富士時報
第71巻第2号(1998年2月)

次世代パワーエレクトロニクスヘの期待

中岡 睦雄

パワーモジュールの現状と展望

桜井 建弥

半導体の研究開発動向を要約すると,低損失化,破壊フリー,システム化の三つになる。半導体は絶え間ない技術革新により,応用先であるシステム製品の性能・機能向上,小形化,低コスト化に大きく貢献する。その製品は,システム機能を盛り込むことでますます発展すると考える。本稿では,IGBTを主体にしたパワーモジュールの製品とその技術について述べる。

中・大容量RシリーズIGBT-IPM

山口 厚司,市川 裕章,征矢野 伸

RシリーズIPMの系列と新機能について解説する。RシリーズIPMは,6個組,7個組としては市場で初めて600 V/300 A,1,200 V/150 Aまで系列化され,大容量の要求にも十分対応可能である。内蔵機能としては,従来のIPMで採用されていた保護機能のほかに,素子温度を直接検出して保護する素子過熱保護機能があり,IPMの高信頼性を達成している。また,制御回路のIC集積化により,小形化,低コスト化を実現している。

小容量民生用IGBT-IPM

梶原 玉男,岩井田 武,小谷部和徳

家庭電化製品のインバータ化に対応し,富士電機では民生分野向け小容量IGBT-IPMを開発した。その特徴は次のとおりである。(1)専用ICの開発と最適化によるマルチチップ形IPMの実現。(2)IGBT接合温度を直接検出する過熱保護方式の適用による高信頼性の実現。(3)最先端の低損失第四世代IGBTチップの適用。(4)シャント抵抗検出方式の適用による高精度過電流保護機能を実現。(5)銅ベースレスDBC絶縁基板の適用による絶縁層間漏れ電流の低減化を実現。

小・中容量産業用NPT-IGBTモジュール

中島  修,宮下 秀仁,岩井田 武

インバータなどの電力変換分野では,市場要求である小形軽量化,高効率化,低騒音化を実現するために,低損失,高速スイッチングを特長とするパワーデバイスであるIGBTの適用が進んでいる。富士電機では,1,200 V/1,400 V素子にNPT-IGBTを適用し,高耐圧,高信頼性のモジュールを開発した。今回,NPT-IGBTを適用した小・中容量IGBTモジュールの開発を行ったので,その内容を紹介する。

大容量産業用・車両用NPT-IGBTモジュール

田久保 拡,石井 憲一,沖田 宗一

産業用や車両駆動装置などの大容量変換装置は,パワーデバイスの発展により飛躍的な性能向上が図られている。大容量パワーデバイスはGTOサイリスタが主流であったが,IGBTの高耐圧・大容量化技術の進展により,特にIGBTモジュールが大容量装置にも適用され,注目を集めている。本稿では,大容量変換装置の動向と富士電機の大容量パワーデバイスに対する取組みについて述べる。また,1,200,1,400V/600 A 1個組,1,800 V/600A 1個組チョッパタイプの新形大容量NPT-IGBTモジュールの概要と,その技術開発について紹介する。

大容量車両用・産業用平形IGBT

一條 正美,関  康和,西村 孝司

2,500Vの耐圧で1,800Aの電流容量を有する加圧接触形のIGBT(形式名:EMB1802RM-25)を開発し,東海旅客鉄道(株)700系新幹線先行試作車用主変換装置に搭載した。この素子は,先に開発した1,000Aの電流容量のEMB1001RM-25に比較して,一段と小形・高性能を追求したものになっている。富士電機は,この素子のコストパフォーマンスをさらに高いものとすべく改良開発を推進しており,今春には完成させる予定である。

パワーモジュール用チップ技術

百田 聖自,大西 泰彦,熊谷 直樹

チップの性能がパワーモジュールの特性を決定づけるほど,その重要性は高い。富士電機では,大容量化,電圧駆動性などの特長をもつIGBTの開発を行っているが,プレーナ形では限界まで性能を改善した第四世代チップの開発を行った。また,インテリジェント化のために,パワーインテリジェントモジュール用制御ICの開発にも成功した。本稿ではその特性を達成するためのチップ設計技術を,その過程であるシミュレーション解析やプロセス技術をも併せて概要を紹介する。

パワーモジュールパッケージ技術

両角  朗,丸山 力宏,山田 克己

地球環境保護に対する社会的関心が高まるにつれて,クリーンな電気エネルギーが改めて注目されてきており,より高性能な電力変換装置の必要性が求められている。これに伴い,キーデバイスであるパワーモジュールには,より一層の高機能・高性能・高信頼度が必要であり,特に信頼性は最も重要な基本性能である。本稿では,パワーモジュールにおけるパッケージ技術について,絶縁性能および熱的性能を支配するキーパーツであるセラミック基板を取り上げ,絶縁に対する高信頼化への取組みについて紹介する。

パワー半導体シミュレーション技術

武井  学,大月 正人

半導体シミュレーションはデバイスを試作せずにその特性を予測することが可能であり,パワーモジュールの開発期間短縮への貢献が期待されている。コンピュータ技術のめざましい進展およびシミュレーションソフトウェアの高度化により,シミュレータは高速化し,複雑な外部回路とパワーデバイスを組み合わせた計算が可能になった。本稿ではIPMの解析例を紹介する。

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