富士時報
第66巻第10号(1993年10月)
産業用電機システム特集
美多 勉
高橋 浩
産業構造のなかで大きなウエートを占めている素材産業および装置産業、すなわち鉄鋼、非鉄金属、紙・パルプ、合繊・フィルム、石油精製、化学、セメント、ガラスなどの業種向け電機プラントおよび電機システムの技術を対象として採り上げる。また、この分野を取りまく環境の変化とこの分野の基盤技術である制御技術、プラントエンジニアリング、情報システム、パワーエレクトロニクス・電力変換システム、受変電システムなどの技術動向について展望する。
松本 宏治,谷坂 彰彦,高野 正心
多入力・多出力系を周波数領域で扱い、またプラントの変動なども考慮して制御系設計を行うH∞制限理論が注目されている。H∞制御は、従来技術では制御性能の限界と思われている制御対象への適用において、より高い制御要求にこたえ得る可能性を持っている。本稿では、まずH∞制御理論の概要にふれ、次に電動機と負荷が軸により弾性的に結合されている電動機系への適用、さらに条鋼圧延におけるループ制御系への適用について紹介する。
千足 正吉,紙本 博史,中内 敏幸
近年、ソフトリッチ化が顕著である電機プラントのエンジニアリングには、生産性の向上と高品質を確実に達成できる支援システムが不可欠である。本稿では、生産性の向上に直接的に寄与できるコンカレントエンジニアリングの内容とその効果を示し、基盤となるデータの一元化とその具体的な事例を概説する。さらに支援システムの一方の柱である品質の本質的向上策として、仕様記述言語の事例とシミュレーションシステムの概要および支援システムを補完するプロジェクト管理システムの実施例を紹介する。
井手健一郎,伊藤 潤
富士電機では一般産業分野向けに、電気(E)、計装(I)、コンピュータ(C)の機能比率に応じたEIC,EC、IC、EI統合化制御システムを、各制御システム分野の技術・文化を継承しつつハードウェア・ソフトウェアのいずれをも標準化し、実用に供している。
本稿では、統合化制御システム構築時における基本的な考え方とキーコンポーネントの概要を紹介する。
田渕 正博,荒井 至,喜納 政宏
最近のプラントはコンピュータ、プログラマブルコントローラなどの進展によって高機能化、高速化が進んでおり、より高度の運転監視が要望されている。このため運転監視のためのマンマシンインタフェース装置の役割はますます重要となり、運転員や保守員をサポートする各種支援機能が必要となっている。本稿では、受変電設備および鉄鋼、直流アーク炉、加工ラインなどの分野に適用されているCRTディスプレイによる運転監視システムについて、その概要を紹介する。
司代 睦美,石田 博司,中村 信男
高度情報化社会の進展は電力品質の一層の高度化を要求し、人件費の高騰や環境保護意識の高揚など社会情勢、生活環境の変化は保守の省力化、機器の環境への調和を強く要求するようになった。
このような状況のもとで、新しい受変電設備のシステム構築にはセンサ技術、ディジタル技術などを応用した製品とシステムの開発が必要である。本稿では予測予防保全システム、保護・制御・伝送機能を搭載したディジタル保護装置およびガス絶縁機器、モールド変圧器を使用し縮小化を図ったスポットネットワークシステムを紹介する。
中村 和男,上村 猛,吉田 雅和
現在、産業界の可変速駆動装置は、直流機から交流機へと移り変わっている。特にインバータは各種の可変速方式のなかで主流を占めている。
半導体パワーデバイスの発展に伴い、大容量トランジスタ、IGBT、GTOの各種インバータが系列化され、ポンプ・ブロワ用の省エネルギー対応や、自動化設備に多用されている。
本稿では、新たに系列化されたインバータとその応用例について紹介する。
目黒 宏,有年 隆男,戸高 雄二
条鋼圧延機用に、ダイオード変換器直流配電のオブザーバ制御付GTOインバータを11台納入し、力率・圧延特性改善を実現した。運転システムとして、操作性に優れた運転方案と制御性能の良いソフトウェアを開発し、また快適な操業空間、人と機械がうまく融合した運転室を提案した。H∞制御理論応用のループ制御は、優れたロバスト性と速応性のため、圧延機速度設定エラーの圧延失敗回避が期待できる。
本稿では、条鋼圧延機用交流可変速駆動システム、アドバンスト制御、情報・制御システムの現況を紹介する。
衛藤 福雄
産業分野においては、多種多様な電力変換装置が使用されているが、近年の半導体デバイスの大容量化ならびに高機能化のめざましい進展とPMW制御などの適用で、高性能な電力変換装置が提供可能となり、電力変換装置の適用範囲も広がり、その性能や信頼性が、生産性向上の観点からますます重要視されている。本稿では、製鋼用アーク炉電源装置、電解用直流大電流電源装置ならびに小容量直流電源装置の最近の技術動向について、富士電機の適用例をまじえながら紹介する。
岡崎 金造,小西 茂雄,加護谷隆己
社会生活のエネルギー基盤を成す電力供給網には、近年さまざまの電子装置が負荷として使用されるようになり、その容量変動率は急しゅんである。これらの負荷が電力網に及ぼす悪影響を補償した高品質の電力供給がこれまで以上に強く求められている。なかでも高調波成分を含む無効電力は、この品質を左右する重要な要素であり、その補償技術が供給電力の品質維持・向上のためのキーテクノロジーとなる。本稿では最新の半導体応用技術を適用した装置を中心として、代表的な無効電力補償技術の概要について、富士電機の適用例をまじえて紹介する。
池田 泰幸,篠木 政司
高性能半導体素子が開発され実用化されるようになって、加熱条件や加熱能力の違いにより要求される種々の周波数や電力に対応できる電源装置の製作が可能となってきた。富士電機では、多様な誘導加熱装置に対応して0.1~500kHz、10~8,000kWと豊富な高周波電源を製作してきた。誘導加熱装置の特長は、現在の社会的要求である合理化、高品質化、環境の改善など、いずれをも満足する加熱手段であるということで、今後、その用途はますます拡大されるであろう。本稿では富士電機がこれまで提供した誘導加熱装置の適用例と電源設備について紹介する。
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注
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