富士時報
第63巻第12号(1990年12月)

統合化制御システムの現状と展望

後藤 昌男,太田 徳二

総合化制御システムは、これまで別々に計画されていた電気(E)、計装(I)、コンピュータ(C)の三つの制御システムを統合化したもので、機能の重複やオペレーションの不統一などが整理され、エンジニアリング業務の統合・容易化を図ったコストパフォーマンスの高い制御システムである。富士電機はこれを「EIC統合化制御システム」と呼び、すでに数年にわたり各分野の顧客に納入している。本稿では富士電機の統合化制御システムについて、統合化のねらいと現状ならびに将来展望について述べる。

富士電機の統合化制御システム

吉田 昌弘,横山 常昭

世の中の製品ニーズの多様化に伴い、生産システムはフレキシブル化の動きを強めており、製品と生産手段の統括的管理が要請されている。これに対応して制御システムにおいても、CIM化への対応、統合化の推進が重要な課題となっている。
富士電機では、ここ数年来、統合化制御システムの実用化に向けて努力を続けているが、その成果をふまえ、本稿では、統合化制御システムに関し、その必要性、実現の考え方、最近の動向を概説する。

分散形制御システムMICREX-MSの構成

池田 卓史,井手健一郎

産業界における設備の自動化は、近年、大規模システムだけでなく中小規模システムにおいても進んでいる。分散形制御システムMICREX-MSは、中小規模プラントを対象としたEIC統合化制御システムである。
本稿では統合化制御システムの観点から、システム構成とその特長について紹介する。

分散形制御システムMICREX-MSの構成機器

椎原  豊,八反田正成,石橋 景二

プラント産業市場においては、大量生産追求のための設備投資から急激に変動する需要の多様化に対応して、変種変量生産が可能な生産システムへと変革が行われつつある。分散形制御システムMICREX-MSは、中小企業分野を対象とした拡張性、融合性に富んだミニEIC統合化制御システムである。
本稿では、MICREX-MSのシステム構成機器の特長、機能、仕様について紹介する。

統合化制御システムのネットワークシステム

大柴 正清,野中 正樹

総合化制御システムのネットワークシステムについて、特にソフトウェアを中心に富士電機の対応状況を述べる。最初に、統合化制御システムのネットワークシステムを取り巻く状況について述べるとともに、富士電機の対応を概説する。さらに、新たに商品化されたコンポーネントのFAパソコンのサポート状況を中心にして、MAPの状況からFAパソコンでのサポートソフトウェアのMMS/Mを説明する。また、スーパーミニコンピュータAシリーズとFAパソコンとのシステム間連携ソフトウェアの内容についても説明する。

統合化制御システムのソフトウェアエンジニアリングツール

田中 春樹,田中 裕平

制御システムを真に統合化されたものとするには、各種コントローラ、さらにはコンピュータなどのシステムコンポーネント群を、それらの言語表現、言語構造、言語機能などの違いを意識せず、統一的に支援できるソフトウェアエンジニアリングツールを実現することが一つのポイントである。本稿では上記目的を意識した支援ツールとして、CASEシステム、コンピュータ用支援ツール、コントローラ用統一支援ツールES50を紹介する。また、制御システム全体の統一支援ツールへの今後の展開も併せて紹介する。

鉄鋼分野の統合化制御システム

福本 武也,中内 博規,大屋 和博

鉄鋼分野の制御システムは自動化、省力化、省エネルギー化、高機能化が要求されるとともに、電気(E)、計装(I)、コンピュータ(C)を統合化したシステムが、その経済性と合理性によりかなりの設備で採用条件となってきた。本稿では、各設備の豊富な納入事例を交えて最近のEIC統合化制御システムについて、プロセスの特徴、システム構成および機能分担について説明する。
EIC統合化制御システムは、システム構成がシンプルで操作性、信頼性、保守性、拡張性に優れた経済的なシステムである。

一般産業分野の統合化制御システム

井手健一郎,伊藤  潤

富士電機では一般産業分野向けに、電気(E)、計装(I)、コンピュータ(C)の割合に応じてEIC、EC、IC、EI統合化制御システムとして、各制御システム分野の技術・文化を承継しつつ標準化し、実用に供している。
本稿ではEの割合が多い統合化制御システムとして、情報処理とパワーエレクトロニクスの融合システムを構成するコンピュータシステム、EI統合コントローラ、可変速駆動システム、各種メンテナンスシステムの概要、および自己完結形のEI統合中小規模システムにおける機能概要を紹介する。

水処理分野の統合化制御システム

守本 正範,塚本 弘和,古山 仁則

水処理分野における統合化制御システムは、そのメリットである操作性、監視性、保守性、拡張性の向上のみにとどまらず、ネットワーク機能を十分に生かしたものとなっている。システム計画のねらいと留意点について、分野別(上水道と下水道)、プラントの規模別(処理水量の大小)のそれぞれについて実施例をあげて紹介する。

化学工業分野の統合化制御システム

菅沼 利昭,近藤 英之

化学工業分野では、変種変量生産への対応、製品の高品質化、人手不足に対する省力化、自動化の要求が急速に高まっている。本稿では、プロセスオートメーションだけでなく、物流・搬送の自動化、生産管理システムまで含んだ統合化制御システムについて、最近の動向、分散形制御システムを中心としたシステムの基本的考え方、納入例について紹介する。

ごみ処理分野の統合化制御システム(IICS-1000)

佐々木雅敏,赤荻 達也

最近のごみ処理は、焼却という単一機能でなく、再利用、再生利用の面から、主機能の複合化が図れ、ごみ処理プラント(清掃工場)は生産工場として位置づけられつつある。これに従って、計測制御システムもEIC統合およびCIM構築へと向かっている。ここで、それらの理由と制御の特長を述べて富士電機の都市ごみ処理における統合化制御システムIICS(Incineration Instrumentation Control System)-1000の概要を紹介するとともに、今後の統合システムへの提言を行う。

セメント分野の統合化制御システム

青木 松裕

最近のセメント分野の制御システムは、ニーズの多種多様化に対応し、上位の販売、生産管理システムと有機的に結合したCIMシステムを構成することが要求される。
CIMの一部を構成するプロセス制御の分野においては、合理化生産性の向上が求められ、それらを可能にする統合化制御システムが必要となる。
本稿では、セメント分野の統合化制御システムの動向と、その概要について述べる。

火力発電所向け統合化ディジタル制御システム

鳥越 正道,真貝喜三男,石野 卓哉

火力発電設備におけるディジタル制御システムは、設備の規模や顧客ニーズにより多様な構成のものが存在する。事業用クラスの大規模システムでは、コンピュータを頂点とした階層分散化構成により、全自動化、全ディジタル化が図られている。一方、中小規模の火力発電設備においても、統合化、ディジタル化の要求に合わせた各種装置が実用化されている。本稿では、火力発電設備における統合化ディジタル制御システムの現状を述べる。また、自家発電用タービン発電機専用のディジタル制御装置TGR-500の概要を紹介する。

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