富士時報
第73巻第10号(2000年10月)
計測機器特集/オープン PIO特集
計測機器特集
計側制御技術における演繹と帰納
青島 伸治
計測機器の動向と展望
土屋 泰則,杉本 啓介
計測はあらゆる産業のサポート役として重要な役割を果たしているが,近年の設備投資の抑制などで生産高が減少している。しかしながら最近のIT やエコビジネス関連の設備投資の寄与で生産高は回復方向に進んでいる。今後の計測機器事業の方向は,(1)維持・延命化対応,(2)エコビジネス関連分野,(3)簡易計装分野などをめざしていく。これらの商品としてワイドレンジ発信器,超音波流量計,交流電力モニタ,高感度濁度計などを開発した。
新形差圧・圧力発信器「FCX‐A IIシリーズ」
中村 公弘,井上 芳範
FCX-A IIシリーズ発信器は,新開発のアドバンストフローティングセルや高性能マイクロプロセッサを搭載したエレクトロニクスユニットの採用により,高精度・多機能を実現した。レンジの異な る二つの差圧センサを組み込んだ新集積形センサを搭載したワイドレンジ差圧発信器は,1 台で幅広い流量計測範囲(中・低差圧)を高精度で測定可能にした。本稿では,FCX ‐ A IIシリーズ発信器について特長,構造,主な仕様,特性データなどについて紹介する。
新形超音波流量計「NEW TIME DELTA シリーズ」
山本 俊広,杉田 勉,福島 正人
1995 年にディジタル信号処理を応用した可搬形超音波流量計を発表した。また,1998 年には一測線の設置形を,1999 年には同時二測線式の設置形を発表した。さらに,2000 年初めに可搬形を多言語仕様へ改良した。これらは,共通のコア技術により設計されている。伝搬時間,伝搬時間差の検出のためトリガ法と相関法を,測定流体に含まれる気泡対策としてアドバンストABM 方式を,流体温度,圧力の変化による出力変動の補償法として新音速測定方式を採用している。これらのコア技術により超音波流量計の適用限界が拡大された。
クリプトスポリジウム暫定対策指針に対応した高感度濁度計(MK‐II)
佐々木明徳,菊池 智文,山口 太秀
近年,病原性原虫クリプトスポリジウムを原因とする集団下痢症が発生し,大きな関心を集めている。本稿では,厚生省の暫定指針とその対策に必要となる高感度濁度計の概要を紹介する。富士電機 は,微粒子カウント方式による高感度濁度計を開発し,0.1 mg/L以下の低濁度測定と微粒子個数濃度の両者の測定を実現した。本法の性能データ(再現性,直線性)とフィールド試験結果を紹介するとともに,膜処理設備への適用の可能性を提案した。
1回路形多機能交流電力モニタ
須藤哲四郎,入間野泰夫
交流電圧と交流電流を入力とし,AD 変換した後ディジタル演算により電力,積算電力,無効電力,積算無効電力,力率,周波数などを求め,その結果を定期的にデータ記録用のメモリカードに書き込む交流測定器を紹介する。省エネルギーのためのツールとして使用することを目的として開発した。単独で使用することも,通信回 線に接続してシステムの構成要素として使用することもできる。また,電流測定のために専用の分割型電流トランスが用意され,本器と組み合わせて測定システムを構成する。
オープンPIO 特集
オープン化対応PIOの概要
橋本 親,黒江 潤一,池戸 弘泰
情報,制御システムのオープン化の流れはコンピュータやネットワークから始まり,制御機器やフィールド機器に広がりつつある。富士電機と横河電機(株)が共同開発したオープン化対応プロセス入出力装置(オープンPIO )はオープンネットワークに対応した小型,高速,高信頼かつ耐環境性のある新時代のPIO である。これらの技術的な特長に加えて,インタフェース仕様の公開などの情報のオープン化を推進することにより,オープンPIO は従来の監視制御への適用だけでなく,今後の成長が期待される監視を主体とした新しい分野でもデファクトスタンダードとなり得るものである。
バックプレーンバス「SBバス」
田ノ下 勝,加藤 富雄
オープン化対応プロセス入出力装置(オープンPIO )では,バックプレーンバスに「SB バス(Serial Back‐Plane Bus )」を採用している。SB バスはプロセス入出力装置のバックプレーンバスの要求を満たすために開発されたバスで,高速,低コスト,省スペース,二重化対応可能などの特長を持っている。本稿では,このSB バスの概要を紹介する。
ネットワークプロトコル「EPAP」
小堀 隆哉,藤田 史彦,岩本正太郎
情報系ネットワークの代表格であったEthernet を制御LAN に適用する動きが始まっている。フィールドレベルにEthernet を適用するため,今回新たにコマンド/レスポンス方式をUDP 上に構築し即時性,高信頼性を実現した通信プロトコル「EPAP (Ethernet Precision Access Protocol )」を開発したので,その内容を紹介する。さらに,EPAP をオープン化対応プロセス入出力装置(オープンPIO )のバスインタフェースモジュールに実装した際の工夫点についても併せて紹介する。
オープンPIO の国際規格対応の構造技術
高橋 潔,伊藤 信吉,清水 孝也
プロセス計測と制御機器に適用されるプロセス入出力装置(PIO )の構造は,国内においては小型化と使用温度環境の拡大が重要視され,海外においては各種海外規格をクリアするためのプロテクション構造や防爆構造などを要求されている。また,国内外におけるPIO への共通の要求事項としては,超小型化,高性能化,耐環境性,低コストなど多くの課題があり,オープンなIO バス仕様のみならず,構造としても業界標準のPIO となる仕様を追求して開発した。
本稿では,オープン化対応PIO (オープンPIO )の構造技術と特徴について紹介する。
オープンPIO の適用方法と事例
中村 貴之,中野 正人,松平 竹央
多様化するシステムに対応するために,IO バスにEthernet を採用したオープン化対応プロセス入出力装置(オープンPIO )は,接続システムを限定しないオープンなインタフェースを持っており,DCS ,PLC などのコントローラやパソコン,UNIX コンピュータなどの汎用システムへの接続が期待される。オープンPIO が持つ高い通信パフォーマンスとシステムに適合する柔軟性を中心として,その容易な接続の仕組みを説明する。さらに,パソコンとオープンPIO で構築した監視制御システムを適用事例として紹介する。
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注
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