富士時報
第65巻第4号(1992年4月)

エントロピー増加時代とこれからのCIM

井越 昌紀

FA/CIM技術の現状と展望

栗原  隆

ユーザーニーズの多様化、人手不足、テンポの早い技術革新などに対応するため、経営戦略としてFA/CIMの導入が活発になってきている。FA/CIMは「生産統合」から「生産-販売統合」、「経営機能との統合」へと発展してきており、企業は現在の経営環境の変化に即応したCIMの構築を推進しているといえる。
本稿では、FA/CIMの動向を展望し、富士電機の展開について述べる。

CIM構築のためのシステム統合化技術

古谷  眞

CIMは、企業競争上の優位を確保するためにきわめて有効な統合化システムである。富士電機では、FA/CIMの構築にあたって、関連する業務と製造プロセスのあり方を徹底的に見直し、現場の作業方式や物流の改善と自動化の実現を図りながら、製造システムと業務システム及び情報システムを統合化してゆくシステムインテグレーション(SI)技術を体系化している。
本稿では、企業全体の仕事の仕組みを物、人、情報の側面から総合的にとらえて、CIMを企画し構築してゆく手法を紹介する。

CIMにおける分散処理システム「ミニCIM」

川田 正治,河田 哲生,水津 佳紀

コンピュータのダウンサイジング、オープン化とネットワーク技術の進展により、パーソナルコンピュータとワークステーションがコンピュータシステム形態を「集中処理」から「分散処理」へ大きく変えようとしている。CIM,トータルFAのシステム構築場面においても、FAパソコン、FAワークステーションの活用が成果を上げ始めており、分散処理システムのニーズは大きい。
本稿では、FAパソコン、FAワークステーションを中核とした分散処理システムの「ミニCIM」について紹介する。

プロセス分野におけるCIM構築技術

黒岩 重雄,渡辺 光宏

ロセス装置産業における自動化の発展は、コンピュータによる生産管理レベルとの連携を指向している。プロセス自動化は、DCSによる連続プロセスの自動化PAと、PCによるディスクリートプロセスの自動化FA,それを統合化するEIC統合化システムへと発展している。コンピュータの備えるべき機能としてはアドバンスト制御機能と生産管理機能である。
富士電機のMICREXシステムは、これらのプロセスCIM構築の中核の役割を果たしている。

CIMにおけるAI技術

河合 成治,黒江 潤一,菅井 賢三

CIMにおけるAI技術について、富士電機のこれまでの取組みとして、分野別AIツールの開発と実システムへの適用および新しいAIツールであるAIMAXの紹介を行う。また、AIMAXから知的生産管理システムの展開として、オブジェクト指向技術とOR技術との連係について述べる。さらに、これらの考えを適用した自動車産業における組立加工ラインの生産管理システムと、石油プラントにおけるオフサイト管理システムについて紹介する。 

CIMにおける物流技術

中村 雄有,河田 康晴

生産物流を中心に最近の物流技術を紹介する。生産物流は保管機能と製造工程間の搬送機能が重要であるが、物流機能とともに物流情報システムも重要である。システム構築の要点は次の3点である。
(1)倉庫搬送の自動化レベルをあげる。(2)物と情報を一致させる。(3)フレキシビリティの高いシステムとする。
また、システム構築にあたっての検討要件は、ハードウェアの最適な選択、管理制御機能の適正な機能分担、シンプルな制御、最少の情報入力化などである。 

CIMにおけるハンドリング技術

三井 行雄

機械加工工場では消費者ニーズの多様化により、フレキシブルな多品種少量生産ラインへと変わってきており、CIM化に向かって高度な自動化と情報制御が有機的に結合したシステムの要求が高まっている。富士電機では、自動車産業を主として高速性に優れたオートローダを核とした高機能搬送ハンドリングシステムを納入し好評を得ている。本稿では、最近のオートローダの技術動向とその適用例を紹介する。

CIMにおける入力機器

中村 雄有,小林 晴夫

本稿では、CIM構築に有能な2種類の入力機器を紹介する。
一つはデータキャリアシステムである。これは数百kバイトのデータが記憶でき、かつ繰返し書換えが可能で、汚れ、光ノイズに強いという特長をもっている。もう一つはピクセルコードシステムである。これは4mm角程度の小スペースに20けたの認識コードを入れることができ、小形プリント板組立ラインの管理などに適用できる。

