富士時報
第68巻第11号(1995年11月)
光技術特集
伊賀 健一
黒岩 重雄,黒田 一彦,佐野 安一
わが国の光技術を展望するとともに、富士電機の光応用技術の現状を次の三つに分類して紹介する。
(1)光機能デバイスおよび周辺端末装置・事務機用デバイス(オートフォーカスモジュール、モールドタイプレーザダイオードなど)
(2)光応用計測制御伝送機器およびシステム(光フィールドバス、光制御機器、バーコードリーダなど)
(3)光エネルギー利用デバイスおよび装置(アモルファスシリコン太陽電池、スラブ形YAGレーザなど)
松平 竹央
フィールドバスの実用化に向けた活動が活発化している。富士電機はFFIシステムをベースに光フィールドバスの国際標準規格の提案を行い、FFIの次世代システムとして光フィールドバスシステムの開発を推進中である。光式のフィールドバスは電気式と比較してさまざまな利点を持っている。本稿では光フィールドバスの特長、富士電機の開発の取組み状況について紹介する。
藤井 準一,古沢 武三
制御システムを構成するネットワークでは、耐ノイズ性に優れ、高速・長距離伝送が可能な光ファイバによる伝送への要求が強い。富士電機では、制御システムの基幹LANから、フィールドネットまで、光伝送への対応を完了している。本稿では富士電機の制御用光ネットワークを概観するとともに、新たな展開として、光伝送を利用した超高速ネットワーク(FDDI:開発中)およびマルチメディア多重伝送システム(FTDM)について紹介する。
森 文治,中村 豊
光学技術において、光ファイバを採用した光システムはその多くの特長を生かして応用され、実用化されてきている。富士電機では従来の電気式コンポーネントを完全に光化した光制御機器の機種拡充の一環としてプラスチックファイバを使ったシステムに比べ、当社従来品の10倍以上の伝送距離(300m~1km)を実現したポリマクラッドファイバを使った光制御機器を開発した。本稿ではシステムの概要、検出機器のリミットスイッチ、操作機器の押しボタンスイッチ、およびトランシーバについて述べる。
田中 秀幸,森 文治,中村 豊
電気設備における予防保全の重要性が高まりをみせるなか、光ファイバの持つ防爆性、高絶縁性、耐電気ノイズ性を利用した光制御機器の新機種として、小形光温度スイッチを開発した。端子台、ブレーカなどの電流バスバー接続部のように小形な充電部分の温度監視が可能であることが特長である。光学系設計は光パワーを評価できる光線追跡シミュレータを開発して行った。検出動作状態はスイッチ本体側でもラッチされ、目視可能である。検出温度は60℃から120℃までシリーズ化した。
辻 伸彦,佐藤 剛,岩上 久
バーコードシステムはPOSをはじめとしてFA、物流などの分野で情報入力端末として不可欠のツールになっている。今回、高速性、省スペース化が要求されているFA、物流分野向けに開発したセンサ・デコーダを一体化したバーコードリーダ「PK3」を紹介する。このバーコードリーダは、2眼受光方式による広い読取り幅、ラベルの汚れに強いラスタ走査、小形でAC100Vを使用、ティーチング機能などの特長を持っている。
荻野 慎次,北村 祥司,進藤 洋一
コンパクトディスクプレーヤ用のモールドレーザダイオードを開発した。有機樹脂でモールドしたこのレーザダイオードは従来のキャンタイプよりも低価格で提供できる。周囲温度の変化で樹脂やリードフレームが変化してチップの位置やビーム角度が変化するという問題があったが、有限要素法により、熱変形の解析を行い、透明樹脂の厚さを最適化することにより、変動を抑えられた。試作品のピックアップによる評価では温度変化による変動を従来のキャンタイプと同等に抑えることができた。
葛西 彪,岩崎 唯信,長嶋 崇弘
加工用レーザをめざし、2個のYAGスラブを用いたタンデム形のパルスモード1kW級スラブ形YAGレーザ装置を開発した。YAGスラブ結晶は、厚さ5.6mm、幅18.4mm、長さ1766mmの大きさであり、レーザ入出射端面はブリュースタ角に成形されている。共振器はYAGスラブの熱特性を考慮に入れた解析によって、コア径0.8mmの光ファイバ伝送が可能な構成である。この装置からのレーザ光を光ファイバ伝送後、ステンレス鋼板の切断に適用した結果、板厚25mmを速度70mm/minで切断できた。
宮岸外志久,宮坂 和好,梨子田雅直
ELディスプレイは耐環境性に優れ、また寿命も長いので主に産業分野で使用されている。「明るく使いやすいディスプレイ」をコンセプトに、フィールドメモリを内蔵して表示データのメモリ機能を有するインタフェース一体形高輝度ELディスプレイを開発した。適合インタフェースは、パーソナルコンピュータ外部出力のRGBインタフェースとVGAインタフェースである。高輝度化は二分割タイプのELパネルと高輝度駆動制御用ASICで実現し、インタフェース処理専用のASICを別に設ける形で製品化した。
市川 幸美,吉田 隆,藤掛 伸二
電力用太陽電池の用途の拡大および生産性の向上を目的に、フレキシブルなフィルム基板太陽電池の開発を進めている。この太陽電池は、SCAF構造と名付けた全く新しい直列構造をもつ。製造技術の中心になるのは、新たに提案するステッピングロールアモルファスシリコン(a-Si)製膜技術である。ここでは、これらの新しいプロセス技術と、大面積太陽電池の試作結果について述べる。さらに、このフィルム基板太陽電池を用いた建材一体形モジュール(ソーラールフィング)についても紹介する。
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注
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