富士時報
第67巻第12号(1994年12月)

電力系制御システムの現状と動向

新永 恵洋

情報処理システム全体がオープン化・分散化に急速に進みつつある大きな流れのなかで、次世代の電力系統制御システムはリアルタイム性、多重処理性能および信頼性を堅持しつつ、「機能分散形」に大きく変革するであろうと思われる。また、ワークステーションの活用でマンマシンインタフェースの高度化が期待されること、系統運用業務にかかわる支援機能の充実が求められていることなどを述べる。  

電力向けテレコン装置の技術動向

古河 幸信,石井敬次郎,山岸  聡

 電力向けテレコン装置は、15年以上続いたサイクリック方式からHDLC(High-Level Data Link Control Procedure)方式の実用期に入り、取り扱う情報量、伝送速度、応答時間性能、処理機能などが大幅に向上した。また、発変電所の設備と接続する技術は、LANをはじめとする伝送技術を核にしたシリアルインタフェース化の研究、実用化への取組みが顕署になってきている。
 本稿では、テレコン装置の現状を従来の装置と対比させて述べ、近い将来の動向について紹介する。

東北電力(株)新潟給電指令所自動化システム

大坪 昭友,斎藤 俊哉,渡部  敦

 電力系統の拡大・複雑化が進み、電力供給の信頼性・質的向上がより一層要請されている。今回、電力系統運用の高度化と業務の効率化の要求に対応するため、東北電力(株)新潟給電指令所自動化システムの更新を実施した。本システムは機能分散形システム構成を採用し、状態推定機能・ITCとの接続・事務用コンピュータとの情報連係などの新機能を導入するとともに、従来からの機能の高度化を行った。その特長について紹介する。

関西電力(株)和歌山給電所システム

池上 和彦,篠田 猛雄,鈴木 貴芳

 和歌山給電所システムは、複雑で高度化する電力系統を運用する給電運用コンピュータシステムである。コンピュータにA-120、マンマシン装置にIVC-800Rとマウスを採用し3操作卓で運用している。システムの特長は、非常災害対策本部への情報提供、ファクシミリの自動送信、停電エリアの地図上への表示などの情報処理機能を充実させていることである。また、操作票の自動作成、事故概要報告書自動作成などの日常業務の機械化・省力化を図っている。

中部電力(株)松本制御所システム

小口  栄,藤岡 勝徳,高橋  省

 中部電力(株)長野支店管内の電気所を既設長野給電制御所から分割し、松本地区を一括運用する制御所システムを納入した。高性能・高機能を追求したコンピュータシステムのシステム構成および他事業所との連携とデータメンテナンス手法など機能仕様面の特徴の紹介と、同時に納入した制御所の運用者の系統故障復旧に必要な基礎技術の習慣・習熟および技術向上を目的とした訓練装置について紹介する。

四国電力(株)系統制御所計算機システム

小林 直人,三沢  勇

 系統制御所において、大規模かつ複雑な電力系統を運用するうえで運用者に求められる知識・技術は広範かつ複雑・高度であり、事故時の緊急時対応や、作業停止にかかわる系統信頼度対策・調整業務は、短時間に正確な判断が要求される。そこで、こういった一連の系統運用業務に対し、AIなどの最新技術を駆使した、運用者に分かりやすい形で迅速に情報提供を行うとともに、系統事故発生時の復旧方法を習得するための高度な訓練装置などの運用者支援を充実させた系統制御所計算機システムを開発し、運用に供した。

東北電力(株)蓬莱・信夫ダム管理所システム

高橋 清一,細川浩一郎,早福 正明

 ダムの運用は、制御対象が河川の水という自然現象であるために出水時はダム操作員の高度な判断と迅速な対応を必要とする。今回、東北電力(株)蓬莱ダム・信夫ダムの自動化システムを更新するにあたり、ワークステーションや光LANといった最新技術を導入し、ダム操作員の負担を軽減し、より安全で高度なダム操作をめざして、ダムゲート操作や記録などのダム運用業務を完全に自動化するシステムを完成したので紹介する。

栃木県企業庁今市発電管理事務所の発電所集中制御システム

松沼  隆,白戸 真樹,山澤 成光

 コンピュータを利用して、1か所の制御所から複数の水力発電所や変電所を集中的に監視制御する集中監視制御システムは、電力会社ではすでに十分な採用実績を積んできており、ほとんどのシステムが二重化コンピュータをベースに構築されている。一方公営企業での採用は、これから推進される気運にある。このような背景のなかで、栃木県企業庁向けに発電所集中監視制御システムを納入したので、保守管理範囲の変遷状況を交えながら、システムの全体概要と各装置の特徴、特記すべき機能について紹介する。

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