富士時報
第69巻第5号(1996年5月)
感光体特集
特集論文
感光体特集に寄せて
金光 義彦
感光体の現状と今後の展望
北澤 通宏,佐藤 勝博
電子写真方式のハードコピー装置としては、普通紙複写機(PPC)とノンインパクトプリンタがあり、高速・高画質・普通紙の使用が可能という特長により市場が拡大してきた。感光体はこれらの電子写真方式の装置の心臓部品である。富士電機は、1973年(昭和48年)にセレン感光体を市場展開し、製品系列の拡大に努めてきた。現在は、性能・品質の向上が著しい有機感光体(OPC)を主力に生産している。本稿では、電子写真分野の現状と今後の動向について解説するとともに、富士電機の感光体の製品系列と今後の取組みについて紹介する。
プリンタ用有機感光体
西牧慎一郎,小日向俊紀,横山 芳樹
電子写真方式のページプリンタは、情報通信分野の目覚ましい発展に伴って、より高い画像品質が求められている。富士電機は、(1)新機能材料(電荷発生層:CGL、電荷輸送層:CTL)の開発・導入による高感度の実現、(2)プリンタプロセスに適合したCTL樹脂バインダの選択による長寿命化の実現、(3)高い耐環境信頼性の確保、(4)安全な化学材料での構成、などにより、ページプリンタの用感光体として低・中感度型のタイプ8Bに続き、高感度がたのタイプ8Eを開発したので紹介する。
複写機用有機感光体
成田 満,笠原 正彦,井口 靖
複写機用有機感光体は、安全性、小形化(小径化)、低コスト化、感光体周囲プロセスのユニット化により急速に進展してきた。また最近では、使用環境における動作安定性、高感度、高耐刷性が要求されている。富士電機では、このような市場要求に対応しうる複写機用有機感光体を製品化しており、特に高速機用有機感光体は高性能化され、幅広い分野まで適用可能となった。
複写機・プロッタ・プリンタ用大形有機感光体
大月 邦夫,新井 明夫
電子写真応用機器のなかで大判図面用普通紙複写機(PPC)、CAD/CAM/CAEの出力機器としてプロッタ・プリンタなどの進展がみられる。富士電機は、セレン感光体を開発した当初からこれらの機器の心臓部である大形(大口径・長尺)感光体の開発・製品化を行っている。今回この分野での経験を生かして複写機・プロッタ・プリンタ用大形有機感光体の開発・製品化を行った。機種系列としては、乾式現像用に湿式現像用を加え拡大を図っている。形状は、外径60~180mm、長さ340~1,000mmが製造可能である。
プリンタ用セレン感光体
高野 晋,安達 和哉,伊藤 成通
セレン感光体は、電子写真方式を用いた普通紙複写機やプリンタの印字形成部品として長年使用されてきた。なかでも電子写真方式を用いたプリンタは、高品位で高速の印字が可能などのメリットにより需要が拡大している。本稿では、そのなかでも近年のOA化に伴い着実な伸長を遂げているプリンタ用セレン感光体についてその概要を紹介する。
有機感光体材料技術
田村 信一,鍋田 修
有機感光体は、有機材料の持つ構造の多様性により材料設計・選択を適切に行うことができ、さまざまなプロセスを有するノンインパクトプリンタや普通紙複写機(PPC)への適用が拡大し続けている。富士電機では、有機材料設計・材料合成技術をベースに独自の有機感光体材料を開発し、各種プリンタやPPCに適合する感光体の機種系列拡大を図ってきた。本稿では、富士電機が開発した有機感光体材料について、その概要を紹介する。
有機感光体材料の解析・評価技術
川口 剛司,黒田 昌美,川上 春雄
有機感光体の性能は、用いる材料(電荷発生材料、電荷輸送材料、樹脂バインダ)の分子構造およびその組合せや適用方法によって大きく左右される。このため、有機感光体の材料開発や特性向上において、その基礎となる材料の分子構造と感光体特性の関係を把握することは重要である。ここでは、感光体に用いる有機材料の分子構造の解析技術と、これを用いた感光体の物性評価技術(電荷移動度と電荷トラップ)について紹介する。
有機感光体の製造技術
藤村 順二,寺沢 良雄
有機感光体(OPC)について、低コストで品質の良い製品を生産するためのキーポイントと技術的課題について、富士電機の有機感光体生産工程の概略を紹介しながら述べる。有機感光体の生産工程は、大きくまとめると、(1)素管の成形、表面処理工程、(2)前処理工程(特に水系洗浄)、(3)成膜行程(塗料調合、塗工、乾燥)、(4)組立、試験(自動外観検査)からなる。これらすべての工程を統括的に良く管理された状態で稼動させることが、高信頼性、低価格の製品を生産できる条件である。
普通論文
2.5kV/1kA平型逆導通IGBT(パワーパックOGBT)
関 康和,高橋 良和,一條 正美
2.5kV/1kAの平型逆導通IGBT(パワーパックIGBT)を開発した。これはIGBTを両面冷却可能な加圧接触構造とし、高信頼性を目的として開発したものである。パワーパックIGBTは、モジュール構造IGBTに比較してコンパクトにできるばかりでなく、パワーサイクルやヒートサイクルなどに対して高信頼性が確保できる。また、パワーパックIGBTは、2.5kVクラスIGBTとしてオン電圧、ターンオフ損失などきわめて良好な特性を示している。
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注
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