富士時報
第68巻第10号(1995年10月)

特集論文

今こそ地熱発電を

湯原 浩三

地熱発電の現状と展望

小林 道男,江崎融悧亜

世界の地熱発電の設備容量は約6,800MWに達しているが、フィリピン、インドネシアなどでは大規模の地熱開発が進められている。現在の開発形態の特長は民間デベロッパーが発電プラントを建設するBOT方式が増えていることで、これによって急速な発電所の建設が可能となっている。技術的動向としては、現地工事期間短縮のためのスキッド形に代表されるような工場組立完成度の増大、チタン翼の採用によるタービンの高性能化、中低温地熱資源の発電利用などがある。

最近の地熱発電設備

村上  広,山田 茂登

富士電機は地熱発電の分野に参入して以来、順調に納入実績を伸ばしてきている。その経過のなかで、富士電機は地熱蒸気タービン発電機の納入ばかりでなく、地熱発電プランと全体のエンジニアリングから、土木建築・据付け工事まで含めた総合的なプラント建設に携わっており、地熱発電の分野においてトップメーカーとしての地位を築いている。本稿では、最近の地熱発電設備を紹介するとともに、最近の動向、技術、既納プラントの運転実績について紹介する。

フィリピン・パリンピノンII地熱発電所の発電設備

真中  浩

富士電機は地熱発電の分野に参入して以来、順調に納入実績を伸ばしてきた。そのうちでフィリピン・パリンピノン地区には、合計10ユニット、総出力194MWの納入実績を持ち、稼働中である。本稿では、1995年春に顧客引渡しが完了したパリンピノンII地熱発電設備の現地建設を中心にその概要を紹介する。

フィリピン・レイテ島マリトボグ地熱発電所の発電設備

鈴木 雄三,田中 信章,岡部 真明

富士電機はフィリピンに37,500kW地熱発電設備(3基)、20,000kW地熱発電設備(4基)を1983年および1993年に納入し、現在好調に運転中である。それに引き続き、同国レイテ島のマリトボグ地熱発電所向けに77,500kW発電設備(3基)をフルターンキーにて受注、1号機の工場製作を完了し、当初計画どおり、1996年6月の営業運転をめざして、現在建設工事中である。本稿では同発電設備の概要を紹介する。 

地熱発電用蒸気タービンの最新技術

加藤 佳史,和泉  栄

1980年に本格的な地熱発電用として40MW蒸気タービンをエルサルバドルに納入して以来、富士電機の地熱タービンは運転実績を踏まえて絶えざる改良が加えられてきた。最新の大容量標準機および中容量スキッド機では、現地据付け期間と定期検査期間の短縮が図られている。また、地熱タービンの最大の問題である腐食に対しては、富士電機の通常火力で実績がある反動式翼列、インテグラルシュラウド翼、フリースタンディング低圧翼およびドラム形一体鍛造ロータが地熱蒸気に対する対策とともにきわめて有効である。

地熱タービン発電機の技術進歩

鈴木 忠雄,白石  明,小原 孝志

富士電機の地熱タービン発電機は、高効率化と高品質を目標に製作されており、安定した運転に対して高い評価を得ている。地熱タービン発電機として20年以上の運転実績から得られた地熱対策技術を基本として、最近さらに地熱対策を強化した信頼性の高い新系列タービン発電機を製作した。この新系列地熱用タービン発電機の特徴について紹介する。

最近の地熱発電プラント用電気・計装設備

岡部 真明,渡邊  功

地熱発電所は山間部に作られることが多く、電力の需要地と発電所が離れている。このため、電気設備は長距離送電を考慮した仕様とする必要がある。関し・操作の面では、CRTによる監視機能の採用、さらには分散形制御システム(DCS)によるCRTオペレーションの導入を行った。本稿では今回採用した電気設備ならびにDCS設備とその特徴について紹介する。

普通論文

関西電力(株)美濃川合発電所バルブ水車・発電機

大田  宏,須永 政孝,並木 尚紀

最近、国内外における水力エネルギーの開発分野において落差25m以下の低落差地点に適用されるバルブ水車・発電機の有利性について見直され、開発計画が進められている。本稿では、1995年5月に運転開始した監視電力(株)美濃川合発電所向けに製作・納入したバルブ水車発電設備において、設計・製作・据付けに導入された新技術を紹介するとともに、本プロジェクトの概要について紹介する。

中部電力(株)二軒小屋発電所26MW立軸6射ペルトン水車

牧野 正廸,早馬  弘,戸崎  尚

1995年6月7日に営業運転を開始した26MW立軸6射ペルトン水車には、富士電機の技術ならびに中部電力(株)との共同研究の成果に基づいた新技術が適用されている。本稿では、発電所建設の土木費低減に寄与したペルトン水車の余水路省略技術、世界的にも例を見ない6射ペルトン水車の高比速度化技術、および保守の省力化を目的とした立軸6射ペルトン水車では国内初のデフレクタ・ニードル操作機構の電動化技術を紹介する。

北海道電力(株)然別第二発電所水力発電設備の近代化

佐藤  保,小林 一夫,奥野 貴之

近年、わが国の一般水力発電設備においては、総合合理化の観点から機器の簡素化およびメンテナンスフリー化技術の採用が進められている。既設の老朽化した発電施設においても、こうした新技術を採用することにより設備の近代化が図られている。このたび、北海道電力(株)然別第二発電所の近代化工事が完成したので、採用した近代化技術とその効果について紹介する。

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