富士時報
第66巻第11号(1993年11月)

特集論文

変電技術の現状と展望

児玉 孝亮,丸田 一臣

変電機器に要請される高信頼度化と保守の省力化を実現するために、富士電機は次世代変電所構想を提案した。これに関する研究開発の現在までの成果として、変電所の全ガス絶縁化、変電機器の高信頼度制御装置、開閉器の高信頼度操作機構を完成させ、実用化した。今後は保守支援システム、運転支援システム、保護監視制御システムを接続する光伝送ネットワークの標準化が要望される。

中部電力(株)吉良変電所納入変電設備

市川弥生次,松村 基史,八木裕治郎

中部電力(株)では増大する電力設備を効率的に保守・運用するため、最新のディジタル技術、光技術、センサ技術を駆使し、保守・点検の省力化,設備故障時の停電時間短縮化を図った最新鋭変電所の開発に平成元年度から取り組んできた。富士電機はシステム作り、機器開発などで中部電力(株)に協力してきた。
このたび、中部電力(株)と富士電機を含むメーカー3社により、この変電所の実用1号となる吉良変電所の建設が完了し、平成5年6月から運用を開始したので、その概要を紹介する。

7.2kVガス絶縁開閉装置

市川弥生次,鈴木 伸夫,日野  正

近年、中電圧開閉装置においても信頼性の向上、保守点検の省力化、縮小化などへの要請が高まってきている。
今回、全ガス化を指向し、ガス絶縁による耐環境性の向上、新技術の適用による保守・点検の省力化、制御回路の無接点化・光化による信頼性の向上、およびコンパクト化を狙いとした本装置を開発、製品化した。万一の故障発生時に復旧を迅速に行うための故障点標定装置も装備している。

ガス絶縁開閉装置の操作・制御部の高信頼度化技術

堤  睦生,富士 卓司,飛山 良弘

発変電所の開閉装置は近年、ガス絶縁開閉装置の採用により、その信頼度が向上してきている。しかし、開閉機器を動作させる操作機構と制御回路は比較的障害が多い。制御回路の障害は接触不良が主な原因であるため、プログラマブルコントローラ、センサ、半導体回路により無接点化した。また、操作機構部については新形消弧室の採用による操作力の低減とグリースレス化を主体としたメンテナンスフリー化の取組みを行っている。これら制御回路および操作機構部の高信頼度化技術について概要を紹介する。

負荷時タップ切換器用高信頼度制御装置

隅  和憲,岡本 行夫

静止機器である変圧器は本来的には信頼性の高い機器である。特に冷却用のファンやポンプを必要としない自冷式負荷時タップ切換変圧器の場合、タップ切換装置が唯一の可動・制御部分であるため、この部分の高信頼度化が重要なポイントとなる。富士電機ではこの負荷時タップ切換器を駆動するための電動操作機構(LTCドライブ)について、装置自体の信頼性の向上、保守・点検の省力化、高機能化などの開発コンセプトをもとに、接触不良障害の防止、メンテナンスフリー(グリースレス化、無注油化)などを特長とするLTCドライブを開発した。

最近の変電所の保守・診断技術

金子 英男,小野 浩志

電力需要の増大や電力の品質向上が要求される一方、保守要員1人あたりの設備量は増大している。このような流れに対応して、センサ技術やシステム技術を応用した機器監視システムや保守支援システムの開発を進めてきた。
本稿では、開発したセンサ技術およびその信号判定処理技術の紹介と保守支援システムの実施例やデータ編集例について述べる。

変電機器の環境調和技術

橋本 信行,下妻 貞夫,松村 基史

最近の都市部への電力需要の集中化や快適性重視の思考への移行などに対応する変電機器の環境への調和の要請が高まっている。
本稿では、変電機器の低騒音化、低振動化、コンパクト化、防災性の向上および外観の環境に対する調和・適合に関する富士電機の技術開発状況を紹介する。

変電所保護・制御システム

佐藤 弘俊,戸井 雅則,西山  聡

電力を供給する設備の保護制御装置の性能、機能は年々高度化しており、これらの技術の基盤となるハードウェアも高性能になってきている。
変電所設備に適用される保護・制御装置において、32ビット汎用マイクロプロセッサを使用したDUFシリーズディジタルリレーの通用例として、変圧器後備保護装置、母線保護装置、母線分離保護装置、VQ制御装置それぞれの方式、構成、特徴などを紹介する。

普通論文

新形ミニUPS(1kVA機)

加護谷隆己,山田 隆二,岩淵 栄樹

小形コンピュータ応用機器の普及拡大に伴い、小容量無停電電源装置(ミニUPS)の需要が拡大している。この種のUPSでは、優れた出力性能は当然のこととして、最近ではますます小形・軽量化、低価格化の要求が強まっている。さらに出力側の性能だけではなく、入力側の性能も重要視されるようになっている。今回富士電機では、最新の高周波スイッチング技術を駆使して、超小形・軽量で高性能しかも自然空冷方式の新形ミニUPS 1kVA機を開発したので、その特長、仕様、特性などを紹介する。

新形ミニUPS(2kVA、3kVA、5kVA機)

篠原 潤一,黒木 一男,船元 孝二

コンピュータ機器の著しい進歩(小形化、高性能)により、これらの電源である小容量無停電電源装置(ミニUPS)に対して、一層小形・軽量化、高性能化の要求が高まっている。
富士電機ではこれらのニーズにこたえるため、スイッチング素子にIGBTを適用した新方式の高周波絶縁SMRコンバータを採用することにより、小形・軽量で高性能な新形ミニUPS(2kVA、3kVA、5kVA機)を開発した。本稿では、その仕様、特長、回路構成および試験結果を紹介する。

超電導装置用電流リード

上出 俊夫,植田 和雄,伊藤 郁夫

超電導コイルなどに外部電源から電流を供給する電流リードについて、富士電機はこれまでに次のものを開発してきた。(1)核融合装置用電流リード(30kA、20kV)、(2)短時間通電用電流リード(過渡100kA)、(3)交流通電用電流リード(5kA)、(4)加速器用フィンタイプ電流リード(5kA)、(5)高臨界温度酸化物超電導体を用いた電流リード(1kA)。
本稿ではこれらの特徴、構成、性能などを紹介する。

核融合炉開発用超電導機器

今野 雅行,能瀬 眞一,榊  喜善

核融合の実現のために実施されている超電導機器開発のなかで富士電機がこれまで開発してきたものについて、超電導コイルを中心のとしてそれらの概要を紹介する。
特に大形超電動コイルに期待されているディスク形の開発内容,大形導体試験設備用、ジャイロトロン用および超伝導バランスについて、それらの特徴、主な仕様や得られた特性について述べる。

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