富士時報
第69巻第7号(1996年7月)
自動販売機特集
栄久庵祥二
新井 正彬,平尾 憲一
1995年末、日本国内における自動販売機および自動サービス機の普及台数は、約540万台である。すでに国民一人あたりの普及率でみると、自動販売機の先進国アメリカをはるかにしのぐ普及状況であり、今や自動販売機は、日常生活に欠かせない役割を果たすまでになっている。自動販売機に対する最近のニーズとしては、(1)景観との調和、(2)地球環境問題への対応、(3)製造物責任法への対応、など社会的要請・課題が増大している。本稿では、最近の自動販売機の商品化現況と若干の将来展望について述べる。
永田 和重,脇 憲太郎,横山 仁司
市場ニーズの変化に対応し、デザインを一新したサーペンタイン式缶自動販売機の新シリーズを開発した・新シリーズでは、販売装置を新規開発し、収容数の大幅なアップを図っている。また、冷却装置・断熱構造の見直しにより省エネルギー化を図ったほか、夏場の電力ピーク時対策として、ピークシフト・ピークカット機能を搭載している。さらに、新しいキーボードの開発によりダウンサイジングを図った。その他、使いやすさを追求した新機能を盛り込んでいる。
槙田 幸雄,綱木 一良,杉野 一彦
自動販売機の制御部は、自動販売機の薄形化に伴い、小形化が望まれている。一方、ユーザーの多様なニーズに対応すべく制御システムへの高機能化要求も高まってきた。本稿では、これらに対応すべく新しく開発した缶自動販売機の制御システムを紹介する。特長は、(1)小形化、(2)省線化、(3)高機能化への対応、などである。
西脇 正剛,長崎 正,堀 茂樹
近年、消費者の味覚の高級化、本物志向はますます高まり、さらに既存の飲料だけでは飽き足らず、スープ、シェークなどの新飲料を要望するようになってきた。こうした状況変化に対応して、従来とは全く異なった新飲料調理システムの技術を完成させ、味覚の向上、新飲料販売、オペレーション効率向上を狙ったミキシング式カップ自動販売機を完成させた。本稿では、カップミキシングシステムを主体に特長、仕様、構造について紹介する。
水谷 克己,濱本 賢一,横山 勝治
カップ自動販売機に対する最近の市場ニーズとしては、消費者の味覚の高級化、嗜好(しこう)の多様化、集客力のある扉デザインなどがある。これらのニーズに対応するため、中身商品販売の拡大を狙いとした飲料の味覚の向上と安定化を可能にした新機能の開発を行い、カップコンビネーション自動販売機の新シリーズを完成した。本稿では、新シリーズの特長である味覚の向上と安定化の機能について概要を紹介する。
源水 敏彦,喜田 明,奥村 英明
設置場所として増加している屋内を対象に、しかも、オフィスビールなどのインテリア環境に溶け込む従来機と一線を画すデザインコンセプトを掲げた「インドア」3シリーズの開発を行った。多様な設置環境・用途に応じてシンメトリックデザインの「インテリア」、出窓風デザインの「インテリアフェーズII」、壁埋込み設置を特徴とした「インテリア21」の各シリーズをラインアップした。「インテリア」と「インテリアフェーズII」は通商産業省の「グッド・デザイン商品」に選定されている。
大橋 光則,海野 覚
ペーパーパック自動販売機は紙容器入り飲料を主体として瓶、缶、カップも販売できる。食生活の多様化、健康志向などの消費者ニーズに対して、多種類の飲料、食品が飲料メーカーなどから発売されている。特に1995年からデザート(プリン、ヨーグルト)類の販売希望が強くなった。富士電機は業界に先がけ新チェーンマルチラックを開発し、直積(じかづみ)ラックとの組合せによるラインアップを完成させた。本稿ではその機種構成、仕様、主な特長について紹介する。
冨永 博,西 正博,的場 一嘉
冷凍食品市場の着実な伸びに伴う市場ニーズに対応すべく、弁当、スナックなどを販売する電子レンジ別置式、電子レンジ内蔵式の冷凍食品自動販売機を順次市場に投入してきた。このたび、これまでの技術をベースにさらに高機能化し、冷凍保存されたうどん、そば、ラーメンなどの麺(めん)類を解凍・過熱し、熱湯を加えてできたての商品を提供できる、電子レンジと給湯装置を内蔵した自動販売機を業界で初めて開発した。本稿では、その主な特徴、構造および制御について紹介する。
桐澤 功明,小寺 利治,吉崎 務
自動販売機の路上へのはみ出し問題から薄形、大収容量自動販売機などへの需要が見込まれ、それに対応した薄形紙幣識別機を開発した。この製品は、市場で発生するいたずらに対する防止機能を向上させている。一方、顧客に対しては、紙幣識別機の取付け方向や紙幣収納容量などを考慮した機種を拡充し、シリーズを増やしている。
橋本 正美,竹中 勝巳,山下 智弘
缶ビール自動販売機の屋外設置規制などにより、ビールディスペンサ市場は著しい成長を続けている。そのなかで、これまで人手に頼っていた生ビールの注入を全自動で行うことができるビールディスペンサを開発した。主な特長は次のとおりである。
(1)販売ボタンを押すだけで自動定量注入ができる。
(2)店舗のレイアウトに合わせて設置できるデザインである。
鶴田 和博,寿上 宏司,林 倹一
自動販売機の解析技術は、構造設計、冷却設計などの分野に適用され、さらに他の分野にも展開中である。解析というと、モデルを作り計算と実験を比較検証をすることと思われるが、計算した結果をいかに設計に展開するかに視点をおいた。感度解析、実験計画法、簡素化モデルなどいろいろな工夫をしながら、設計レベル活用できる解析技術の開発を行った。本稿では、自動販売機の外箱、扉の設計への適用方法、および冷却設計のシミュレーション手法について概要を述べる。
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注
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