富士時報
第72巻第8号(1999年8月)
自動販売機特集
恩藏 直人
平野由美子,太田 篤幸,岩本 昌三
998年末の日本国内における自動販売機および自動サービス機の普及台数は,約550万台である。国民一人あたりの普及率でみると,自動販売機の先進国アメリカをはるかにしのぐ普及状態であり,今や自動販売機は,日常生活に欠かせない役割を果たすまでになっている。自動販売機に対する最近のニーズとしては,(1)防犯対策の強化,(2)地球環境問題への対応,(3)未成年者の酒類自動販売機利用への対応,など社会的要請・課題が増大している。本稿では,最近の自動販売機の商品化現況と将来展望について述べる。
脇 憲太郎,倉 馨
近年,飲料市場において急激な伸びを示している500mLペットボトルを缶自動販売機に展開したいという市場ニーズに対応するため,500mLペットボトル販売対応の缶自動販売機の開発を行った。本稿では,「500mLペットボトル対応サーペンタイン式ベンドラック」「500mLペットボトル対応ラックの本体への搭載」「商品取出口」について紹介する。
近藤 悟,前川 智律
近年,環境に配慮した製品の重要性が急速に高まってきた。富士電機では,自動販売機においても8年前から省エネルギー化に取り組み,缶自動販売機は業界No.1の省エネルギー化を達成している。99年機の開発ではさらに省エネルギー化を図るため,真空断熱材やDCモータなどの新機能部品や独自の制御方式を開発し搭載した。 本稿では最先端をいく缶自動販売機の省エネルギー技術の概要について紹介する。
木村 幸雄,冠野 恭範,長谷川陽子
製品の環境に対する影響を総合的に定量的に評価する手段としてのライフサイクルアセスメント(LCA)は,ISOおよびJISに制定され,環境影響評価ツールとして,今後最も注目される。本稿では,LCAの概要を述べ,実際に缶自動販売機の93年機と98年機,98年省エネルギー機について環境影響評価を行い,大幅な環境への改善を確認した。また,今後の展開方法について,生産工程のLCA評価や新製品への適用を行うことにより環境影響評価の改善を進めていく。
濱本 賢一,和田 雅之,竹林 正弘
最近のカップ自動販売機の市場ニーズとしては,集客力のある機械,オペレーション効率のよい機械などをあげることができる。これらのニーズに対応していくため,飲料のバリエーション拡大と味覚の向上,消費者の取扱いやすさの向上,衛生性の向上,オペレート作業の簡素化を可能にした新飲料調理システムの開発を行い,カップミキシング式自動販売機の新シリーズを完成させた。本稿では,新シリーズの特長であるカップミキシング式システムを主体に特長,仕様,構造についてその概要を紹介する。
冨永 博,西 正博,的場 一嘉
近年,飲料の種類や容器形状はますます多様化の傾向にあり,消費者からは,見た商品その物をショーケース感覚で安心して購入できる自動販売機が求められている。このようなニーズにこたえるべく,このたび,缶・瓶・紙パック・ペットボトル飲料などの多様な異形商品を,やさしく取出口まで搬送する動作をガラス越しに見せ,安心と楽しさを与える商品キャッチャシステムを搭載したシースルー自動販売機を開発した。本稿では,その主な特徴と構造および制御について紹介する。
宮尾 哲也,田村 嘉忠,柴田 義人
たばこ自動販売機の動向としては低価格化,広告機能の充実,サービス性の向上などが急速に進んでいる。富士電機ではこうしたニーズにこたえ,全面的に構造を見直した新しいたばこ自動販売機を開発した。心臓部であるベンドラックを新規に開発し,大幅な合理化と機能アップを達成した。デザイン面でも新たな発想を織り込み, 集客力の向上を図っている。本稿ではその概要について紹介する。
杉野 一彦,畠内 孝明
自動販売機による中身商品販売ビジネスは,その運営管理をいかに効率よくできるかが収益向上の重要な課題である。この課題を解決するために開発したのが,自動販売機情報収集システムである。 本稿では,自動販売機情報収集システムの種類と,今回開発した「SS(Spread Spectrum)無線」を応用した自動販売機情報収集システムについて紹介する。
川崎 治夫,槙田 幸雄,池田 文幸
インターネットなどの急激な普及およびビッグバンによる金融規制緩和が推進されたことにより,高度情報化社会に適した新しい決済手段としてEC(電子商取引)が構想され,各地で実証実験が行われている。富士電機では,これらに対応した自動販売機を開発している。本稿では電子マネーの概要と,自動販売機への対応方法の現状および今後の情報化社会に向けた取組みについて紹介する。
堂面 俊則,宮坂 和好,千國 量也
自動販売機の差別化戦略として,ポイントカードの導入を考え,ポイントカードリーダライタを開発した。ポイントカード導入の目的は,固定客の確保,ポイントに応じたサービスの提供により商品購入意欲を促進し,集客力の高い自動販売機を提供することである。カードのランニングコストを抑えるため,PETカードを使用し, 満点表示にパンチ穴方式を採用した。また,カードの発行も自動販売機で行う設計となっている。
大藪 博,西山 高志,飯嶋 茂
高齢者,障害者などが円滑に利用でき,健常者にとっても使い勝手のよいバリアフリー自動販売機の需要が見込まれる。ニューハーティシリーズにおける硬貨投入について,高齢者,障害者などにも円滑に利用できるユニットを開発した。主な特長は次のとおりである。(1)複数枚の硬貨を一括して投入できる。(2)投入口と釣銭返却口を一体構造で隣り合わせにし,分かりやすくした。(3)点字による表記を施した。
長崎 正,影山 利之,竹中 勝巳
近年,ファミリーレストラン,ファストフード店などの清涼飲料を販売する店では,飲料メニューの差別化により,売上げを伸ばす方向に進んできている。このような差別化のニーズに対応するため,今までにはない新しいタイプの清涼飲料である,無炭酸のフローズン飲料を販売する機械を国内で初めて開発した。本稿では,フローズン飲料ディスペンサの特長,仕様,構造について紹介する。
山下 智弘,小川 正,鴻巣 直広
生ビールの発泡メカニズムの解析を行い,注出バルブおよびビール注出方式の最適化を図り,注出時に発泡量の少ないビールディスペンサを開発した。主な特長は次のとおりである。
(1)ビールの流れを乱さない形状で,液と泡を分岐したバルブにより,発泡量の少ない安定した注出ができる。
(2)泡の後だれがジョッキに入らないジョッキ受台の駆動方式により,発泡量の少ない安定した注出ができる。
佐藤 俊博,西山 章雄
自動給茶機の市場ニーズとして,より衛生的で,お茶くみや原料投入,機内清掃,機械の保守・サービスなどの時間短縮が図れ,デザインの優れた製品が望まれている。これらのニーズに対応するため,従来の構成,機能部品の一新を図り,新コンセプトの瞬間冷却機構搭載自動給茶機の新シリーズを開発した。本稿では,新シリーズの特長である瞬間冷却式水槽と取扱い性の向上について概要を紹介する。
-
注
-
本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。