富士時報
第69巻第9号(1996年9月)

電力機器への解析技術の適用特集

数値解析技術の進歩と課題

中田 高義

火力機器の最近の解析技術

酒井 吉弘,岸  郁朗

火力発電所を構成する蒸気タービン、発電機などの機器には、高い信頼性と性能が要求され、設計・製作・据付けの各段階で、きわめて高いレベルでの品質管理が必要である。蒸気タービンをはじめとする火力機器の設計は、従来の二次元CADから、三次元CADへの移行が進んでおり、さらに設計・解析・製造・検査を統合した三次元CAEシステムが開発されている。コンピュータのダウンサイジング化と高機能化により、シミュレーション計算がワークステーションやパーソナルコンピュータで行えるようになり、最適設計に威力を発揮している。

蒸気タービン設計への流れ解析技術の適用

中村 憲司,加藤 秀雄

蒸気タービンの設計にとって、その内部に蒸気の流れの状態を正確に精度よく把握することは、性能向上だけでなく、振動の予測をはじめとした信頼性向上にも大きな効果がある。近年の流体解析技術、特にCFDの発展に伴い、従来は不可能とされてきた翼列内部の高速な流れや粘性を考慮した流れを精度よくシミュレートすることが可能となった。これらを適用した最適化設計により、富士電機は、高効率の新世代低圧翼や3DS反動段翼を開発し、さらに、排気ケーシングなどにまでその適用範囲を広げつつある。

水力機器の最近の解析技術

赤羽賢太郎,鈴木 良治

今日、水力危機の受注から現地据付け、試験までのあらゆる段階で、さまざまな形でコンピュータが使われている。本稿では、計画・設計段階で駆使されている流れ解析・強度解析・振動解析、過渡現象解析を取り上げ、その歴史と最近の技術について概観した。

高落差ポンプ水車ランナの振動解析技術

鈴木 良治,木本  裕,坂田 昌良

揚水発電所の高落差化に伴って、ポンプ水車ランナに発生する変動応力の予測技術がますます重要性を増している。本稿では、流体-構造連成振動解析による変動応力の予測技術と、実落差・実揚程実験設備による実働応力の測定技術によって、設計段階でポンプ水車ランナの振動特性を十分な精度で把握できることを示す。

水車・ポンプ水車設計への流れ解析技術の適用

銭   逸

エンジニアリングワークステーション、パーソナルコンピュータの低価格化・高速化により、流れ解析技術は設計ツールとしての適用可能性が開けてきた。本稿では、最先端の流れ解析技術を水車・ポンプ水車の設計に適用された事例を紹介し、三次元流れ解析技術の信頼性、継続性を示す。

原子力プラントにおける最近の解析技術の適用

尾崎  博,じんざ圭介,古賀 和浩

富士電機の原子力部門は、高速原型炉もんじゅなど、開発炉の燃料取扱い・貯蔵設備を中心とする設備の開発・設計・製作を担当してきている。これらのプラントは、いずれも国内にて自主開発されてきたもので、設計・開発のツールとして多くの解析プログラムが導入あるいは開発されてきた。最近使用している解析プログラムを整理すると、(1)構造・耐震解析、(2)流動解析、(3)炉心・遮へい・臨界解析、(4)安全解析、に大きく分類され、近年のコンピュータ能力の向上により、エンジニアリングにおける解析の効率向上が図られてきている。

変電機器の最近の解析技術

金子 英男,堤  睦生,高坂 正明

変電機器の開発は、機械的強度、電界、熱、流れ、応用など相互に関連する動的、静的な多くの条件を満足させながら要求性能を達成する必要がある。本稿では、最近、富士電機で適用している解析技術を紹介する。変圧器では、(1)電界解析による電界レベルの把握、(2)三次元磁界解析による構造物の最適形状の検討、(3)巻線の冷却シミュレーション、などを行っている。開閉装置では、(1)三次元電界解析による精度向上、(2)スペーサの応力解析による最適形状、(3)遮断時の熱ガス流解析による遮断性能予測、を行っている。

ガス入変圧器冷却への流れ解析技術の適用

仲神 芳武,小倉 真一,和田 元生

変圧器の冷却性能を改善するには、特に巻線部の流れや温度上昇を詳細に把握する必要がある。本稿では、富士電機における最近の流れ解析技術の紹介と、油入変圧器の絶縁油に比べて熱容量の小さいSF6ガスを冷却媒体に用いたガス入変圧器への適用例について報告する。

ガス遮断機の電流遮断現象と熱ガス流解析技術

佐藤  賢,杉山 修一,藤田 雅彦

ガス遮断機(GCB)に求められている小形化の実現には、電流遮断時に発生する熱ガスによって引き起こされる課電部の耐電圧低下を抑制しなければならない。本稿では、GCBタンク内の耐電圧特性の実測例およびガス流解析を用いた耐電圧特性の改善の検討例を紹介する。

回転機の最近の解析技術

遠藤 研二

回転機の設計開発部署で利用されている最近の回路網解析、過渡現象解析、電磁界解析、改造解析について、おのおの適用例を付して紹介する。回路網解析では永久磁石機空げき部の変数分離形フーリエ級数による高速求解、過渡現象解析では高調波吸収発電機のモデル化について言及する。また、電磁界解析では大径永久磁石機の塊状鉄心内渦電流による次過渡リアクタンク発生の状況と、短絡時の磁石内反作用磁束の分布状況、構造解析では船舶推進用永久磁石主電動機の振動解析結果を示す。

回転電気機器の通風冷却解析技術

氏家 隆一,山本  勉

回転電気機器の通風冷却性能の予測技術として、現在、等価回路網法が広く使用されている。一方、最近のコンピュータ技術の急速な進歩により、流れ解析による回転電気機器内の冷却風流れのシミュレーションが可能となってきた。流れ解析の導入は通風冷却性能の予測精度面で飛躍的な改善をもたらすだけでなく、新通風方式開発などの効率化に大きく貢献する。本稿では、流れ解析による回転電気機器内の冷却風流れのシミュレーション技術を中心に、幾つかの実施例を挙げて解説する。

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