富士時報
第66巻第2号(1993年2月)

特集論文

配電自動化分野の現状と展望

谷川 雅郎,石沢 輝明,松本  強

配電線自動化システムの適用は、大規模営業所から次第に中規模営業所に拡大されつつある。それに伴い、機能別分散形システムが主流となってきている。配電線自動化システムの普及とともに情報ネットワークも整備されつつある。すなわち、電子式電力量計の出現により、需要家系自動化システムの分野では、自動検針システムを中心に研究から実用化をめざした開発が進められている。こうした配電自動化分野の現状と展望について述べる。

東京電力(株)配電自動化コンピュータシステム

清水 祐一,佐藤  進,守田 郁子

東京電力(株)配電自動化に対する富士電機の取組みは昭和57年度に始まり、平成3年度の本格適用開始以降、千葉、沼田、浦和をはじめとする計10営業所〔東光電気(株)への供給分を含む〕にシステムを納入している。
本稿では東京電力(株)の本格適用システムの一つとして開発したII型システムの概要を中心に紹介し、あわせて東京電力(株)自社開発グループへの技術支援、および基本システムの概要と東光電気(株)への技術移管について紹介する。

関西電力(株)配電線自動運用システム

江川  進,桑山 仁平,草間  悟

関西電力(株)と富士電機は、共同研究体制で停電時間の短縮、系統運用業務の効率化をめざした配電線自動運用システムの実用化に取り組み、平成5年度中に全営業所への導入を完了する。
本システムは地図情報対応の系統図表示機能や図面主導方式のデータメンテナンス機能をもち、高い操作性を実現するほか、AI融通計算を採用し、運転員の運用ノウハウの取りこみを図っている。さらに、最新の光センサ技術に対応したモニタリングシステムや他システム連係による情報提供システムなどの機能拡張を行っている。

東北電力(株)配電線監視制御システム

工藤 英明,伊藤 正也,金沢 康久

富士電機は、東北電力(株)郡山営業所向けに配電線監視制御システムを開発し、平成4年3月から運用を開始した。
本稿では、本システムの特長である分散形システムの構築、系統図自動作画機能を中心に、事故復旧操作、作業停電操作、データメンテナンスなど、システムの機能について紹介する。

中国電力(株)大規模事業所用配電自動化システム

山中 康司,藤原 保夫,堀口  浩

中国電力(株)と富士電機は、事故時の早期復旧によるお客さまサービスの向上および配電系統運用管理の効率化などをめざし、大規模事業所へ適用される配電自動化システムの開発を行った。
本システムは、UNIXワークステーションを複数台使用し、これらをLANで結合したオープン分散形構成としており、コンパクトで拡張性に富んだ信頼性の高いシステムを構築している。

東京電力(株)自動検針システム

神野 誠雄,三反畑 博,清水 康司

東京電力(株)と富士電機を含む共同研究7社は、平成2年度から東京電力(株)神奈川支店平塚営業所、多摩支店青梅営業所ならびに東京西支店豊島支社の3フィールドで総計約6,000軒規模の自動検針システム実証試験を開始した。本システムは、オートロックマンションや山間部など検針困難地域の解消を狙いとし、伝送路としては電話回線、低圧配電線ならびに配電自動化システムで使用している高圧配電線を共用するなど既設の線路を有効利用している。今後、実用化システムとして広く使用されることが期待される。

九州電力(株)自動検針機能付電力量計

林  武博,村田 和久

自動検針は通信ラインを介して、需要家の使用電力量のデータを自動的に収集するものであり、山間辺地に対する検針業務能率の向上要求、オートロックマンションなどの検針困難箇所の解消のため、早期実用化が望まれている。この自動検針に使用する1時間帯・2時間帯兼用電子式電力量計を、九州電力(株)と共同研究により開発した。
本稿では、電力量計が法定計量器であることから、規格を含め設計思想、機能、通信仕様、性能の概要を紹介する。

(財)電力中央研究所負荷集中制御システム確立実証試験(フェーズII)

吉光  司,石澤 輝明,小林 芳邦

新エネルギー・産業技術総合開発機構は、21世紀をめざした電力の負荷平準化対策、省エネルギー対策として「負荷集中制御システム確立実証試験」を実施している。同研究は、フェーズI、フェーズIIの二つのプロジェクトで実行されているが、このたびフェーズIIを受託した(財)電力中央研究所は、赤城試験センターにおいて「実証試験システム」を運転開始した。富士電機は、フェーズIに引き続き本システムも製作を担当している。以下にシステムの概要と需要家側機器を紹介する。

400V配電用GTO限流遮断装置

元治  崇,金田元四郎,磯崎  優

電力需要の増加と高度な供給信頼性の要求に対し、配電の自動化に対応した「高機能レギュラーネットワーク配電方式」の検討を行っている。この新しい配電方式では、システムの自動化、事故点の自動切離し・復旧などを行うため、配電系統の構成機器のうち、開閉器などは遠方制御が可能なものとすることが必要となる。このような背景から、従来から適用されていた限流ヒューズに代わる400V配電用GTO限流遮断装置を開発した。本稿では今回開発した限流遮断装置について、その概要を述べる。

普通論文

新設の2,000MVA短絡試験研究設備

志賀  悟,山田  守,田中 一郎

富士電機は平成4年7月千葉工場内に定格電圧17kV、短絡容量2,000MVAの大容量短絡試験設備を設置した。設備設計の基本的な考え方は次のとおりである。
(1) 短絡電流63kAとし、国内最大の遮断容量への対処
(2) 騒音、振動特性の環境への配慮
(3)自動運転システムの採用による省電力、省力化
(4)予知保全システムの採用による省力化

新設の2,000MVA短絡発電機

森安 正司,佐藤 昭二

(株)富士電機総合研究所向けとして短絡容量2,000MVAの短絡発電機を製作し、広範な試験により性能を確認した後、平成4年7月から営業運転を開始した。
本機は二極横軸円筒界磁形構造であり、短絡電流の仕様(50kA、Y結線/63kA、△結線)を満たすためにリアクタンスと短絡電流の減衰を低減させ、また短絡時の電磁力とトルクに耐えるようにしたものである。この短絡発電機は、富士電機の最新の技術を駆使して完成したものである。

新設の2,000MVA短絡発電機設備監視・制御システム

河田 智近,金高 康彦,佐藤  浩

新設された短絡発電機設備の監視・制御システム、および試験回路などの状態監視システムを自動化することにより、運転業務を大幅に簡素化し、保守を容易にした。
本稿では、自動化された短絡発電機設備の保護・監視・制御システムについて紹介する。

本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。