富士時報
第71巻第9号(1998年9月)
変電技術特集/配電自動化技術特集
石井 彰三
貞川 郁夫,金子 英男,松本 俊郎
変電技術分野は大別して変圧器,開閉設備などの変電機器と,これら設備の保護制御システムからなっている。変電機器は大容量化,縮小化,環境問題対応などの面で進歩・進展してきた。また,保護制御システムは,電力系統運用の高信頼度要求の下に,近年の電子技術を取り入れた高度保護制御,高信頼度化などにおいて技術進歩を遂げてきた。これら変電技術分野の技術動向と富士電機の具体的取組みについて述べる。
杉山 修一,藤田 雅彦,篠原 奝弘
富士電機はガス絶縁開閉装置(GIS)小形化のニーズにこたえて,小形・軽量な300kV GISを開発した。このGISは,相分離構造・アルミニウムタンクの採用などにより,従来の三相一括形GISに比べ,大幅に小形・軽量になっている。トレーラによる全装輸送が可能なため,工場試験時の品質がそのまま維持できる,現地作業期間が半減できるなどの特長がある。本稿ではこのGISの概要を紹介する。
富士 卓司,烏賊 照夫,中村 朗
ガス絶縁開閉装置(GIS)はコンパクト化,高信頼性,保守点検の省力化などの利点があり,国内外を問わずめざましい発展を遂げている。富士電機では,変電所全体の縮小化と経済性向上への強いニーズにこたえるべく,定格電圧72/84kVの新縮小形GISを開発した。これは,従来形GISに比べ据付け面積57%,容積42%,質量68%と大幅な小形・軽量化が実現されている。
大久保堅司,高坂 正明,池田 健二
変圧器は電力系統の効率・安定運用のための重要な機器として,まず価格を抑えつつ信頼性向上を図り,周囲環境に優しく,さらに省エネルギーによる地球環境保全にも対応する必要がある。このため,大容量油入変圧器では,鉄心・巻線の製作法,絶縁構成技術の合理化,負荷損中の渦電流損・漂遊損の低減,低騒音技術の高度化について,さらに防災・安全性に優れた都市形機器として,SF6ガス入変圧器と真空バルブ式負荷時タップ切換装置について,モデル実験や正確な三次数値解析に基づいて,開発を進めている。
山口 誠,横内 和彰,野口 延雄
近年,電力需要の増大に伴い,変圧器の高電圧・大容量化が進み,輸送寸法・質量は増大している。一方,輸送制限・輸送環境は年々厳しくなっている。特に,山間部の変電所,水力発電所,都市近郊部の変電所に変圧器を据え付ける場合,道路拡張・橋梁(きょうりょう)補強などの輸送対策を行うため,輸送費用の比率が高くなっている。この問題解決のために,一般低床トレーラで輸送,現地で再組立するFATRAS(Fuji Advanced Transformer Reassembled At Site)(分解輸送形変圧器)を開発・実用化したので,紹介する。
山川 寛,佐藤 弘俊,千原 勲
第二世代ディジタルリレーの特徴である,演算部の高性能化,アナログ入力部の高精度化を生かして,高信頼度化とシステム簡素化を図った変圧器保護継電装置を開発した。また,可搬形ヒューマンインタフェース(HI)の採用により保守・操作性の大幅な改善を図ることができた。本稿では,変圧器保護継電装置のシステム構成と装置仕様について開発成果を中心に概要を紹介する。
大橋 一弘,桑山 仁平,堀口 浩
配電自動化技術は従来の供給信頼度向上主体から,コスト面,環境面も視野に入れた運用の高度化や情報アメニティなどの機能を付加する方向へと変化している。これらを背景として富士電機が進めている広域配電サーバ構想による次世代配電自動化システムや情報の共有化,系統計画業務支援への展開ならびに自動検針の実用化動向やデマンドサイドマネジメント(DSM)などお客さま系自動化への取組みについて述べる。
江川 進,草間 悟,大井 洋
富士電機は関西電力(株)との共同研究において,設備投資の抑制と業務効率化を狙いとする,「配電線増強計画支援システム」を開発した。特にこの開発においては,モダンヒューリスティック手法の一つである遺伝的アルゴリズムを,日本で初めて配電系統の問題解決に実用化した「最適系統ガイダンスパッケージ」を開発した。本稿では,本パッケージの概要を中心に,本システムの概要を紹介する。
関澤 学,岡山 幸弘,金澤 康久
富士電機は東北電力(株)に対し,配電線監視制御システムを1992年から納入している。1996年度から営業所間を連係し,広域エリアに対して,開閉器の監視制御を行う,広域用クライアント・サーバ形配電線監視制御システムを納入した。本システムはサーバ側からクライアント側システムのバックアップ運転,広域停電事故時の復旧操作を可能にしている。本稿では,この広域用クライアント・サーバ形配電線監視制御システムの構成,連係方式,機能について紹介する。
橋浦 嘉昭,小林 芳邦,清水 康司
近年,電力会社では,検針・電圧電流計測などの自動化による業務の効率化,電力品質の維持管理などへの取組みがなされている。東北電力(株)と富士電機は共同研究メーカー3社とともに,お客さま個々の負荷状況(電力量,電力品質,機器状態など)を遠隔で自動管理(検針,監視・制御,計測)する「配電負荷監視制御システム」の開発を行い,フィールド試験を実施した。本稿では,開発したシステムのシステム概要とフィールド試験の実施内容について述べる。
川満 秀昭,吉田 勝児,佐藤 進
沖縄電力(株)と富士電機は,配電自動化システムの仕様,機能の見直しを進めてきたが,今回,開閉器の遠方操作を主たる機能とした遠方制御システムによる運用を開始した。本システムはUNIXワークステーションを中核としたオープン分散形の構成で,拡張性に富んだシステムを構築している。本稿では,バックアップ運転機能や,配電系統図の新しい表示方式,設備データメンテナンスの新しい方式など,本システムの特長的な機能を紹介している。
菊地 秀一,村田 和久,高橋 文男
富士電機は,東京電力(株)および九州電力(株)向けに大口需要家向け自動検針システムのセンタ側網制御装置,伝送端末,表示端末および複合計器を納入中である。本システムは,各種伝送路網およびそれら各網に対応した伝送端末を経由して大口需要家に設置される複合計器の計量指示値を読み取ることにより,一般的に電力会社の社員により行われている検針業務の省力化を図ることを目的としている。本稿では,本システムの概要,機能および富士電機の開発した機器の概要について紹介する。
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注
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