富士時報
第70巻第9号(1997年9月)

特集論文

同期発電機雑感

仁田 旦三

解析による大形回転機の技術進歩

遠藤 研二

大形回転機の技術進歩のなかで、コンピュータによる数値解析の占める比重が大きいことに鑑(かんが)み、電磁界解析、電力系統解析、流れ解析の最近の適用例を示した。すなわち、電磁界解析では交流可変速同期機電機子溝部での電磁加振力分布、電力系統解析では新しい原理による高調波吸収同期機、流れ解析ではリム通風気コイルエンド部冷却風圧力分布である。  

2極空気冷却タービン発電機の新系列機の開発

佐藤 昭二,溝上 良一,山崎  勝

現在、富士電機では、大幅に体格を縮小した300MVAまでの空気冷却タービン発電機の新系列機を開発中であり、性能検証の目的で120MVAの試作実験機の製作を計画している。開発にあたり試作実験を繰り返して行うことのできない大形機の場合、開発方針の適否を短期間に判断するには、シミュレーションが有力である。本稿では、試作実験機の概要とともに、開発にあたって実施した電磁界解析、通風冷却解析、振動解析、強度解析の概要と成果について述べる。

大形水素冷却タービン発電機の技術進歩

長谷  徹,日和佐寛道

富士電機では、さまざまな技術進歩によって、現在では水素直接冷却形タービン発電機を1,000MVAまでの出力範囲について適用することができる。本稿では、解析技術、材料および製造技術の発展によってもたらされたタービン発電機の技術進歩について、単機容量で富士電機最大実績の706MVA発電機に適用された技術を中心に述べる。 

大形バルブ水車・発電機の冷却技術

大谷 和雄,衛藤 浩史,小林 秀樹

近年、水力発電所においても保守の省力化を目的とした技術の採用が進められている。本稿では、大容量出力バルブ水車発電設備の関西電力(株)美濃川発電所、中国・バイロンタン発電所およびパキスタン・チャスマ発電所を例に、メンテナンスフリー化に対応した最近の冷却技術について述べる。 

低速大容量ディーゼル発電機の技術解析

久保 良秀,清野 純一,島田 陽二

近年、燃料費や保守上のメリットから低速大容量ディーゼル発電機が注目されている。本稿では、この低速大容量ディーゼル発電機の特徴について述べるとともに、このたび受注したバハマ向けのディーゼル発電機を製作するにあたり実施した構造解析・系統解析について紹介する。

大形誘導電動機の技術進歩

小栗 一也,西  律夫,

最近の誘導電動機の特長としては、コスト、現地での電源事情、環境問題などから、(1)大容量化、(2)低始動電流化、(3)低騒音化が挙げられる。富士電機では低始動電流および低騒音に対して厳しい要求を受けた大容量かご形誘導電動機をこのたび製作した。特性試験の結果、各電動機ともに需要家の要求値を満足させることができた。本稿では、各電動機に採用した低始動電流化および低騒音化についての具体的な設計対応技術の一部を述べる。

大形回転機用軸受の技術進歩

氏家 隆一

軸受は回転機器にとって生命線ともいうべき機械要素であり、その信頼性が問われ続けることはいうまでもないが、一方では性能・保守性に関する改善要求も多い。本稿ではこれらの要求にこたえるべく実施した最近の開発成果例として、主に立軸水車発電機に使用される「PTFEスラスト軸受およびその適用計画」、横軸水車発電機用ジャーナル軸受に関する「空冷範囲の大幅拡大」、タービン発電機用ジャーナル軸受の「低損失化」について開発経過および成果の概要を述べる。

大形回転機の全含浸絶縁技術の進歩

竹田 政寛,中山 昭伸,村岡 政義

富士電機は、全含浸絶縁方式を拡充し、大形機である空気冷却タービン発電機(260MVA)および水素間接冷却タービン発電機(340MVA)の新系列開発時に適用した。本稿では、全含浸絶縁方式の特長、大形機への適用技術について、特性データを基に述べる。

普通論文

中国・バイロンタン発電所向け大容量バルブ水車・発電機

高橋 正宏,吉井  清,川路 忠治

富士電機は中国・バイロンタン発電所向けに33MWバルブ水車・発電機6台を受注し、すでに3台を納入し営業運転を開始している。残りの3台も富士電機の設計・製作指導により中国で製作中である。この発電所向け水車・発電機は、富士電機の製作実績のなかでも上位に入る大形・大容量機である。本稿では、この発電所に納入したバルブ水車発電設備に導入した新技術について述べる。  

新形72/84kV C-GISの開発

高橋 義博

工場、ビル関連分野の環境調和形機器受変電設備として、ガス入変圧器と同様にC-GISの適用が急速に伸びているが、「営利面積の最大限確保のための電気設備スペースの縮小化」および保守点検の効率向上策としての「フロントアクセス化」のニーズが高まってきている。今回、このような需要家のニーズに対処するため、新形84kV C-GISを開発したので定格仕様、特長などについて述べる。

タンク形避雷器の新シリーズの開発

堤  睦生,向江 和郎,中島 昌俊

近年、絶縁設計の合理化と機器の縮小化要求に対応して、保護レベルを低減した高性能避雷器が187kV以上の有効接地系用として適用開始され、高性能避雷器の規格も制定された。富士電機ではZnO結晶を微細化して単位長あたりの動作開始電圧を増加した高性能酸化亜鉛素子を開発し、この素子を適用した66~275kV系統用のタンク形避雷器をシリーズ化した。ZnO素子の特徴と改良点、新シリーズ避雷器の仕様・構造および実用性能試験を含む検証試験について述べる。 

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