富士時報
第70巻第6号(1997年6月)

水質関連ソリューション技術特集

特集論文

センサと水質ソリューション技術への期待

後藤 圭司

水質関連ソリューション技術の動向と展望

伊藤 晴夫,風間  清,福田 政克

水環境には、閉鎖性水域の富栄養化、慢性的な渇水、河川における水質事故などの課題が存在する。これらの解決のため、富士電機は各種センサ、処理装置、応用システムを開発し、ソリューション技術として提供している。その例として、水質事故に対応した毒物検出システム、クリプトスポリジウム対策用高感度濁度計、最適薬注凝集コントロールシステム、高効率オゾナイザなどがある。また、今後の水環境には、界面活性剤や油膜の検出、大腸菌の検出などが重要と考え、その開発や応用に取り組んでいく。 

上下水道と水質センサ

青木  隆,篠原 康裕,高橋 康夫

上下水道における「水質」は、安全でおいしい水へ期待や水環境の保全のためのかぎとしてますます重要となっている。また、浄水場や下水処理場の処理方式にも新方式が登場し、水質制御とセンサの使命は高くなっている。富士電機では、従来からの水質計に加え新方式による特長ある水質計を開発し、新しい管理システムとして提供している。本稿では、上下水道プロセスにおける水質センサをプロセス制御と関連づけて紹介する。

河川水質管理システム・給水水質モニタリングシステム

多田  弘,大戸時喜雄,田中 良春

最近、河川の突発的水質事故が多発している。富士電機では、有害化学物質の流出や廃棄物の不法投棄などによる河川水質事故を連続・高感度に監視するセンサと水質事故時の河川管理者業務を支援する河川水質管理システムを開発した。また、水道分野では、水道水の微量着色を、目視を上回る感度で計測できる給水水質モニタリングシステムを製品化した。これにより、需要家側での水質検査を自動化でき、水道配管工事での濁水影響回避などに威力を発揮する。 

水の高度処理とプロセス制御

高橋 和孝,高橋龍太郎,本山 信行

水道水の異臭味、濁水による恒常的な水不足など、近年の原水水質の悪化は塩素注入量の増加を招いている。「安全でおいしい水」への要望が高まるなか、塩素注入量の低減のためにも首都圏だけでなく地方にも水の高度処理が展開され、容易に運用できる安定したプロセス制御が求められている。本稿では、オゾン・活性炭による高度処理プロセス制御について実例を含めて紹介する。 

トリハロメタン計測と管理

中原 泰男,山本総一郎,川上 幸次

トリハロメタンは、厚生省通達の制御目標値となって16年、水質規準に追加されて4年半が経過し種々の対策がとられているにもかかわらず増加の傾向にあり、低減化対策の強化が求められている。本稿では、トリハロメタンを増加させている水環境の変化および生成のメカニズムと低減対策の現状について述べるとともに、ガスクロマトグラフィと同等の感度で連続計測が可能なトリハロメタン計を用いた、取水から配水までのトリハロメタン監視システムと低減化の手法について述べる。

クリプトスポリジウムとセンサ

田中 義郎,齋藤 芳雄,山口 太秀

クリプトスポリジウムは、家畜や野生動物のふん便が雨水とともに河川に流れ込み、浄水場の浄水処理をすりぬけて上水として配水され感染を起こした例もある。近年、上水道の原水の取水を河川下流域に設ける場合が多く、クリプトスポリジウムの混入の危険性は高いものと推測される。本稿では、クリプトスポリジウムとその対策方法について、厚生省の暫定対策指針をもとに紹介し、対策に必要となる高感度濁度計およびマイクロフロックの粒径を計測し最適な凝集剤を注入する制御方式について述べる。

災害時の水質管理

守本 正範,蓮本 了遠

阪神・淡路大震災では、被災状況の現状把握がいかに重要であるかということが再認識された。本稿では地震をはじめ種々の災害発生時、上下水道施設における水質の状況を把握するため、どのような水質計が活用でき、得られた水質データをどのような手段で確実に伝送し、データ処理を行い情報として提供できるかを示す。また、災害対策の具体例として応急給水施設、浄水施設予備供給システム、および災害時応急給水システムを紹介し、そのなかで水質計の果たす役割を述べる。

普通論文

衛星搭載センサ冷却用クライオークラ

藤並  太,大嶋 恵司,遠藤 幸一

TIR用冷凍機は通商産業省/(財)資源探査用観測システム研究開発機構が開発した。資源探査用将来形センサ(ASTER)の熱赤外放射計(TIR)の冷却に用いられる。この冷凍機は、冷却能力70K-1.2W,80,000時間後の信頼度0.97以上、冷凍機の運転によって生じる振動力0.1N以下、消費電力55W以下などの高性能が要求された。これらの要求はVCM駆動の対向ピストンを、すきまシール内に支持ばねで非接触に保持することなどによって達成した。本稿では、TIR冷凍機の設計概念、検証試験結果などを報告する。

本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。