富士時報
第68巻第9号(1995年9月)

計測の構造化,システム化

藤村 貞夫

計測・制御技術および計測機器の現状と展望

福本 武也,井部 成身,沖本 一機

情報・制御システムとネットワーク、計測機器について、最近の技術・市場動向および富士電機の現状・展望について述べる。情報・制御システムとして統合化システムがシリーズ化され、さらにパーソナルコンピュータ、汎用パッケージ(ISV)の多用化とネットワークの進歩でオープンなライトサイジングシステム、ライトセレクションの時代に入った。計測機器はインテリジェント化とフィールドバスの規格化が一段と進み、上位の生産管理システムからローカル計測機器まで含めたオープンな統合化自律分散システムが期待されている。

新世代電子式発信器「FCX-A/Cシリーズ」

中村 公弘,湯原 忠徳

すでに好評を得ているFCXシリーズ発信器をベースに、FCX-AシリーズとCシリーズ発信器を開発した。両シリーズともユーザーから寄せられたニーズを取り入れて進化・発展させること、および多様化するニーズにきめ細かく対応するために性能・機能を重視する高性能形と、小形・軽量・取扱いやすさを兼ね備えた普及形に二層化することを設計方針としている。本稿では、それぞれのシリーズの特長、構造、検出原理、主な仕様、特性データなどについて紹介する。

可搬形超音波流量計「ポータフローX」

山本 俊広

富士電機は、1982年に世界に先駆けて可搬形超音波流量計「ポータフロー」を発売し、手軽な流量テスタとして好評を博した。そして、このたび最新機種として「ポータフローX」の開発を完了し、発売した。最新のエレクトロニクスとディジタル信号処理技術を駆使し、変換器はハンディ形で、より使いやすいものになった。検出器も軽量で高信頼性となり、小形・大形センサのほか、小口径用と高温用をシリーズ化した。新しい計測方式として、新音速測定方式とアドバンストABMを採用し、高精度で気泡に強いものとなった。

EIC統合化制御システム「MICREX-IX」のシリーズ拡大

笹野喜三郎,早川 広明,中野 正人

MICREX-IXのシリーズ拡大と、計測分野から他分野への製品展開について述べる。大規模システムでは、プロセス入出力ユニットと内部計器の種類の追加、ユーザータグ点数の拡大など主に機能の充実を図った。より重要性が増している中規模プラント向けのMICREX-IX2000シリーズでは、コンパクト化と高性能化を両立させた。公共分野向けにはCRTの高解像度化と水処理プラントの操作監視に最適なオペレーションを実現したFAINS-IXを開発した。 

富士電機のパーソナルコンピュータ応用クライアント・サーバシステム

川田 正治

近年、パーソナルコンピュータ(パソコン)の機能・性能の向上には著しいものがあり、各企業のあらゆる情報処理システムの構築場面において、必要不可欠な存在になってきている。特に、パソコンおよびワークステーションを活用したクライアント・サーバシステム(CSS)が大きな成果を上げ始めている。本稿では、計測制御システム分野におけるパソコンを主体とした富士電機のクライアント・サーバシステムについて紹介する。

フィールドバスの動向と富士電機の取組み状況

池田 卓史

フィールドバスの規格化・製品化に対する富士電機の活動について紹介する。富士電機は、低電流信号方式、光フィールドバスの規格提案を行い、また、フィールドバス協会に理事会社として参画し、製品化を推進している。光フィールドバスは、国際規格対応の次世代FFIシステムの開発を推進している。

関西国際空港における給油設備の計装

庄林 直樹

年々増え続ける航空需要に応じ、1994年9月4日に関西国際空港が開港した。本空港のように大規模な空港の給油施設では、多数の航空機に対して安全かつ確実に燃料供給を行うために、制御システムにも高機能かつ高信頼性が求められる。また、本空港は日本で初めての24時間運用可能な空港であり、計装システムも24時間、365日運転監視可能なことが要求される。本稿では、本空港の概要、給油施設計装制御システムの構成とその機能の概要について紹介する。

