富士時報
第65巻第5号(1992年5月)

コンピュータ応用システム特集

「人にやさしい」システムづくり

山本  勝

産業用コンピュータとその応用分野の現状と動向

竹内  実,石井 信義,横山 常昭

産業用コンピュータが実用化されてから約四半世紀になるが、その重要性はますます高まり、その応用分野も産業の広範な分野に及んでいる。富士電機では1960年代の半ばから、この分野に取り組み、多数のシステムを納入してきた。今回、各分野の最近の応用事例を特集するに当り、産業用コンピュータシステムの動向(分散化、オープン化、ソフトウェア生産性など)と応用分野(電力、公共、鉄鋼、FA,PAなど)の現状と今後の動きについて、その大要を述べる。

四国電力(株)系統制御所計算機システム

野村 雅博,今井 富雄,加藤 康治

系統制御所の運用において、大規模あるいは複雑な事故に対して運用者に求められる知識・技術は広範かつ複雑・高度であり、短時間に正確な判断が要求される。自己が発生してから復旧するまでの一連の対応について運用者に分かりやすい形で情報提供するとともに、AIなどを用いて操作を広範囲に自動化した。さらに、系統事故発生時の復旧方法を習得するための高度な訓練装置を併せ持った系統制御所計算機システムを開発し、運用に供した。

中部電力(株)大規模給電制御所システム

織田 昌彦,藤岡 勝徳,田中 憲三

中部電力(株)岡崎支店の豊橋制御所と岡崎給電制御所に平成2年及び平成3年に納入した大規模な発変電所の集中監視制御システムについて紹介する。分散形システム構成を採用し、高性能・高信頼性を実現するとともに、高機能フルグラフィックCRTにより充実したマンマシンインタフェーイスになっている。操作票の自動作成などの高度な機能も備え、両制御所システムで118か所の制御対象電気所を管轄して運転を開始した。

関西電力(株)負荷制御システム

中本 康幸,篠田 猛雄,鈴木 貴芳

関西電力(株)の負荷制御所システムではコンピュータ制御技術を監視制御業務のほか、日常の業務に取り入れつつ発展してきた。今回、和歌山支店に和歌山制御所システム(運用開始:平成42年3月)を、大阪南支店に佐野制御所システム(運用開始予定:平成4年7月)を納入した。
本システムは従来のサイクリック形テレコンに代わり、HDLC伝送方式の新形テレコンを全面的に採用したものである。本稿ではシステム構成、機能についての概要を紹介する。

分散形配電自動化システム

松本  強,大橋 一弘,井上 章夫

国民生活が豊かになり電力依存度が高まるにつれて、電力の高品質化、供給信頼度の向上、豊富なメニューの設定など、電気事業に対して多様な需要家ニーズの発生ならびにサービスの充実が社会的要請として高まってきている。
電力会社ではこうした社会的要請にこたえるため、配電分野の自動化、特に開閉器の遠隔制御システムに取り組んできている。
本稿では、開閉器制御システムの動向を、最近のコンピュータシステムの動向と合わせて述べる。

浄水場制御へのAIの適用

蓮本 了遠,福田  尚,稲垣 聖一

上水道施設の運用において、施設機器の故障診断やプロセス異常時の原因究明などの維持管理分野、あるいはプロセス制御分野においても数学モデルが作成できないとか、複雑すぎて使用できない分野などがある。これらの分野における諸問題を解決することが、上水道施設をより一層合理的に運用するための今後の大きな課題であると考えられている。本稿では、これらの問題を解決するために知識工学を応用したシステム事例を紹介する。

上水道の施設情報管理システム

土屋 泰則,大崎  明,渡辺 光範

水道分野では高普及時代に伴って管路施設の高度な維持管理が必要となっており、地図処理応用システムのニーズは高い。
本稿では、水道事業体への導入が容易で、低コストな地図処理応用システムとして富士電機が開発した施設情報管理システム(FMAPFILE)のシステム構成、機能、導入事例について紹介する。

川崎製鉄(株)千葉製鉄所高炉操業管理システム

牧 勇之輔,吉川  肇,房州  亨

川崎製鉄(株)千葉製鉄所第5高炉の第四次改修に際し、プロセスコンピュータシステムを納入した。本稿では、高炉操業管理システムの概要と本システムの特長を述べる。
本システムはコンピュータにA-80、マンマシンインタフェースにFAパソコンを採用し、おのおのを汎用LANに接続させ、下位からのデータ伝送もすべてLAN経由で行っている。
システム開発に際しYPS,OASYS,Lotusを使用し、徹底的に機械化の適用を図っている。

メキシコ・シカルツァ社向け鉄鋼生産管理システム

松田 誠一,相馬  寛,吉武 義樹

鉄鋼業においては、大幅な省エネルギー、要員の合理化、短納期、多品種少量生産、高品質化などが要請されている。この要請に対応するため、製鉄プロセスと生産管理システムにおいては、工程間の仕掛りを極少化する直行形生産体制の確立と品質の作り込み能力の向上、それに高度な製鉄作業の自動化を実現する必要がある。本稿では、メキシコ・シカルツァ社に納入した生産管理システムのシステム構成、主要機能、システムの特徴を紹介する。

セメント分野におけるアドバンスト制御システム

伊藤 正満,杉浦 正志

セメント分野におけるプロセスコンピュータ制御は計装のDCS化に伴い、より高度な制御に対するニーズが高まっている。特に、従来の自己回帰モデルによる自動制御が困難な領域に対する人工知能(AI)の適用や、他の制御設備との結合によるCIMの構築要求が顕著である。これらの要求にこたえるため、AI,現代制御理論などのアドバンスト制御とプラントモデルを同定・精度の向上を図る統計解析ツールとを標準装備したシステムを紹介する。

小形オフィスコンピュータによる生産管理システム

古屋  眞,持田 晋一

減速経済下における設備投資は、少ない投資で最大効果が得られるようにしなければならない。また、その投資も将来に対して育成できるものでなければならない。この要求を満たすため標題のシステムを開発した。なお、このシステムは製造システムと密着し、システム内で自己育成の仕組みを持ち、機能がシンプルなため、顧客の要望を満たすことができると考える。

画像管理システムEFPACS

小林 京三,武笠  稔,中谷 充良

富士画像管理システムEFPACS(イーエフパックス:Effective Fuji PACS)は医療分野で多量に発生する画像情報を効率的に管理し、総合的な画像診断をサポートするシステムである。また、システム規模によりEFPACS-100、EFPACS-500、EFPACS-1000とシリーズ化およびコンポーネント化されており、順次導入が可能である。本稿では本システムの特長、機能および最近の適用事例について医療分野以外の事例も含めて紹介する。

ソフトウェア支援パッケージ

岡  楯彦,片桐 高自,井上 雅夫

近年のダウンサイジング化の傾向により、ハードウェアは安価で高性能になってきている。その結果、コンピュータシステムでのソフトウェアの開発効率向上が重要な課題になっている。この課題へのアプローチは種々あるが、その中の一つに支援パッケージの整備があり応用プログラム開発量の低減、品質の安定化が図られてきている。
本稿では、この支援パッケージに関する取組み、考え方について述べるとともに、そのうちの産業分野向けデータベースパッケージ、およびミニコンピュータと連携するパーソナルコンピュータパッケージを紹介する。

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