富士時報
第69巻第4号(1996年4月)
統合エンジニアリング支援システム特集
関口 隆
田中 春樹,安東 伸彦
「制御システム構築のライフサイクルにかかわる手段・手法」と定義され得るエンジニアリング自身が注目され始めてからまだ間もない。しかしながら、制御システムの高機能化・複雑化の傾向に伴い、エンジニアリングの内容も急速に大規模化・複雑化してきており、エンジニアリング支援環境の重要性が高まっている。本稿では、これまでのエンジニアリング支援環境の現状を概観し、その課題および統合エンジニアリング支援システムの将来展望について述べる。
引地 正則,林殿 勉
エンジニアリング業務の効率化に関しては、これまでにも多くの試みがなされており、一定の成果を上げてきた。しかし、最近の経済環境の変化により、さらなる効率化が求められている。また、エンジニアリング業務に関しては、効率化だけでなく品質の向上も同時に求められており、そのためには、業務の見通しとともにエンジニアリング環境の革新を実現する必要がある。富士電機では、これらを実現するために、統合エンジニアリング支援システムを開発した。本稿では、そのコンセプトを紹介する。
中内 敏幸,乳井 直樹,国府 教
プラントのエンジニアリング業務は、見積りから顧客引渡しまでの広範囲にわたり、これら各業務におけるエンジニアリング情報はそれぞれ深く関連している。本稿では、プラント受注前の見積業務と受注後の機器の仕様定義、および機器の手配について、各業務で発生するエンジニアリング情報をデータベースサーバで一元的に管理し、有効利用することによりエンジニアリング業務の合理化をめざした支援機能について紹介する。
佐藤 守,羽賀晴比古,和田 圭介
制御システムの高度化・高機能化は、制御システムの構築にかかわるエンジニアリングの内容を急速に大規模かつ複雑にしてきている。このエンジニアリングの効率化・容易化が制御システムの品質・生産性向上の重要な要因であり、これらの課題を解決するために、統合エンジニアリング支援システムを開発した。本稿では、制御用コントローラのソフトウェアを仕様定義から保守まで一貫した高水準な開発環境で設計・製作するための支援パッケージ、制御仕様設計機能を紹介する。
土屋 豊実,長谷川正美,中里 幸主
プラント制御装置のうちで、ヒューマンインタフェース部分であるHCI制御装置のアプリケーションソフトウェア開発を支援するシステムである。このシステムは、要求仕様から物理設計までの統合開発環境を提供するものである。この機能は必要性を満たす「基本的な要求機能」だけにとどまらず、「あったほうが良い機能」までの範囲を含んでいる。また対話性を追及し、資源・時間効率も重視している。成果物としては、データのほかに利用形態に応じた各種ドキュメントも提供できる。
友永 孝文,岡田 茂之
巨大化・複雑化するエンジニアリング業務を効率よく行うツールとして、統合エンジニアリング支援システムを開発した。本稿では、試験・保守業務に観点をおき、統合エンジニアリング支援システムの試験・保守機能およびエンジニアリング環境改善による効果について紹介する。
広川 久夫,山梨 啓介,富樫 崇
制御システム構築におけるエンジニアリング業務のなかで、物理的なコンポーネントであるハードウェアの選定と接続を決定するシーケンス設計業務は、制御システムの性能・品質を左右する重要な業務である。制御システムのソフトウェア化が急速に進むなかで、さらなる高品質なシステムの提供をめざし、システム設計・ハードウェアシーケンス設計・ソフトウェア設計業務を統合したエンジニアリング環境を構築した。本稿では、ハードウェアシーケンス設計支援機能を紹介する。
乳井 直樹,根津 英樹,杉本 博之
ソフトウェア量の増大が顕著である電気プラントエンジニアリングでは、エンジニアリングの過程で発生する情報量は膨大となっており、これを効率よく、かつ合理的に処理する支援環境をいかに構築するかが課題となっている。本稿では、この課題解決の例として、機器リスクの機器データを基とした、PIOおよびネットワーク信号のプログラマブルコントローラ(PLC)への自動割付支援機能、さらにはPLCのソフトウェアを自動生成することを目的とした編集設計支援機能を紹介する。
園村 泰彦,柴田 典夫,阿部 明
最近の監視制御システムは、高機能化・高品質化・短納期化・低価格化が求められており、これらに対応できるシステム構築の手段として、新しい支援システムを使用している。このシステムを適用した場合の一般的な納入業務形態を説明し、適用時の特徴として、ISO9001の品質システムの認証維持とエンジニアリング情報の活用例について述べた跡、具体的な適用例について紹介する。
吉田 昭,小暮 敏志,吉田 聡
公共施設分野のプラント制御システムは、EIC統合システムをベースに広域的な運用管理ができるシステムへと高機能化・複雑化してきている。そのシステムを効率よく、高品質にエンジニアリングするためには、仕様設計からシステム試験まですべての業務で一元化された情報を同一のツールでエンジニアリングする必要がある。これを実現するために、統合エンジニアリング支援システムを開発した。本稿では、公共施設分野への統合エンジニアリング支援システムの適用例をエンジニアリング手順に従って紹介する。
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注
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