富士時報
第70巻第5号(1997年5月)

画像処理研究の3レベル

池内 克史

富士電機における画像処理技術の動向

宮川 道明

富士電機では、画像処理技術を応用したビジョンシステムをさまざまな分野の自動外観検査装置として多数納入してきており、これらの実ラインで活躍している。本稿では、ビジョンシステムに対するユーザーニーズの動向と、富士電機の対応技術の概要を述べる。特に、最新の画像処理技術は、濃淡処理、フルグレースケール処理、サブピクセル処理、超高解像度処理、高速処理の点で大きく進歩している。これらの技術と富士電機のビジョンシステムFAYシリーズとの関係について概要を紹介する。  

包装・容器検査への画像処理技術の応用

山村 辰男,中島 康晴,杉山 良雄

製品の包装、充てん用の容器については、厳しい品質検査が要求される。富士電機では、ワークの形状、状態に合わせて、各種の微細欠陥を高速に検出する画像処理装置、ビデオセンサFAY-400シリーズを製品化している。この装置を使用して、ワークの全面検査を行うためにはカメラを多面配置したり、対象領域を分割して画像入力し、検査を行っている。ワークによっては、位置制御が必要となり、搬送機構に画像処理装置を組み込んだ検査システムを提供している。すでに、各種ラインでの多くの稼動実績がある。  

医療用機材検査への画像処理技術の応用

山村 辰男,宮脇 淑久,伊藤 公一

医療用機材は品質上の問題がないよう、全面にわたって厳しい検査が要求される。機材は形状がさまざまであるため、ワークに応じて位置決め搬送制御しながら、画像処理装置FAY-400の機能を生かし、カメラを切り換え、全周検査を実施している。ワークの場所、不良項目によって、画像の状態が変わってくるので、場所別、項目に合わせた画像処理にて換出している。高精度の検査システムとしてすでに多数の稼動実績がある。

農水産物の選別・加工システム

福田 和彦,日浦  禎,伊東 英俊

農林水産業の生産性向上において、画像処理技術が果たす役割はますます大きくなっている。農水産物・食品への画像処理の適用は色と複雑・立体形状の計測が基本であり、対象に応じた柔軟なソフトウェアの開発が要求される。用途としては農水産物の仕分けをはじめ、表面状態の良否検査や立体計測による加工など応用範囲が広がっている。富士電機では、カラー形状認識装置FAY-700を用いた農水産物の選別・加工システムを多く手がけており、このなかからみなみ筑後農業協同組合に納入したなす選果システムを紹介する。 

電子・精密加工部品検査システム

福田 和彦,細川 勝美,夏目 新二

電子部品や精密機械部品が高精度化するに伴い、部品の加工精度を精密に検査する需要が多くなっている。富士電機では濃淡パターンマッチング技術による高精度濃淡検査を目的としたグレースケール画像処理装置FAY-600を開発した。正規化相関手法の高速演算LSIやサブピクセル技術の開発により、部品のピッチ・幅・長さ・高さなどの精密計測やモールド表面の微細欠陥の検査が可能になった。適用例として、ICリード計測や表面実装部品検査、さらに電磁開閉器の外観検査の例を紹介する。

複写機・プリンタ用有機感光体の自動外観検査システム

福田 和彦,柳澤 邦昭,新井 明夫

最近のマルチメディア技術の進展に伴い、普通紙複写機・プリンタ用有機感光体(OPC)の品質向上と製造コスト低減を目的としたOPC自動外観検査装置を開発した。OPCの表面欠陥および内部欠陥を検出するために、高分解能カメラ、均一な照明装置、OPCの搬送のためファインメカニズムを開発した。さらに、点欠陥とむら欠陥を検出するための専用濃淡画像処理アルゴリズムと高性能のワークステーションによる判定ソフトウェアの開発により点欠陥と濃淡むらの検出性能を目視検査と同等以上とした。

ハードディスク媒体外観検査装置への画像処理技術の応用

木内 哲夫

ハードディスク媒体の自動外観検査装置を複合サンプリング方式を適用することにより実用化した。物体表面の光散乱モデルを応用し、複合センサによるマルチ画像からきず、凹凸、表面粗さなどを検出する。検出分解能は、水平方向20μm以上、垂直方向20nm以上、表面粗さ10A゚以上である。高精度に加えて処理速度も3.5インチのハードディスク媒体で1時間に900枚と高速であり、インラインの検査装置として、品質面、生産面での効果が大きい。急速に展開しつつあるレーザゾーンテクスチャ媒体にも対応している。

Windows対応文書読取りシステム

小倉 一郎

このシステムは、基本ソフトウェアXPal-WINとパーソナルコンピュータ、日本語ドキュメントプロセッサ(光学式文字読取り装置)XP-300A for Windows, TWAIN対応スキャナの組合わせで使用する。特長は、自動連続認識モードによる文書の自動一括処理である。ADFスキャナで連続して画像を読み込んだり、LAN経由で画像ファイルを投げ込みながら、連続で自動傾き補正、自動領域抽出(文字、表、図の抽出)および認識をすることができる。また、連続読取りをしながら、保存済み文章を編集する同時編集機能も備えている。

道路監視システムへの画像処理技術の応用

武笠  稔,紺野 章子,外山 公一

道路設備のなかでも特に高速道路のトンネルにおいてはITVカメラが一定間隔で設置され、人間が24時間体制で監視している。このITV画像を取り込み、台数・速度計測、異常走行検出、落下物・駐停車検出を画像処理によって行う道路安全監視システムの開発について概要を紹介する。また、光学パターンをCCDカメラで撮影し、画像処理によりトンネル内の空気の汚れを透過率として計測する煙透過率測定装置(VI計)についても開発内容を紹介する。  

侵入者監視システムへの画像処理技術の応用

紺野 章子,清水  晃

公共施設などでは映像を用いた監視が広く行われてきているが、監視員に負荷をかけず、かつ常時監視を行いたいとの要求が強い。本稿では監視カメラの映像を画像処理し、侵入者や不審動作を検出するシステムを紹介する。このシステムは、画面内にいる人物を検出するだけでなく、特定領域への侵入・接近・立止まりなどの不審動作を認識し、動作の重要度に応じた段階的なレベルのアラームを出すという特徴を持つ。

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