富士時報
第68巻第6号(1995年6月)
豊かな生活環境に向けての水処理技術特集
岡田 光正
伊藤 晴夫,山西 年男,風間 清
21世紀を間近に控えた今、上下水道事業を取り巻く社会・経済情勢には技術革新、情報化、国際化、高齢化などの大きな変化が生じている。上下水道の受益者住民の価値観や生活観も従来の経済的豊かさの追求という意識から「ゆとり、うるおい、ふれあい」といった真に豊かな生活を追求する傾向がより強まっている。本稿では災害対策も含め、生活環境を豊かにするための水処理技術を展望する。
多田 弘,川上 幸次,青木 隆
産業活動の高度化、生活様式の変化に伴い水環境の汚染が進行しているなか、厚生省、環境庁から、水道水ならびに水道水源の水質に対し、水質基準の見直しと規制の強化が打ち出された。本稿では、これらの水質基準と規制の概要を示し、さらに水源から給水端における水質監視や上下水プラント設備における水質の計測制御システムに適用するバイオセンサや新しい測定方式を用いた水質計について紹介する。
酒井 英治,高橋龍太郎,小倉 明子
水道水の水質向上や河川などの水質保全、水資源の有効利用など、現在、水に対する要求が増えてきている。これらの要求にこたえるため、さまざまな上下水道の水処理技術が研究開発されてきた。本稿では、水道水をより安全でおいしくするオゾンと活性炭を組み合わせた高度浄水処理の概要と技術動向および浄水処理の新しい技術として今後期待される膜ろ過の概要を述べる。また、下水分野では、窒素、リン除去に優れた効果を発揮する2槽式間欠ばっ気活性汚泥法および主に再利用を目的とするオゾン処理について実例を交え紹介する。
山本総一郎,奥田 昇,村井 雅
石油危機を契機に省資源、省エネルギーが叫ばれて久しい。現在では化石燃料消費に伴う地球環境破壊が問題視され、環境との調和の面からもクリーンなエネルギー利用による省資源、省エネルギーが提唱されている。このようななかで、水処理設備を取り巻くエネルギー環境への課題も多い。(1)未利用クリーンエネルギーの有効利用を可能とする小水力発電・太陽光発電、(2)電源系統との調和を図る高調波抑制対策機器、(3)人的資源の有効利用を図る電気設備のインテリジェント化を挙げ、富士電機の取組みを紹介する。
高見澤真司,稲垣 裕二,小倉 英之
近年、郵政省の「テレトピア構想」に代表される高度情報通信網整備の政策が急速に展開されている。一方、上水道事業は安全性の高い、おいしい水の供給、下水道事業は西暦2000年の普及率70%以上をめざしてそれぞれ整備が進められている。本稿では、上下水道分野において事業推進のため適用が始まったマルチメディア通信へのニーズと、そのニーズに対応して適用可能なATM通信システム、マルチメディアLAN、マルチメディア多重伝送装置について述べる。
渡辺 光範,稲垣 聖一,佐山 宏和
高水準の基盤整備を実現・推進するうえで、水道事業体の維持管理の重要性は高まっており、21世紀に向けての方策として高度維持管理の技術について事例を含めて述べる。特に、高度情報処理技術や無人化プラント技術について概観し、さらに、事業体内での複数の部署にまたがる維持管理情報を統合連携管理したシステム事例を紹介する。
石橋 隆史,徳弘 勝由,小島 義和
阪神・淡路大震災を契機として、震災対策に対する気運が今まで以上に高まっている。富士電機では以前から機器に対する耐震設計の検討や基準化および災害に対するシステムのバックアップや影響を最小限にとどめるための検討を行ってきている。本稿では各機器や施工およびシステムに対する耐震設計の考え方や富士電機の取組みを述べるとともに、商用電源停電時でも駆動可能な、太陽光発電を利用したポンプ設備、インバータとバッテリーを利用した緊急遮断弁システムなどの納入例を紹介する。
内田 祥治,渡辺 達雄,横田 厚志
経済活動や社会生活の基盤である公共システムにおいて、「情報の断絶」の及ぼす影響がいかに大きいかを今回の阪神・淡路大震災で痛感させられた。本稿では、災害時に被害を最小限にし、被災後の復旧を迅速に行うために情報通信システムが公共システムに果たすべき役割と現状の課題について考察するとともに、情報通信システムの信頼性を向上するための対策や施策および他事業との連携強化を実現する公共複合ネットワークシステムをいかに構築するのかについて述べる
佐川 学,宮腰 英二,高橋 正行
1995年1月に発生した阪神・淡路大震災は、震災に対して現在の上下水道設備が持つさまざまな課題を浮き彫りにした。これらの課題を解決するシステムを構築するためには、ハードウェア技術だけではなく、運用にかかわるソフトウェア技術も重要である。本稿ではどのようにすれば災害に強いシステムを構築できるかについて、計装・情報システム技術を中心に述べる。
新岡 彰,森 俊二
生活環境設備の一環として、ライフラインの一つである上下水道などの安定稼動、安全確保への要望が高まっている。これに対応するため、労働力の軽減、ポンプ所の安定稼動をめざし、それを実現するために保守点検ロボットへの需要が増大している。こうしたなか、1992年10月から、東京都下水道局と重電5社との共同研究として、無人ポンプ所保守点検ロボットを開発したのでその内容を紹介する。
小林 和彦,八代 一伸,宮腰 英二
現代生活を支えるライフラインとしての上下水道の使命は大きく、その維持管理、監視制御などの管理を実現するシステムは、複雑化、高度化しつつある。富士電機では、施設の規模や処理内容によって機能を実現するコンポーネントをネットワークで組み合わせ、「安全で正確な運転管理」を目的とした上下水道分散処理システムを提供している。これらのシステムの構成、分散された機能とシステムを構成するおのおののコンポーネントについて、その概要を紹介する。
黒谷 憲一,山岸 馨,桐野 秀明
1994年の異常渇水や1995年1月の阪神・淡路大震災において、「安定性の高い水道」の必要性が改めて認識させられた。富士電機では原水運用から配水運用までの水道施設の安定した運転を目的とする水運用システムの納入実績が数多くあり、1994年の異常渇水時においても、水量配分計画技術、配水池運用計画技術、水圧調整技術などにより、大いにその効果を発揮した。本稿では、数多くの納入実績とノウハウおよび要素技術により完成された水運用制御技術について紹介する。
浅岡 幸博,小山 修
1994年夏の異常渇水を機に、これまで工業用水や離島の水道用に実施されてきた海水淡水化プラントが飲料水の供給用として、改めて注目された。本稿では、海水淡水化プラントのうち、今後の主流となると思われる「逆浸透法」によるプラントについて、プラントの概要、特長を述べる。また、監視制御機能に求められる要件とそれぞれの設備の制御機能についても紹介する。
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注
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