富士時報
第68巻第12号(1995年12月)
産業プラント用可変速駆動特集
松瀬 貴規
高井 明,阿武 英文
産業プラント用電気設備のシステムコンポーネントとして、可変速駆動装置は今や必要不可欠のものとなっている。
本稿では産業プラント用可変速駆動における電力変換装置、制御技術およびドライブ系ネットワークに関する富士電機の技術的現状を概観し技術動向を展望する。
甲斐 聡,高橋 薫,佐久間 新
従来の直流配電形インバータをフルモデルチェンジしたIGBTインバータ(FRENIC4000シリーズ)を製品化した。用途別に3機種あり、(1)ベクトル制御による高精度速度制御、トルク制御のFRENIC4000VM4、(2)V/f一定制御のFRENIC4000VM4、(3)合成繊維工業向けのFRENIC4000T4について紹介する。また、マンマシンインタフェースとしての保守・点検ツールについても述べる。
鉄谷 裕司,田島 宏一
ベクトルインバータの適用増加により従来の性能、機能に加え、操作性、小形化、汎用性などさらなる向上を要求されている。これらにこたえ、制御性能の向上、オートチューニング機能による調整の簡単化、センサレスベクトル制御による汎用電動機の駆動、などの特徴を備えた高性能ベクトル制御インバータを新たに開発した。また、発生損失の低減、冷却効率アップにより従来機種に比べ大幅な小形化を実現した。本稿ではその仕様、特長について概要を紹介する。
高橋 哲男,坂本 守,鈴木 究
交流可変速駆動装置用高電圧・大容量GTO PWNインバータとして大容量の逆導通GTOサイリスタ(4,500V/3,000A)を用いた3レベルGTOインバータを開発した。容量は3,000kVAであり、高圧電動機をダイレクトドライブできるように出力電圧は3.3kVである。装置の小形化のため冷却は水冷方式とした。制御装置には、ハードウェア、ソフトウェアともにフレキシブルな制御向き言語DDCシステムを適用している。PWM制御にはダイポーラ、ユニポーラ変調を併用し、低速から高速まで全領域で低い高調波となっている。
一條 正美,関 康和,原口 浩一
可変速駆動装置はパワーデバイスとその応用技術の進歩によって飛躍的な発展を遂げた。現在、大容量のインバータにはGTOサイリスタが使用されているが、高周波化に対する要求は強く、これにこたえられるパワーデバイスの実用化が待たれている。本稿では、この要求に対する一つの回答ともいえる世界初の加圧接触構造のIGBTの概要を紹介するとともに、今回のデバイスの動向についても言及した。
加藤 邦夫,遠藤 研二,大沢 博
鉱山設備の斜坑巻上機は、機械設備を含む駆動装置のコンパクト化と省保守化、ロープの伸縮により発生する巻上機の走行速度変動と停止持のローリングの抑制などの強い要求がある。これらの要求に対し、富士電機は特長あるシステムを開発・実用化し、提供してきた。本稿では特色ある応用例として、長大斜坑巻上機に適用した、世界最大級の永久磁石同期電動機のサイクロコンバータドライブとH∞制御について紹介する。
小石 尚之,平田 雅彦,伊藤 秀之
風や波などの長周期外乱による構造物の揺れに対し、従来、構造設計上の振動制御法がとられてきた。近年、制振装置を構造物に付加することで積極的に振動を抑える方法が研究されている。この装置は高速位置決め制御システムの一例ともいえる。本稿では交流可変速駆動装置の応用例として高層ビル、橋梁(きょうりょう)、船舶などに利用される制振装置を取り上げ、制振制御システムの概要、制振装置の用途、制振効果などについて紹介する。
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