富士時報
第65巻第11号(1992年11月)
発電技術特集
田中 正人
松岡 哲,岩田 章
地球環境問題の解決のために発電効率の向上、クリーンエネルギー電源の多様化が促進され、同時に問題になってきている電源立地に関連して、分散形電源や既設発電所のリパワリングなどの需要が高まってきている。これらのニーズにこたえるための富士電機の最近の火力・水力発電に関する技術を紹介する。火力発電については熱効率の向上を目的とした諸技術、自然エネルギー利用の地熱発電を中心に、また水力発電については、低落差用バルブ水車、高比速度ペルトン水車、改修更新、制御装置の近代化技術について述べる。
酒井 吉弘,加藤 佳史,岸 郁朗
富士電機の蒸気タービンには、フリースタンディング低圧翼が採用され、火力タービンのみならず地熱タービンにおいても高い信頼性を実証してきた。40年に及ぶフリースタンディング低圧翼の良好な運転経験をベースとして、さらに高効率化を図った新世代低圧翼を開発した。新世代低圧翼には三次元タイムマーチング法やリーンラジアル静翼などの最新技術が採用されている。蒸気翼列試験やモデルタービン試験、実機測定などによって、新世代低圧翼が期待どおりの高い性能と信頼性を発揮することを検証した。
山田 茂登,江崎融悧亜,明翫 市郎
富士電機は地熱発電の分野に参入して以来、順調に納入実績を伸ばしてきている。その経過のなかで、富士電機は地熱蒸気タービン発電機の納入ばかりでなく、地熱発電プラント全体のエンジニアリングにも携わっている。
本稿では、最近の地熱発電設備を紹介するとともに、新しい技術、既納プラントの運転実績について紹介する。
矢郷 昌三,三村 一郎,小原 孝志
富士電機は、出力260MVAまでの新系列空気冷却タービン発電機を開発した。一般に1000MVAを超えると水素冷却が多く採用されるが、空気冷却の持つ運転と保守の簡便さのメリットをより大きな発電機にも拡大し、従来系列空気冷却タービン発電機の最大出力を倍増させた。
本稿では、新系列発電機の実現を支えている冷却をはじめとする新技術を紹介する。
西崎 泰博,林田 幹雄,安部 道雄
近年の自家用発電設備はエネルギーの有効利用とともにコンパクト化、省力省人化、ディジタル化、運用効率の向上などの要求が高まっている。このような多様なニーズに対応して開発された制御技術、プラント技術、タービン発電機について紹介する。また、近年、建設期間の短縮および現地工事の品質向上が注目を浴びているが、これに対応して開発したフルパッケージ発電設備と、ニーズにマッチし、高効率で柔軟性のある運転を目的として開発したFET-ERシリーズ蒸気タービンの概要についても述べる。
吉川 修平,武田淳一郎
シーメンス社のガスタービンは1990年に営業運転が開始された60MW級のV64.3型ガスタービンを皮切りに、現行の第二世代型から第三世代型へと移行しつつある。
本稿では、このシーメンス社の新世代型ガスタービンである第三世代型について紹介をすると同時に、実際に富士電機川崎工場に隣接して設置されるV64.3型ガスタービンを使用した研究設備についてもその概要を紹介する。
佐藤喜代志,伊藤 誠二,西田 和実
ディジタル制御装置の発展はめざましいものがある。本稿では、最新のディジタル制御器であるMICRX-F500を使用したディジタル式AVR、ディジタル式保護インタロック装置と、小規模火力発電設備向けのスタンドアロン形の制御装置(TGR-500)を紹介する。
伊波 克雄,村田 幸雄,鈴木 健一
最近5年間に運転を開始した水車に関し、適用技術、技術的特徴について紹介する。
近年の水力開発は中小容量機が主体となっている。中小容量水力では建設単価が高い傾向にあるので、経済性を高めるため種々の新技術が開発、適用されている。大容量および大形機では、特にバルブ水車の運転開始が多く、今後も開発が期待されている。ペルトン水車ではジェット干渉が改善され、高比速度・小形化を実現している。今後はソフトウェアも含めた総合コストダウンに力を注ぐ。
宮島 武夫,飯島 勝,大谷 和雄
近年、中小容量水車発電機においては、メンテナンスフリー化に向けた水レス化、油レス化技術の積極的採用が著しい。特に立軸機の空冷軸受、横軸機のヒートパイプ軸受、電磁ブレーキ、バルブ発電機のフィン冷却方式は採用実績が増え、適用範囲の拡大も著しい。
本稿では、これらの最近の技術と実例を紹介するとともに、最近開発されたコンパクト形ブラシレス励磁機の概要にも言及している。
斉藤 哲夫
水力発電所の制御装置にプログラマブルコントローラ(PC)を適用することはすでに一般化しており、制御装置を構成する核として欠くことのできないものとなっている。最近では新設発電所はもちろん、既設発電所の改修・更新に際してもPCをベースとした総合ディジタルシステムを計画・推進している。
本稿ではこのような最近の水力発電所の制御・保護技術について紹介する。
須永 政孝, 吉井 清,村岡 政義
最近、落差20m以下の超低落差水力エネルギーの開発が世界的に注目されてきている。富士電機は昭和53年に、関西電力(株)赤尾発電所に納入以来40台を超える製作実績がある。
本稿では、最近のバルブ水車、発電機の技術動向の中から、水車水力性能、バルブの支持構造、バルブの構造、軸受配置、溶接構造ガイドベーン、圧油ポンプ電動機のインバータ制御、発電機の各種通風技術(フィン冷却方式、外皮直接表面冷却方式、強制ファンの回転数制御)について紹介する。
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