富士時報
第71巻第3号(1998年3月)

特集論文

AI制御についての随想

石島辰太郎

AI・アドバンスト制御の技術動向と富士電機の取組み

黒谷 憲一,伊藤  修

AI・アドバンスト制御技術がさまざまな分野で実用化されてきた。特に,エキスパートシステム,ファジィ制御,モデル予測制御,ロバスト制御などの適用が進み,産業界にも定着した。富士電機はこれらの技術の研究開発に継続的に取り組み,プロセス制御や電動力応用分野を中心に製品化を進め,多くのシステムを納入してきた。今後,より一層の自動化のための技術開発と,環境問題や人間中心のシステムへの展開が期待される。

情報・制御システム「MICREX」におけるアドバンスト制御機能

菅野 智司,西川  彰,齋藤 芳之

富士電機では,アドバンスト制御技術において,研究レベルも含めて継続的な取組みを行ってきた。アドバンストコントローラACS-3000にコンピューティングプロセッサを付加し,(1)モデル予測制御,(2)最適レギュレータ制御の演算実行機能を構築した。また,アドバンストオペレータステーションAOS-3000上に,これらの制御方式の監視・制御に必要なHCI機能を実現した。本稿ではこれらの機能と特長について紹介する。

ニューラルネットワーク応用のダム流入量予測システム

松井 哲郎,飯坂 達也,植木 芳照

水系の安全で効率的な運用のためには,正確なダム流入量の予測が必要である。しかし,タンクモデル,貯留関数法などの従来の予測手法では高精度予測は非常に困難であった。
本稿では,ニューラルネットワークとファジィ推論を適用したダム流入量予測システムについて述べる。本システムは,過去数時間の雨量,上流ダム放流量,自ダム流入量推移のデータを用いて短時間先の流入量を予測する。ニューラルネットワークとファジィ推論の適用により従来の約3倍の高精度予測が可能となった。

ニューラルネットワーク応用の雨水流入量予測システム

花田 真児,土屋 和広,竹内 正則

雨水ポンプ場のポンプ制御用に流入量ならびに水位を予測するシステムを開発した。予測は降雨量,水位などの計測値をもとにニューラルネットワークを用いて行う。システムは各種センサとオンライン予測コントローラならびにオフラインで予測の学習を行う学習用コンピュータから成る。実測データによる予測で目標とする予測性能が得られた。学習用のコンピュータには学習結果の確認やシミュレーションによる予測精度の比較などが図や数値を用いて容易に行えるようになっている。

ファジィ理論応用の電圧・無効電力制御システム

竹中 道夫,亀谷 勝久,大河内文隆

本システムでは,ルールやメンバシップ関数の調整を容易にするため,制御機器ごとの操作必要度判定処理に限定してファジィ推論を適用している。そこでは,系統全体の電圧や負荷の状況からその必要度を求めている。また,制御機器の操作回数の減少のため,電力用コンデンサの操作時刻や各機器の操作間隔を考慮して,機器間の協調を図っている。これにより,機器の操作制約や負荷変化のような系統状況に応じた柔軟な制御を実現している。

インテリジェント監視システム

宮本 章広,植草 秀明,後藤 賢治

プラント設備の保全業務は,設備機器を最良の状態に維持するために,人の五感による日常点険が依然として多く残されている。そのため,保守業務の効率化とともに,設備の維持管理においても「壊れる前に直す,防止する」という予防保全の重要性が認識されてきている。本稿では,プラント設備をより効率的に維持管理し,機器の保全に努めることを目的に,設備機器に関する異常予知の遠隔化の課題と解決方法および実用化システムについて紹介する。

凝集センサ・コントローラシステムを用いた浄水場の凝集制御

窪田 真和,秋山 浩秀,井上 公平

浄水場の凝集プロセスは,遅れ時間が大きくフィードバック制御による自動化が困難である。今まで凝集剤注入直後の微小フロックの平均粒径などを計測できるセンサを開発し,フロック粒径を制御することにより処理水質を良好に保てることを実験で明らかにしてきた。そして実際のプラントにこのシステムを適用し,原水水質と処理水量により,フロックの粒径設定値を変更する必要があることが分かった。この方法で,原水水質が急激に変動する場合にも処理水質を良好に保てることを実験で確認した。

燃料電池発電装置のモデル化と制御

小松  正,大山 敦智,鈴木  聡

燃料電池発電装置は都市ガスから電気を作る小さな化学プラントであり,効率的な機器構成と安定した運転を行うため,モデル化とシミュレーションを行っている。
本稿では,発電装置のプロセス系ごとに制御方式とその特徴を述べる。また,改質ガス系を例としてプロセス系のモデル化方法とシミュレーション結果について説明する。モデル化は発電装置を構成する機器を独立したブロックとして扱い,これをブロック線図の形で結合してプロセス単位のモデル化を実現している。

普通論文

生産支援システムの開発

玉田 秀一,伊藤 浩二,丸山  忠

近年の工場現場では,製品寿命短命化や変種変量生産に即応した生産活動が強く求められている。本稿では,コンピュータを用いた生産支援システムの開発事例を紹介する。対象工場は自動車のユニット(エンジン,トランスミッションなどの部品)の製造工場である。紹介システムのコンセプトは,複数工場の生産支援システムの標準化,パーソナルコンピュータによる低価格化である。オブジェクト指向手法によるアプローチによりシステム開発をしたが,この際に発生した技術的課題とその対策について報告する。

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