富士時報
第69巻第2号(1996年2月)
予防保全技術特集
秋月 影雄
久保田 勉,森田 公
国際競争の激化に伴い、生産設備を効率的かつ安全に運転する必要性がますます高まっている。
本稿においては、生産設備の診断技術、保全管理技術、性能・信頼性向上技術などの、予防保全技術について、富士電機の開発経費も含めて述べる。さらに、予防保全技術の動向として、ライフサイクルコストの観点から必要とされる要素技術、保全管理システムなどについても言及する。
齋藤 芳之,石橋 景二,寺本 文雄
プラント制御システムを維持管理するうえで、システムのライフサイクルをとらえた総合保全管理システムが不可欠である。本稿では、富士総合保全管理システム「COMET」の紹介と本システムの中核をなすリモートメンテナンスシステム、CEデータベースシステムの説明および導入における経済効果を述べる。また、保守全般における業務課題をいかに解決するかを紹介する。
松葉 義行,土方 和也,及川 芳朗
受変電所の運転監視・支援にはヒューマンコミュニケーション機能だけでなく、運転および保全員をサポートする各種支援機能を必要とするようになってきている。本稿では受変電設備における運転監視・支援システムおよびこれらのシステムを構築する多機能ディジタルリレー、多機能ディジタルコントローラ、ローカル監視モニタ、ならびに防災用自家用発電設備の監視・支援システムについて、その概要を紹介する。
仲神 芳武,宮 良一,伊藤 敬三
運用開始から20から30年を経過した油入変圧器が増えつつある。電力を安定的に供給するためには、変電の主要機器である変圧器の劣化診断を行い、信頼性の確保と更新時期の見極めが重要な課題となっている。
本稿では、経年劣化の考え方と劣化診断法の検討状況、および実器への適用として、油中ガス自動分析装置によるCO2+CO分析と油中フルフラール量の測定例を紹介する。
小原 孝志,佐野 孝明,和田 元生
設備の安定稼動には保全が重要であり、そのためには設備診断が欠かせない。今回、回転機と受変電設備を対象に新鋭診断車を開発した。回転機診断車の特長は、パーソナルコンピュータ(パソコン)により計測、記録、特性計算、評価などを自動的に行えるようにしたことである。これによって診断処理能力を従来の約2倍にすることができた。受変電設備診断車は、変圧器、遮断機、配電盤などの設備を1台で診断できるよう各種の最新鋭測定器を搭載している。また、各種測定データのパソコン処理による診断結果が自動的に出力されるシステムになっている。
飯島九十九,小原 孝志,竹田 政寛
現在実施している物理化学的手法による回転機絶縁材料の熱劣化診断方法について紹介する。物理化学的手法を用いた絶縁材料の劣化診断は、従来の電気特性試験では困難であったコイルエンド間隔片をはじめとする補強部材を、ごく少量のサンプルで診断することができる。また、材料の診断データがあれば、直流機や火力発電機の区別なく適用することができ、従来の電気特性試験と合わせて実施すれば、絶縁システム全体の劣化を把握するうえで有効である。
宮本 昌広,山田 守
部分放電計測技術はガス絶縁開閉装置や変圧器などの電力機器の研究開発、工場試験、そして現地運転に至るまでの絶縁信頼性の評価に適用されている。さらに、現地フィールド対応の予防保全技術では、トラブル発生の初期段階でその兆候を検出する必要がある。
本稿では、富士電機がすでに電力機器に適用している代表的な部分放電計測技術、ならびに現地フィールド適用として現在開発を進めている新しい計測技術、そして今後、部分放電計測技術が適用される低電圧機器への展開についても記述している。
高橋雄四郎
近年の火力発電所は、起動・停止回数の増加、負荷変化の増大で運転は過酷となり、安定運転を確保するための設備診断・保守が重要となっている。本稿では、既設発電所の保守経歴データと点検検査で得た記録データとを、パーソナルコンピュータを使って分析し、報告書を作成する、タービン点検保守支援システムを構築し、運用を開始したので紹介する。
加藤 雅喜
既設経年火力発電設備の重要度と老朽化による不具合発生の不安に対し、富士電機では、今後さらに15から20年継続使用していただくため、長年蓄積した保守技術と最新技術を適合させた長寿命化対策の提案を強力に推進している。
本稿では、富士電機が行っている長寿命化対策提案と実施へ向けたアプローチ方法ならびにその具体的適用技術について紹介する。
根本 一男,日和佐寛道,大石 道夫
富士電機は老朽化したタービン発電機設備の更新に関して、新技術を開発し、設備の信頼性向上、長寿命化を図っている。これらの新技術は既設タービン発電機の基礎を流用すること、更新工事期間を短縮することなどを可能にしている。
本稿では、これらの最新技術の一部を紹介する。
松原 清秀
経年火力発電設備の電気・制御設備は、負荷調整用として過酷な運転を余儀なくされており、より一層の信頼性を求められている。
富士電機は、これら経年設備に対して信頼性の向上に重点をおき、積極的な改良・改善の展開を図っている。本稿では、電気・制御設備について、最近の各機器に求められるニーズと、富士電機が行っているこれらニーズに合致したきめ細かい提案内容の概要を、提案例で紹介する。
奥野 貴之,荒木 義明,飯島 勝
わが国の水力発電設備の歴史は古く、老朽化が進んでいる水力発電設備もいまだに多い。こうした老朽化している設備の更新が進められているが、水力発電設備を取り巻く環境の変化と近年の技術開発状況を踏まえて、改修時ならびに更新時に要求される技術とそれに対応する技術の多様化が進んでいる。
本稿では、既設水力発電設備に関する最近の技術動向と、設備近代化技術の特徴的な例を紹介する。
小黒 秀雄,島田 和則,高柳 善夫
富士電機では、水力発電所のオーバーホール工事における現地工事の工期短縮と省力化の目的から、水車部品の現地加工技術および試験の自動化技術の開発に取り組んでいる。本稿では、水車ディスチャージリングの加工技術および負荷遮断試験における計測・データ処理を自動化した試験装置「チャレンジャーH」について紹介する。
清水 久,植田 和明,鴇田 知士
新型転換炉「ふげん」の燃料取扱設備制御装置を全自動とする更新工事は、原子炉運転中に並進して実施し、既設機器との良好な追従性と更新効果を確認した。廃棄物取出用マニピュレータは、別々の廃棄物貯蔵庫の一方では移動・整列という機能、他方では取り出すという機能を合わせ持つ装置であり、その開発内容について述べる。また、解体工事計画を進めるなかで、三次元CAEの活用、解体工事用データベースの構築および解体管理データ加工用ソフトウェアの開発についても言及する。
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注
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