視されている。今回製品化した新形IGBT式UPS(UPS600-C/1、C/3)は、高信頼度化、高性能化、小形化、さらに操作性、保守性の良さを実現し最近の幅広いニーズにこたえるUPSである。
本稿では、UPS600-C/1、C/3の特長、標準仕様、回路構成、試験結果を紹介する。

IGBT式400Hz UPS

小端 伸二,安田 哲夫,真鍋 和久

これまでの400Hz電源装置は、新しい航空機に必要なNBPT(No Break Power Transfer)に対する性能が不十分であった。今回IGBTを使用した400Hz電源装置を開発した。特徴は、NBPTに対する性能を十分満足し、高効率、高信頼度、保守が容易、LCD画面によるガイダンス、ケーブル補償機能、入力瞬時停電保護機能、入力高調波電流対策の12相整流方式を採用している。本稿で仕様、特長、試験結果について紹介する。 

電力貯蔵形非常用電源システム

田口 保夫,藤倉 政信,横山  隆

パワーエレクトロニクス応用機器の急速な普及で雷害による電力系統の瞬時電圧低下やそれから発生する高調波電流による障害が顕在化してきた。また夏場の電力需要のピーク対策、化石燃料を使用する従来の非常用発電装置にみられる環境保全対策など多くの課題がクローズアップされてきている。富士電機が今回開発した電力貯蔵形非常用発電システムは、これらの課題を1台の変換装置で一挙に解決する多機能形の電源装置である。本稿では、仕様、概要、回路構成、試験結果などについて紹介する。

オンサイト燃料電池発電装置用インバータ

八田 恭典,田之倉一夫,日野 浩二

50~500kWと比較的小容量のオンサイト形(需要家設置形)燃料電池発電装置には、発電効率が高く、小形・軽量、低騒音などの性能が要求される。今回、この装置に適用されるインバータとして、高周波スイッチングデバイスであるMOSSFETやIGBTを使用した50kW機および100kW機を開発した。このインバータは、高周波技術を適用したことにより、小形・軽量、低騒音、高効率を同時に満足している。本稿では、仕様、特長、回路構成、制御方式および試験結果を紹介する。

太陽光発電用インバータ

荒木 計介,藤本  久,赤塚 健之

昭和48年のオイルショック以来、代替エネルギーの一つとして注目されてきた太陽光発電が、近年、環境問題が国際的にも関心を集める中、大きく実用化へ向けて進展しようとしている。こうした背景から、IGBTモジュールを採用して高性能化を図った実用機としての太陽光発電用インバータを開発した。
本稿ではその特長、仕様、回路構成、および試験結果について紹介する。

大容量高力率正弦波入力電流形PWM整流器

小西 義弘,荒井 範弘,熊谷  諭

最近、各種パワーエレクトロニクス機器の普及により、電源系統に流出する高調波電流や無効電力が問題となっている。
これらの対策として、自己消弧形素子を用い、PWM制御技術により改善する種々の方式が考案、実用化されている。
本稿では、出力容量が数百kW以上の大容量機において、高調波電流の大幅な低減と電源力率を1.0とする高力率化を実現した電流形PWM整流器の概要について述べる。

誘導加熱用MOSFET式高周波インバータ

藤井 正昭,中村 清和,野村 年弘

誘導加熱システムの中で重要な構成機器である高周波インバータには加熱条件や加熱能力の違いにより種々周波数および出力が要求される。富士電機では従来のサイリスタおよびパワートランジスタを使用して周波数0.5~50kHz、出力20~4,000kWまでの高周波インバータを系列化してきたが、今回パワーMOSFETを用いてさらに高周波化を図り、新たに20~100kHz、10~500kWの系列化を完了した。本稿ではパワーMOSFETを適用した高周波インバータの概要および応用例を紹介する。

産業向けアクティブフィルタ

漆原 信行,木戸口秀隆,小松木和成

従来のL-C形(受動形)フィルタに代わり、アクティブ(能動形)フィルタが普及しつつある。富士電機では産業向けとして50~400kVAまでの製品をシリーズ化したので、本稿にて紹介する。
アクティブフィルタは、高調波補償のほかに力率補償、電圧変動補償などの機能を併せ持った多機能フィルタであり、今後の適用拡大が期待されている。

産業用小形直流電源

古木 進一,五十嵐征輝,川村 逸生

出力容量数百kW以下のこの種の電源は、設置スペースの縮小、工事費ならびに電力損失の低減を目的として負荷近傍に設置することから、機器の小形・軽量化が強く要求され、併せて高生産性と省力化をねらいとした機能と性能の向上も強く望まれていた。
富士電機は、既存の高周波に関する基盤技術と高周波大電流の新技術を適用し、IGBT使用の高周波インバータ方式の直流電源を完成した。従来形より大幅に小形・軽量化した高性能な電源であり、納入後も良好な運転実績を得たので紹介する。

三相入力SMRコンバータ

大熊 康浩,黒木 一男,山田 隆二

UPS,産業用直流電源などの小形・軽量化、入出力の特性の向上という要求のこたえるため、そのAC-DC変換用に新しい回路方式を開発した。この装置は、高速スイッチング素子であるIGBTを逆直列接続した双方向スイッチモジュールを適用し双方向の電流を遮断・制御可能とすることで、商用周波数(50/60Hz)を、直接、高周波(16kHz)に変換し、高周波変圧器で絶縁した後、整流し直流出力を得るAC-DC変換器である。
本稿では、直流出力30kW試作機の開発について紹介する。

本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。