富士時報
第70巻第10号(1997年10月)
産業用電動力応用プラント技術特集
Thomas A Lipo
荒井 至,有年 隆男
産業用電動力応用プラントにおける最近の技術進歩について概要を述べる。可変速駆動システムではIGBTインバータの進展、制御システムではオープン化と分散化、制御技術ではアドバンスト制御適用の伸長、そしてプラントエンジニアリングではエンジニアリング支援システムの充実が特筆できる。
中村 一夫,石橋 景二
産業用電動力応用分野における富士電機の統合化制御システムの基本的な考え方とキーコンポーネント、さらに今後の展開について述べる。よりオープンな技術を駆使した高品質で低価格なシステムの実現に向け、オープンと柔軟性を開発コンセプトとするMICREX-AX、およびオープン環境のPROFIBBUS分散制御システムの実用化に取り組んでいるので概要を紹介する。
保坂 忍,花澤 昌彦,木谷 剛士
IGBT素子を用いた単機容量1,200kVAの3レベルインバータを製品化した。大容量域は3レベルインバータを多重接続、中容量域は従来から多数台の納入実績がある2レベルインバータを適用することにより、プラント用大中容量可変速駆動装置の系列化が一層進展した。設定監視システムの充実、伝送のオープン化、プラント制御機能の一部搭載も実現した。今後はインバータ出力の大容量化・高電圧化と機能のインテリジェント化を図る。
西田 英幸,藤森 晃,伊藤 伸一
アドバンスト制御理論全般について種々の研究・開発ならびに実用化を進めている。このなかで外乱オブザーバを応用し、等価的にモデル追従制御を実現することによって最近実用化した速度制御系について述べる。さらに現在開発中の、振動抑制が困難といわれている慣性比が小さい2慣性系に対する振動抑制制御、およびモデル化誤差に対する応答の変化が小さい速度制御への簡易型(単純)適応制御の応用などについても述べる。
根津 英樹,田中 芳紀,郡 健
産業用電動力応用プラントは、要求仕様の増大と低価格化という相反する命題を抱えながら高級化し複雑になっている。このため、エンジニアリング過程で発生する情報量は増大しており、これを効率的かつ合理的に支援する環境を整備することが課題となっている。この課題に対処するため、エンジニアリング情報の共有化と可視化をベースとしたグループエンジニアリングを可能とする支援システムを開発し運用している。本稿では、そのシステム構成と各種の支援機能の概要について述べる。
南 英倫
最近の圧延機駆動システムでは、交流可変速駆動方式の適用が進んでいる。熱間可逆ミル用には、同期電動機のサイクロコンバータ駆動方式が適用され、中小形連続ミルでは、誘導電動機のPWMインバータ駆動方式が適用されている。本稿では、それぞれの特長について述べる。
倉地 庸夫,高橋 孝一
海外での設備投資の活発化により、製造品質・価格競争のグローバル化が加速されている。このため、低価格プラントの提供、生産効率の向上、省保守化、省力化が要求されている。これに対応するため、プログラマブルコントローラ、ヒューマンコミュニケーションインタフェース、駆動装置などのプラント構成電気品の高速化・機能拡大および新システム構成の構築を行った。本稿では、新駆動制御システムとプロセス主要制御技術の特長の概要を述べる。
小田 孝一,藤本 潔,西村 英二
紙・パルププラントおよび繊維・フィルムプラント用制御システムを構築するうえで、特に重要と思われるキーテクノロジーの現況を述べる。キーテクノロジーとしては、高調波、瞬時電圧降下に対する技術、交流電動機を巻取機に適用する場合のトルクリプルに関する技術、電子機器に対するノイズの影響を防止する技術などを取り上げた。また、保守の省力化のための保守支援システムやファン、ポンプなどの補機制御システム、さらには紡糸機用最新スキャナシステムについても併せて紹介した。
西郷 宏治,渡辺 悟,岩崎 哲之
最近の産業用電動力応用プラントは、コンピュータ、プログラマブルコントローラ、インテリジェント化された機器や各種診断装置が付加され、プラント全体が高機能化・複雑化している。プラントを最適に運転・監視するには、高度かつ複雑な対応が要求され、ヒューマンコミュニケーションインタフェース(HCI)が重要な役割を果たしている。本稿では、鉄鋼プラントに適用されているHCIと故障監視システム、操業支援システム方案モニタ、メンテナンス支援システムFORSシリーズの概要を述べる。
有年 隆男,大内 泰広
近年、ユーザーの求める機能・品質を最低の価格と最短の納期で提供するためのプラントエンジニアリングが強く求められている。本稿では、産業用電動力応用プラントのエンジニアリングを対象として、エンジニアリングの内容、低価格化のための工夫、およびプロジェクト管理の手法について概要を述べる。
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注
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