富士時報
第69巻第6号(1996年6月)

特集論文

技術開発におけるコンピュータ的なもの

大久保 仁

SF6ガス入変圧器の技術変遷

田中 一郎,金子 英男

富士電機は、1973年に66kV、3MVA SF6ガス入変圧器を試作・開発して以降、近年の安全性・防災性のニーズに対応して積極的にその開発に取り組んできた。現在までの納入実績は、66/77kV級を主体に149台(1,408MVA)で良好に運転中である。最近では、中国電力(株)地下式変電所に110kV、40MVA器を納入した。最近の技術成果としては、(1)ジグザグフローによる巻線内冷却の改善、(2)高落差放熱器による冷却効率の向上、(3)15MVA以下クラスへのシート巻線適用による製作合理化、(4)ガス流解析、三次元電界解析技術の飛躍的進歩がある。

F6ガス入変圧器の主要納入製品

細井 智行,橋本 信行

近年、社会生活における電気エネルギーへの依存度が高まるにつれ、変電設備においても電力供給信頼度の向上、環境への調和がますます要求されるようになっている。富士電機では、このような社会の要請にこたえるべく、主要変電機器である変圧器の不燃化、低騒音化、コンパクト化のためにSF6ガス入変圧器の開発に早期から取り組み、現在までに149台(バンク容量1,408MVA)の納入実績を持ち環境調和形変電所の実現に貢献している。本稿では富士SF6ガス入変圧器の主要納入製品について紹介する。

一般需要家向けSF6ガス入変圧器ALFOSΣシリーズ

小寺 昭紀,高萩 隆司,橋本 信行

本稿は、アルミニウムはく巻線を使用した中容量SF6ガス入変圧器の開発について報告する。この変圧器には、一次巻線として幅広の薄いアルミニウムはくを一次巻線に、またアルミニウム条を二次巻線に採用している。はく巻線の特性について、理論的な解析と検証が行われ、例えば、巻線中の電流分布や温度上昇分布の直接測定や、絶縁モデルによる実験について述べている。最終的には実規模検証器(三相、66/6.6kV、5MVA)を製作し、各種形式試験や短絡試験を含む特殊試験を行い、信頼性を実証している。

SF6ガス入変圧器の基礎技術

仲神 芳武,藤井  清,小倉 真一

富士電機では、今まで困難とされた幅広シートの自動巻線化の課題を解決して、総合経済性に優れる完全自冷式のシート巻線SF6ガス入変圧器「ALFOSΣシリーズ」を開発した。
本稿では、開発にあたって実施した、冷却・絶縁の基礎特性に関する検討とモデル検証結果の概要について紹介する。

SF6ガス入変圧器の品質保証技術

和田 元生,江上 悌治,西山 彰一

SF6ガス入変圧器は、環境調和、防災性を要求する公共施設、群市部などの人口過密地域の受変電設備として利用されるため、高信頼性が要求される。その製作にあたっては、受注から出荷までの各工程で管理項目を明確にし、確実な品質保証を行っている。
本稿では、SF6ガス入変圧器製作にあたっての品質管理について紹介するとともに、シート巻線を採用した新形ガス入変圧器の製品化に向けた信頼性検証試験を実施したので、その内容について報告する。

一般需要化向けSF6ガス入変圧器の短絡試験

松山  亮,池田 健二,矢島 嘉和

一般需要化向け新形SF6ガス入変圧器(ALFOSΣシリーズ)は、変圧器巻線構造にアルミニウムはくのシート巻線を採用し、従来の円板巻線などに比較して巻線製作時の省力化、自動化による工数削減と部品の種類、点数の削減などによる製作期間の短縮といった特長をもっている。本稿では、シート巻線構造を採用した変圧器の短絡電流発生時の電磁力に対する機械的強度を検証するため、試作器よる短絡試験を実施し、JEC-2200-1995に規定される短絡強度を有することが実証されたのでその結果を紹介する。

SF6ガス入変圧器の製造管理技術

大町 伸介,和田 元生,横内 和彰

最新のメカトロニクス技術、クリーン化技術を駆使して、シート巻線機を開発した。この巻線機の特徴は、幅広のアルミニウムはく、および絶縁フィルムを高速かつ一定張力で巻き取る点にある。また、異物対策としては、特殊なクリーナ、静電気除去装置などを巻線機に組み込むとともに、巻線機室内を気流制御し、環境面でも対策した。

SF6ガス入変圧器負荷時タップ切換装置

高萩 隆司,福士  彰,隅  和憲

電圧調整機能が必要なガス入変圧器に適用する負荷時タップ切換装置を新しい設計コンセプトのもとに開発した。この装置は次のような特徴を有している。(1)2抵抗4真空バルブ方式の採用による切換機構のシンプル化、(2)真空バルブの交換が容易なカセット構造、(3)タップ選択器へのローラコンタクトの採用および駆動機構への転がり軸受の採用による金属磨耗粉発生の防止、(4)電動操作機構を機械制御方式から電子制御方式に変更することによる機構部部品点数の半減および高機能・高信頼化の実現。

6kV級小容量SF6ガス入変圧器の開発

橋本 信行,田中 幸雄

昨今、受変電設備に対して不燃性と安全性の社会的要請がますます高まりを見せており、これらの要請にこたえうるSF6ガス入変圧器の適用が進んでいる。従来、油入変圧器やモール度変圧器が主流であった6kV級の分野にもガス入変圧器のニーズが生まれ、商品化の要請が高まっている。富士電機では、このような背景をふまえ6kV級小容量SF6ガス入変圧器を開発し、シリーズ化を図ったので、その概要を報告する。

普通論文

低ガス圧スパッタリング法により形成したYBCO膜の特性

松井 俊之,木村  浩,鈴木  健

低ガス圧スパッタリング法の特徴は、基板をターゲットの中心軸上に設置し、なおかつターゲットから基板までの距離を平均自由行程と同程度に設定することにより、基板へ入射する粒子に対する選択性を持たすことにある。これにより、表面平たん性と結晶性の優れたYBCOが13nm/minの成長速度で得られた。また、この方法で形成されたYBCO膜は、ターゲットから放出された活性酸素が膜の酸化に寄与し、YBCOは斜方晶で成長することを示した。

高分子フィルムとその積層体の物性評価

堀口 道子,山下 満男

高分子材料を用いた電子部品・電子デバイスの研究開発が進むに伴い、それらの材料の物性評価方法の開発への要求も高まっている。ここでは、フィルム基板アモルファスシリコン太陽電池を一例とし、それらの材料の物性評価方法について検討した内容を幾つか報告する。ここで得られた結果は、製造プロセス条件や積層構造設計に反映されている。

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