ごみ焼却処理施設の計測制御システム

小林 恒明

最近の清掃工場は、公害防止設備、余熱利用設備、灰溶融設備などを備え、大規模かつ複合プラントとなっている。これらの設備を効率よく安全に運転・管理するために、計測制御システムに分散形制御システム(DCS)が積極的に導入されるようになってきた。本稿では、最近のごみ焼却処理施設の概要と、それに対応した富士電機のごみ焼却計測制御システムIICS(Incinerator Instrumentation & Control System)のラインアップを紹介する。

川崎製鉄(株)千葉製鉄所納入第4製鋼制御システム

増田 康男,藤原 善治,平井  隆

1994年7月に稼動を開始した川崎製鉄(株)千葉製鉄所第4製鋼工場に納入した電気、計装、コンピュータ制御システムで、主に電気計装制御システムについて紹介する。
昨今の国内の粗鋼生産量の1億トンの維持が厳しいなかにあって、20世紀最後の新設工場として、21世紀においても品質・価格の両面で競争力を持った設備をめざし、制御システムにおいてもフレシキブルな操業・高度な自動化システムが要求された。本システムでは、数多くの新しい取組みを行い、これらのニーズにこたえた。

製鉄所向けエネルギー管理システム

大屋 和博

鉄鋼業で消費するエネルギーは、国内全体の約12%を占めている。本稿では、多種多量のエネルギーを消費する鉄鋼業におけるエネルギーセンタの動向と将来に関しての考察を行った。合理化・省力化を主体とした最近の施策と、富士電機の対応についての紹介もあわせて行っている。

火力発電所の計測技術

井上 芳範,ハ賀 勝己,小澤 秀二

近年の火力発電所は電力需給調整のため、一層の負荷調整能力が要求されている。使用される計測制御装置は、自動化範囲の拡大、制御性能、操作性能、保守性能の向上など、対応技術面で高度化してきている。本稿では、既存の火力発電所を例に、最近納入したAPC(Automatic Power Plant Control)装置およびABS(Automatic Burner Control)装置について概要を紹介する。

セメント工場における分散形制御システム

梅基 一生

セメント業界も、バブル経済の崩壊、安い輸入セメントの影響などを受け、経営体質の強化、セメント製造設備の見直しなどが行われている。富士電機ではこれらのニーズにこたえるべく、最新式の分散形制御システムを提供している。特長として、コンピュータシステムとの結合、電動機制御との結合など、セメントプラントに最適なシステムとなっている。本稿では、これらの概要について紹介する。 

製油所における回転機械保安システム

東  尚巳,松平 竹央,渡辺 芳彦

石油製油所においては、安全操業を目的とした計画保全と異常の早期発見・対策および将来の危険予測が重要な課題である。特にポンプ、ミキサなどの回転機械の点検・保全業務を効率良く行うことは、これら課題に対して大きな効果が期待できる。富士電機では、最大1,000台もの回転機械の保安信号を常時モニタリングして高度な傾向値管理が行える他に例を見ないシステムを新規開発し、三菱石油エンジニアリング(株)経由で東北石油(株)仙台製油所へ納入したので、システム概要を紹介する。

カーペット・塩化ビニル製品生産ラインのPOPシステム

菊池 洋司,中野 雄一

カーペット・塩化ビニル生産工場における生産管理[在庫管理、進捗(しんちょく)管理]、設備管理(故障実績)の精度向上を狙いとしたPOPシステムの導入事例を紹介する。特長は次のとおりである。
(1)IBM-PC/AT互換機ベースのオープンシステム
(2)耐環境に優れた端末機器
(3)タッチパネルによる簡単なオペレーション
(4)修正・変更の容易なソフトウェア構成

高速濃淡処理形ビデオセンサ「FAY-400」とその応用

山村 辰男,井上 彰紀,石坂  豊

FAY-400は画像処理部をLSI化し、濃淡処理しながら高速判定可能な小形化検査装置である。微細な欠陥や淡い欠陥を、画像の濃淡レベルの変動に影響されないようにして、安定に検出可能である。処理速度は標準形で最高1,800個/分、高速形で3,000個/分である。多面検査や分割検査のため、最大4カメラまでの切換判定がオプションにて可能になっている。判定中設定変更、2値化の自動設定など、設定サポート機能を有し、メニュー選択方式により、操作の簡略化が図られている。

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