富士時報
第66巻第9号(1993年9月)

計測・制御技術の現状と展望

黒岩 重雄

計測・制御技術について、最近の技術・市場動向および富士電機の現状・展望について述べる。オープン化と結合化をめざした第四世代の分散形制御システム「MICREX-IX」およびUNIXコンピュータDS/90のシステム化、発展について概括する。また、フィールド機器として電子式発信器FCXシリーズ、光フィールド計装システムFFIの拡大、およびフィールドバスの国際規格化と技術動向について展望する。

新世代の統合化制御システムMICREX-IX

生駒 雅一

昭和62年に発表したMICREXは、電気(E)、計装(I)、コンピュータ(C)の三つの制御を統合した世界初のEIC統合化制御システムである。数々の実績と最新技術を結集し、平成4年10月、MICREX-IXを発表した。MICREX-IXは、「進化と継承」の開発コンセプトのもとに、高解像度CRT、EI統合コントロールステーション、ターゲットマシンレスの統合エンジニアリング、コンピュータ連携を実現した。さらにはインテリジェントフィールド機器のリモートメンテナンスやAI技術など、フィールドからコンピュータまでの統合を進展させた。

工業計器のシリーズ拡大

沖本 一機,玉井  満

工業計器のビジネス環境は、成熟した市場のなかでの生き残り競争に突入してきている。このような状況のなかで、富士電機は特長ある差別化技術を基礎に新商品の開発、品ぞろえを行ってきている。
本稿では、発信器、流量計、調節計、記録計、分析計の各機種群について、最近の新技術、新商品の紹介を行う。

フィールドバスの動向と富士電機の展開

池田 卓史,伊藤  徹,美根 宏則

国際標準化が進展しているフィールドバスに関して、規格の概要、構成、および富士電機の国際標準化活動と独自技術を紹介する。
富士電機は光フィールドバスシステムFFIを中心に昭和62年から、IEC/ISA国際会議に提案し、規格の作成など積極的に貢献している。

製鋼プラントにおけるEIC統合化システム

永井 亮次,川上 良雄,大島  徹

社会全般の景気後退のなかで、製鋼分野では高度成長期に設置した計測制御システムの老朽化に伴う更新が活発である。
一方、制御に対しては、従来以上に自動化、省力化、省エネルギー化、高機能化が要求されている。
制御システムにおいては、経済性、合理性および将来の拡張性からEIC統合化システムが主流となっている。
本稿では、最近の製鋼制御システムの動向と川崎製鉄(株)水島製鉄所の納入事例をもとに、EIC統合化システムを紹介する。

焼結工場の統合化制御システム

中谷 一彦

焼結工場の制御システムは、生産性の向上、成品品質の向上、焼結操業の自動化、省力化が要求されるとともに、電気(E)、計装(I)、コンピュータ(C)を統合化したシステムが、その経済性と合理性から要求されている。本稿では、統合化制御システム(MICREX-IX)を使用したシステム構成例とその特徴について紹介する。その制御システムのなかで、ドラムフィーダ回転数制御とパレットスピードにおけるファジィ制御の適用について記述するとともに、焼結プロセスモデルについても説明する。

セメント工場における分散形制御システム

梅基 一生

日本国内のセメント制御装置の動向として、システムの増強、制御室の統合化あるいはリプレースなどによるシステムの導入が行われている。
本稿では、分散形制御システムの各機器の概要、およびセメント工場における適用例、またコンピュータシステムについて、事例を紹介する。

ごみ処理の計測・制御システム(IICS-1000)

戸井田保夫

最近清掃工場は、焼却という単一機能でなく、資源の有効利用の観点から、ごみ資源化に向けた活動が活発化している。それに従って、計測制御システムの機能充実が要求されている。
本稿では、ごみ資源化の動向を中心に、都市ごみ焼却制御システムIICS(Incineration Instrumentation Control System)-1000の担う役割および概要について紹介する。

CWMプラントの計測・制御システム

伊藤 泰夫

CWMは、現在、石炭利用技術のなかで最も注目されている製品である。重油と同様な輸送および使用ができることから、今後大きく発展する可能性がある。
本稿では、中国・■日CWM有限公司向けに納入した製造設備用分散形制御システムと西日本CWM中継基地向けに納入した入出荷管理制御システムを紹介する。

石油備蓄基地の計測・制御システム

世木 良成

石油資源をほとんど有せず、その99.7%を輸入に頼っているわが国では、石油供給の安定確保のため昭和47年から石油備蓄を行っている。石油備蓄は民間備蓄と国家備蓄の2本立てで行われており、国家備蓄5,000万kl、民間備蓄70日を目標として現在も進められている。
本稿では、地下岩盤タンク方式を用いた国家石油備蓄基地である菊間基地向けの計測制御システムの特長、機能について紹介する。

空港給油設備の計測・制御システム

碇谷  武

航空需要の伸びとともに利便性、信頼性のある安全な空港設備をめざして設備の拡充工事および建設工事が進められている。空港給油設備においても特に監視・制御装置は使う立場を考慮した高性能、高信頼化システムの提供が求められている。このような背景のもと、電気・計装・コンピュータの統合化が叫ばれている。
本稿では、新東京国際空港公団の第2ハイドラント設備に導入した分散形制御装置、コンピュータ、光ファイバ式フィールド計器、インバータなどで構成された監視制御システムの概要を紹介する。

溶融炭酸塩形燃料電池用100kW級スタック運転研究設備

伊崎 慶之,渡辺 隆夫,若杉 繁実

溶融炭酸塩形燃料電池は、リン酸形に次ぐ第二世代の燃料電池として期待され、国内外で精力的な研究開発が行われている。
(財)電力中央研究所と富士電機は、これら開発された溶融炭酸塩形燃料電池の100kW級スタックの性能評価のための運転研究設備を設計・製作した。
本稿では、計測制御装置を中心に、運転研究設備の特長と運転特性の概要について紹介する。

20.5MW自家用火力発電設備の計装

赤井 英通,稲村 康男

最近の自家用火力発電設備(以降、自家発と略す)では、CRTオペレーション化が浸透し、運転支援・保守支援を含めたマンマシンインタフェースのインテリジェント化、自動化範囲の拡大、制御機能の高度化およびエネルギーセンタやプロダクションセンタとの融合化など一層高度化の要求が高まっている。
本稿では、最近の自家発の例として、時間差再生式蒸気温水発電設備であるマツダ(株)防府西浦第2発電所のDCSと、その特徴について紹介する。

(株)山善向け配送センターシステム

河田 康晴,成島 剛史

(株)山善向け配送センター「ロジス東京」のシステムを顧客と共同で構築した。本システムは多品種、少量、多頻度の入出庫、ピッキング省力、短リードタイム、高品質の機能で実現したものである。物流機器としては、高精度の立体自動倉庫と自動分岐のピッキング用ラウンドコンベヤを採用している。情報・制御システムはホストコンピュータと物流機器をネットワークで直結し、リアルタイムに処理と指示を行うとともに分担する機能にあわせ、マンマシンインタフェースを十分配慮したシステムとしている。

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