富士時報
第66巻第12号(1993年12月)

次世代システムの中心はマルチメディアの世界

宮原 秀夫

産業用コンピュータの現状と展望

山口 太平,岡  楯彦

一般のコンピュータ市場で進行している急激な変化は、産業用のコンピュータに対しても基本的な発想の転換を迫っている。産業システムの特徴である実時間制御性能を実現するために、従来は独自の制御用機種が用いられてきたが、汎用的な機能に対する要求の比重が増大し、独自機種では十分に顧客の要求にこたえられなくなってきた。富士電機はオープン性の高い機種を素材として、これを産業用機種に加工することにより、産業用としての要件と汎用性をともに満足できる次世代機を実現した。本稿では、産業用コンピュータの一般市場での動向、要件、プログラマブルコントローラとの関係、技術課題などについて概説する。

富士電機の産業用コンピュータ

内山 純夫,渡辺  裕,大森  茂

CPUの高性能化、低価格化、オープン化、あるいはシステムの集中形から自立分散への移行、とコンピュータ社会は革新とも言える激しい変化にさらされている。このような革新的変化に対応して、このような対応でこたえようとしているのか、またどのような製品群を用意しているのか、など富士電機の産業用コンピュータの現況について報告する。

産業用コンピュータDS/90システム

大柴 正清,大森  茂,原  裕吉

1990年代の情報処理システムが置かれた環境は大きな変化のなかにある。次世代の情報処理システムは常に変化する環境に合わせて早く、柔軟に対応できることが必須要件であり、その要件を満たし得る解としてオープンシステムがある。このような背景を踏まえ、富士電機はオープンなプラットホームを備えた産業用コンピュータとしてDS/90 7000 シリーズの提供を開始した。本稿では、このDS/90 7000 シリーズの開発方針およびハードウェア、ソフトウェアの概要を紹介する。

制御用ソフトウェア開発実行環境「Objectpower」

西田 廣治,安藤 博文,石川 健一

分散システムを構築する際に、解決すべき大きな課題としてコンピュータ間の連携技術がある。この課題を解決するために利用者は多大な努力を必要とする。 Objectpower はこの課題を解決するためにオブジェクト指向設計技術を導入して作られたソフトウェアであり、分散システムの構築や拡張に有利な環境を提供する。 Objectpower は実行環境と開発支援環境の二つの基本システムから構成される。本稿では、 Objecrpower の概要、特長、および実行環境の機能について紹介する。

産業用コンピュータDS/90 7000シリーズのヒューマンインタフェース

西田 廣治,中峠 史朗,小山  深

産業・制御分野におけるヒューマンコンピュータインタフェース(HCI)では、オペレータの判断・情報取得を容易にする直観性、統合表示・操作および高速応答、操作確実性が求められている。産業用コンピュータDS/90 7000シリーズではオープンなプラットホームの上に富士電機のノウハウを結集したGUI・マルチメディアのHCI環境を構築している。本稿ではHCIの各ソフトウェアパッケージについて概要を紹介する。

産業用コンピュータシステムの開発支援環境

斉藤 文弘,後藤 正晴,小平 和正

近年、コンピュータシステム開発におけるソフトウェア開発作業の割合がシステムの高度化により高くなってきている。富士電機ではコンピュータソフトウェアの開発において、品質および生産性の向上を目的としてCASE (Computer Aided Sistem & Software Engineering) を推進してきている。本稿では、産業用コンピュータシステムのソフトウェア開発環境の概要と主な開発支援ツールについて述べる。

産業用コンピュータの連携システム

浅野秀次郎

ネットワーキング、オープンシステム、ダウンサイジング、マルチベンダ化、分散化、とコンピュータを取り巻く環境が大きく変革しつつある。本稿では、こういった状況の下、より高度で効果的な自動化システムを構築するための連携システムという視点で、富士電機におけるネットワーク、およびこれをベースとした連携システムの構成例などを紹介する。また、DS/90 7000、AシリーズとFAパソコンとのシステム間連携ソフトウェアについても紹介する。

FAシステム構築・運用パッケージ「ESYNET」

原田 利博,小松原 滋,塚田 理佳

生産現場における情報収集・管理の自動化に対するニーズの高まりとコンピュータのダウンサイジングをうけて、富士電機は分散処理形のCIM「ミニCIM」を提唱している。ESYNETはこのミニCIMを実現するためのFAクライアント・サーバシステム構築・運用ミドルウェアである。本稿では、アプリケーション開発の大幅な効率化とミニCIM用業務パッケージの品ぞろえ強化をめざしているESYNETについて、その背景、機能と狙い、適用事例を紹介する。

北海道電力(株)帯広電力自動化システム

佐野  香,細川浩一郎,高橋  省

電力系統の規模拡大、供給信頼度の強化のため電力系統集中監視制御システムには信頼性・安全性・保守性の向上および運転支援機能の強化が求められてきている。今回、北海道電力(株)帯広電力所自動化システムの更新を実施するにあたり、以上の観点から、機能分散システムの構築、設備データ多世代管理による保守性の向上、充停電表示・ハッチング・ガイダンス表示による操作安全性の向上、高速潮流計算・パーソナルコンピュータへのデータオープン化・手順逆展開などによる運転支援機能の強化を行ったので紹介する。

大規模浄水場受配電系統切換支援システム

奥田  昇,稲垣 裕二,紅林 達也

浄水場の監視制御システムにおいて、産業用コンピュータは知的情報処理、データベース機能の発達により、より高度な制御・支援機能を提供してきた。大規模浄水場の受配電系統切換は、高い信頼性、即応性が要求され、運転員への適切な支援が有効となる制御である。本稿では本システムの機能、特長、ソフトウェア構成について紹介する。

アルミ缶製造ラインにおけるFAシステム

加藤  隆,西中 正隆

最近のFA分野におけるシステム構成においては、汎用ネットワークを利用することにより、情報を統合化し、工場内に散在する各種端末から情報が手軽に参照、変更、追加、登録が可能なコンピュータシステム(クライアント/サーバシステム)が主流となってきている。本稿では、24時間連続無人運転システムにおけるクライアント/サーバシステムの導入例として本システムを紹介する。

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