富士時報
第63巻第8号(1990年8月)

光技術の進歩と用途

羽鳥 光俊

光技術の現状と展望

仲村敬二郎,黒岩 重雄,黒田 一彦

わが国の光技術を展望するとともに、富士電機の光応用技術の現状を次の三つに分類して紹介する。
(1)光利用機能デバイスおよび周辺端末装置(光磁気ディスクメモリ、有機感光体など)
(2)光応用計測制御機器およびシステム(光ファイバ式フィールド計装システム、FA用光システム機器など)
(3)光エネルギー利用デバイス(パワーレーザ、アモルファスシリコン太陽電池など)

FA用光システム構成と光機器の適用

黒田 一彦,永田 義男,葉山 陽一

光は多くの長所を有しており、広い分野で光技術の導入が進められている。しかしFA分野においては、種々の理由により標準的な汎用光システムが採用されていない。
このたび標準的に使用可能な、光システム用の汎用機器を開発し、FA設備への光技術導入の容易化を図った。
本稿では、FAシステムの構成、光系統の構成あるいはFA設備における光利用のメリットについて、またFA用光機器の概要および光機器の適用例について述べる。

光技術の汎用機器への応用

佐野 安一,田中 秀幸

光技術を汎用FA機器に導入するために、光部品およびシステム構成の研究を行い、システムの基本設計を行った。プラスチック光ファイバのフリーカット接続が可能な構成とし、ループ伝送距離が60mである基本システムの光パワーレベルダイヤグラムを完成した。
また、汎用要素部品として、光スイッチユニットを開発した。特長は、低透過時損失、低遮光時リーク、短い切換ストローク、小形、フリーカット光ファイバ使用可能、組立が容易なこと、である。これらによって、汎用機器に光技術を適用した光システムを完成した。

FA用光システム機器

川崎紀久雄,石川 雅英,糸賀 一穂

FAシステムに光技術を導入することにより、耐ノイズ性、高絶縁性、安全性の向上などの多くの利点が期待される。富士電機では安価で取扱いの容易なプラスチックファイバを使用した光システム用FA機器を開発してきた。
本稿では、その構成、機能、使用方法について述べる。また、光信号を電気信号に、または電気信号を光信号に変換する機能を持ち、光化機器と電気機器とのインタフェースとなる単体形および集合形トランシーバについて紹介する。

FA用汎用光制御機器

久米 秀男,西尾 三男

FA制御システムに光技術を導入し、光システムを構成できる各種FA用光機器、なかでも汎用性の高い機器を優先的に開発した。すなわち、検出機器としての光リミットスイッチと光温度センサ、操作機器としての光コマンドスイッチ、表示機器としての点照光表示灯である。これらの開閉部には受発光ファイバを同一方向から接続でき、低い光減衰特性を有するレンズで構成した超小形光スイッチを採用している。その他、光ファイバコードリール、ファイバ中継用の光端子台、光コネクタも開発した。

FAバーコードリーダ

辻  伸彦,高崎 靖夫,平田 哲夫

バーコードシステムは、POSをはじめとして物流や生産現場での情報管理ツールとして、今や必須のものとなってきている。富士電機は、特にFAシステム用として、パーソナルコンピュータを使用せずにこのバーコードシステムを容易に構築できる新しい形のバーコードリーダPK2シリーズを平成元年に発売した。今回このPK2シリーズに、発光波長670nmの可視光半導体レーザダイオードを採用した可視光形センサ2種類を開発したので、その有用性を中心にPK2シリーズのライアンアップを紹介する。

光伝送技術

谷本 雅之,伊藤  徹

近年、システムの高度な情報化および柔軟なシステム構築を図るため、ネットワークがきわめて重要な手段となっている。
本稿では光LANの現状とMICREX-Fシリーズのネットワーク製品であるDPCS-F、F-Net(Pリンク、Tリンク)および国際互換性のあるオープンネットワークFAISセルネットワーク(Mini MAP)の光伝送技術について紹介する。

光ファイバ式フィールド計装システム

渡部 好三

光ファイバ式フィールド計装システムは、(1)フィールド機器のインテリジェント化、(2)フィールドバスの採用、(3)光ファイバ伝送、を三つの基本コンセプトとして開発された新世代のフィールド計装方式で、昭和60年に発売以来国内外の各種プラントに使用され高い評価を得ている。本稿では、新たにファミリーに加わった光リミットスイッチ、光圧力スイッチ、光切換弁の概要について紹介する。また、分散形制御システムとリンクしたMICREX/FFIシステムの概要について紹介する。

レーザ微粒子分析計

財津 靖史,平岡 睦久,杉本 啓介

半導体、電子材料、医薬、ファインケミカル、精密機械などの広い分野で、微粒子計測に関するさまざまなニーズが増大している。
富士電機では高度な光技術に基づき、液体用と固体表面用の微粒子分析計を製品化している。これらは、液体中や平滑な固体表面上の微粒子の数や粒度分布を簡単に精度良く測定することができる。本稿では、最新の4機種について概要を紹介する。

フーリエ変換赤外分光光度計(高感度表面分析装置への応用)

宇野 正裕,伊東 哲也,横澤 照久

赤外分光分析において表面分析の有力な手段である高感度反射吸収法を用い、装置の最適化を図ったフーリエ変換赤外分光光度計とその応用例を紹介する。
平行でエネルギー密度が大きい光学系、FINE SPEC-D(R)の採用により高いSN比を得るとともに、自動サンプルホルダを装備し、水蒸気などによる測定妨害を最小として、簡単に安定した測定が可能となっている。磁気ディスク媒体潤滑膜厚測定への応用では、本装置が優れた表面分析装置であることが示されている。

スキャナ式YAGレーザマーカ

折笠 親一,新妻 正行

レーザマーカは、非接触かつ高速で微細マーキングも鮮明に行えるので、従来の印刷、打刻、エッチングなどの方法に比べ多くの特長を有している。
本稿では、すでにいろいろな方面で実績をあげている富士電機のスキャナ式レーザマーカについて、概要、特長を述べるとともに、最近注目を集めているバーコードのマーキング、精密目盛のマーキング、プラスチック部品へのマーキングなどの応用例について述べる。

大出力スラブ形Nd:YAGレーザ発振器

葛西  彪,新藤 義彦,岩崎 慎司

大出力のスラブ形Nd:YAGレーザ発振器を開発した。Nd:YAGスラブの大きさは、厚さ5.6mm、幅18.4mm、長さ154mmであり、Nd3+濃度は、1.1at.%である。励起用光源には、クリプトンフラッシュランプを2本使用し、スラブの両表面から励起する構成で、共振器長は450mmと小形である。25kWの最大ランプ入力時の特性はレーザ出力600W、ビーム広がり角10×20mrad以下、安定度3%(p-p)以下である。また共振器内に円筒レンズを挿入することにより、さらにビーム広がり角を改善することができた。

光ディスク用高出力半導体レーザ

進藤 洋一,田辺 英三,北村 祥司

書換え可能の大容量メモリとして期待の大きい光ディスク装置の発展には、短波長、高出力の半導体レーザがキーデバイスとなる。富士電機ではこれに応じ、780nm、40mWの半導体レーザを開発している。特性要件は短波長、高出力のほかに、信頼性はもとより、光ビームの品質、雑音、偏光などがある。これらを満足する半導体レーザを実現したので、それらの特性、素子構成、製造プロセスを紹介する。

本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。