富士時報
第69巻第10号(1996年10月)

アドバンスト情報・制御システム特集

アドバンスト情報・制御システム特集に寄せて

アリフ ガフー

情報・制御システムの現状と展望

井部 成身,中島 千尋

情報・制御システムは、マーケットニーズの変化によりオープン、ダウンサイジング、ダウンコスティングをキーワードに大きく変ぼうしている。富士電機はコンピュータ、コントローラ、フィールド機器間を統一した考え方でインタフェースし、ユーザー要求に柔軟に対応できるスケーラビリティとフレキシビリティを持った「アドバンスト情報・制御システム」を開発した。本稿では、情報・制御システムと構成装置であるHCI、LAN、コントローラならびにエンジニアリングの動向と富士電機の取組みを紹介する。

アドバンスト情報・制御システム「MICREX-AX」

吉田  徹,橋本  親,中島 千尋

MICREX-AXは、既存システムであるMICREX-IXの資産とプラント制御のノウハウを継承しつつ、情報システムを融合した新しいアーキテクチャに基づくシステムである。本システムはオープン、フレキシブル、アドバンストを基本コンセプトとし、高度化・個性化・多様化するシステムの要求に柔軟にこたえることを狙いとした。本稿ではシステムの開発思想、システム構成および機能の概要を紹介する。

アドバンストコントローラ「ACS-3000」

西川  彰,川口 公二,田口 信夫

ACS-3000は、従来のアーキテクチャを継承したうえで、(1)コンピューティングプロセッサの実装によるマルチプロセッシングの実現、(2)FDDIオープンLANによる高速コンピュータ結合の実現、(3)データ名、工業値によるコントローラデータ管理機構の実現、(4)これらを支援するエンジニアリングシステムの提供、を特長とし、最適なシステム構築のためのエンジニアリングコストの最小化を実現した次世代アドバンストコントローラである。本稿ではACS-3000の効率的エンジニアリングを実現するアーキテクチャとその基礎技術について紹介する。

マルチメディア対応アドバンストオペレータステーション「AOS-3000」

井川 喜裕,古賀由紀夫,大柴 正清

監視制御システムのアドバンストオペレータステーションのヒューマンインタフェースとして、情景判断形のマルチメディアヒューマンインタフェース「シーンベースドインタフェース」を開発した。「シーンベースドインタフェース」では、映像・音声・プロセスデータなどのマルチメディアデータを統合・活用することが可能であり、オペレータの作業負荷の軽減や、より的確な監視制御作業が期待できる。本稿では、アドバンストオペレータステーションの機能概要と、「シーンベースドインタフェース」の機能・方式・特長について紹介する。

アドバンスト情報・制御統合LAN「ANS-3000」

藤川 昌男,藤田 史彦,瀧下 秀明

制御システムの世界では、情報通信の大容量化・高速化が一層進みつつある。また、コストパフォーマンスに優れた多様な機器と接続できるようなオープン化された通信が不可欠となってきている。富士電機では、従来のLANを統合し、さらに上記のような次世代の要請を満足させる100Mビット/秒の情報と制御を統合した先進的高速光LANとしてANS-3000を開発した。本稿では、ANS-3000の開発コンセプトとその特長について紹介する。

光フィールドバスシステム

池田 卓史,神崎  昇,辻  伸彦

光フィールドバスシステムは、物理層規格にIECの光媒体規格(1995年11月に国際規格化)であるIEC1158-2 Clause15~18を採用し、データリンク層より上位層は電気式フィールドバスと同じフィールドバス協会仕様を採用したフィールドバスである。光フィールドバスは、電気式フィールドバスの持つ特長に加え、耐ノイズ性、防爆、自己完結性に優れている。また、電気式フィールドバスとの整合性を取るために、電源供給不要の反射形スターカプラなどの要素技術の開発を推進している。本稿ではその特長とシステム構成機器を紹介する。

統合エンジニアリング支援システム

引地 正則,齋藤 芳之

制御システムの高機能化・複雑化に伴い、エンジニアリングの内容も急速に大規模化・複雑化してきており、エンジニアリング支援環境の重要性が高まっている。エンジニアリング業務の効率化に関しては、これまでにも多くの試みがなされており、一定の成果を上げてきたが、さらなる効率化と成果物の品質向上が求められている。本稿では、エンジニアリング支援環境の現状と課題を概観し、富士電機の統合エンジニアリング支援システムおよびその将来展望について述べる。

AI・アドバンスト制御技術

黒谷 憲一,萩原 賢一

AI・アドバンスト制御技術はプロセスの効率的で安定な運転ならびに自動化に不可欠な技術である。富士電機はこれらの技術に継続的に取り組み、多くの応用システムを納入してきた。これらの技術はソフトウェアパッケージ化したうえで、アプリケーションシステムに提供される。新しく開発したソフトウェアパッケージ、「インテリジェントアラームシステム」、「ニューロコントロールシステム」、「一般化予測制御パッケージ」について、その概要、機能、特長を紹介する。

オープン統合化制御システム「FOCUS」

吉田  裕,斎藤 直樹,吉田 正俊

ライトサイジング、ライトセレクションのコンセプトに基づいて開発された「FOCUS」は、オペレータステーションにパーソナルコンピュータ(パソコン)を使用した小規模向け分散形制御システムである。各種のソフトウェア、パソコン周辺ハードウェアを組み合わせた最適なシステムを構築する。MMIソフトウェアパッケージによりグラフィカルな画面を容易に作成できる。MICREX-IXシリーズと共通のコントローラを使用し、高度な制御機能を生かすことができる。オペレータステーションとコントローラはEthernetで接続する。

アドバンスト情報・制御システムの上下水道分野への適用

小林 一智,泉田 明男,竹内 正則

現代生活を支えるライフラインとして、上下水道が受け持つ使命は大きい。このため、上下水道の処理施設は、より高度な維持管理が求められている。富士電機では、このような背景のもと、安全で正確な運転管理をするための運転管理情報と、高い水準の保守管理をするための保守管理情報を統合したアドバンスト情報・制御システムを提供している。これらのシステム構成、分散された機能、システムを構成するおのおののコンポーネントについて、その概要を紹介する。

下水道管きょ内光ファイバネットワークの行政基板への適用

高見澤真司,生駒 雅一,高橋 康夫

近年の下水道事業においては、その普及率の向上に伴い下水処理から派生する「下水処理水・下水汚泥・下水熱の利用、管理用光ファイバの整備・活用」などの新たな施策が求められている。特に、下水道管きょ内光ファイバネットワークは、高度情報化社会を迎え、広く通信基盤への適用が期待されており、このための下水道法、電気通信事業法の改正など、法的環境整備も進められている。本稿では、利用が進む下水道管きょ内光ファイバネットワークの行政基盤への適用について述べる。

本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。