CIMにおけるレーザマーカ・ビジョンシステム技術

小平 俊実,川村 浩徳

レーザマーカとビジョンシステムは、FA/CIMのコンポーネントとして、すでに広く各く産業分野で稼動している。
レーザマーカに関してはFA/CIMにおける装置の特長と応用例について、また、ビジョンシステムに関しては各機種、特長、応用分野、CIMの活用アイテムおよび適用例について紹介する。

CIMにおけるロボット技術

森  俊二,今野 一志,三塚 康史

ロボット技術は、FA/CIMにとって重要な技術である。本稿では、その応用例を紹介する。
組立工程でのロボット技術として、パレットで部品を供給してロボットで組み立てる方式と、そこで使われる3種類の部品供給装置について述べる。
ほかに、半導体製造工程に使われる8インチウェーハ湿式洗浄装置、航空機尾翼非破壊検査システム、さらに、架空配電線の工事を行う配電作業用マニピュレータについて述べる。

食品流通加工分野におけるCIMの事例

澤田 治彦

食品流通・加工センターは、加工と直結した流通部門を統合化して人手の排除とトータルコストの削減を図ったものである。加工作業・ピッキング作業の機械化、包装・梱包・配送仕分けの自動化、受発注処理との結合により、人、物、情報が密接に統合化するシステムを構築した。今回の例では、生鮮食品の原料加工、計量、包装、値付け作業の機械化を付加して、バイヤー部門の受注・発注業務のコンピュータ化、ディジタルピッキングを実現した。特に農産品・水産品の発注は、生産管理システムで実績のあるMRP手法を応用した。

薬品分野におけるCIM構築技術

稲垣 邦彦

薬品分野におけるFA化、CIM化がここ数年来盛んに行われるようになってきた。今回、製剤ライン向けのコンピュータシステムを開発・納入したのでシステム構築上の留意点について述べる。
薬品分野においては「GMP」または「バリデーション」など独自の知識が必要であり、また分散統合化システムを容易かつ安価に実現する「ファイルサーバ」システムについても紹介している。

組立加工分野におけるCIMの事例

河田 康晴

本稿では、機械装置組立工場の製造管理、物流システムの事例を紹介する。製造管理システムは基礎情報管理、生産計画、組立日程計画、所要量計算、進ちょく管理、作業編成システムの機能を有する。物流システムは自動立体倉庫、無人搬送システム、駆動式組立ラインから構成されている。このシステムの特長は次のとおりである。
(1)生産管理、製造管理、物流制御のハイアラーキシステム
(2)日割生産計画システムと号機単位進ちょく管理
(3)物流に即したレイアウトとフレキシブルな搬送システム

建材分野におけるCIMの事例

小林登喜夫,古屋  眞,稲垣 邦彦

受注情報と建設現場の施工図情報を工場のCAD/CAMシステムへ取り込み、製作図とNC加工データを自動作成する。さらにこのデータベースが、生産管理システムのデータベースと共通化されており、CAD/CAMシステムと生産管理システムを統合化したシステムである。このシステムは、営業部門、開発設計部門、本社管理部門とも全社共通データベースと全社ネットワークで結ばれて全社CIMへ展開できるようになっている。この結果、納期の短縮、在庫の圧縮、設計と管理部門の省人化を実現している。

電気器具分野におけるCIMの事例

里村 行祥,飯塚 清隆,大道 良伸

電気器具分野での企業競争が激化するなかで、顧客ニーズの多様化や短納期要求などにこたえるべく、各メーカーは、高機能の製品開発や高効率の生産体制(CIM化)をめざしている。
本稿では、富士電機の電気器具分野の主力工場である吹上工場と大田原工場において、製品開発とCIM開発を同時進行させ、多くの成果を上げた「電磁開閉器のCIM工場」と「ツインブレーカのCIM工場」について、CIM構築のプロセス、CIM工場の概要、生産情報システムの概要などを紹介する。

自動販売機製造分野におけるCAD/CAMの事例

後藤 俊彦

自動販売機は食品を扱う関係で、性能面とともにデザイン面が重視されている。このような自動販売機における高付加価値品の開発から製造に至る広範囲な業務の効率向上をめざし、源流部門である設計情報の共有化と一元管理により、高性能、高品質、低価格、短納期を達成しつつあるCAD/CAMシステムを紹介する。

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