富士時報
第71巻第8号(1998年8月)

集積回路は部品か?

関根康太郎

富士電機のICの現状と展望

目黒  謙

富士電機のICは,特定用途向け分野に特化し,特徴ある技術を基に製品開発を行っている。具体的には高耐圧技術(C/DMOS技術)やセンサ内蔵技術により,電源用IC,フラットパネルディスプレイドライバIC(プラズマディスプレイ,液晶ディスプレイ),カメラ用オートフォーカスIC,自動車用圧力センサ,カスタムハイブリッドICなどがあげられる。本稿では,デバイス・プロセス技術と主な製品の特徴について述べる。

カレントモード電源用CMOSIC

丸山 宏志

近年,環境問題の改善策として省エネルギー化が重視され,電気・電子機器に広く使用されるスイッチング電源の高効率化・低消費電力化がクローズアップされている。このため,待機時消費電力の低減を目的として,スタンバイモードを持つなどの工夫をした電源回路も増えてきている。富士電機では,制御ICの消費電流低減のため,高耐圧CMOSプロセス技術を,スイッチング電源用ICに適用し,CMOSタイプの8ピンのカレントモード電源用制御IC「FA1384xシリーズ」を開発したので,その概要を紹介する。

3チャネルDC-DCコンバータ用IC

山田谷政幸

携帯形電子機器の電源として用いられるDC-DCコンバータは小形化,軽量化,高効率化が必要不可欠になってきている。また,低動作電圧化も著しく,DC-DCコンバータを制御する低電圧対応のICが必要とされてきている。そこで富士電機では液晶ディスプレイ用電源を主用途とした,小形・薄形16ピンTSSOPパッケージ,スイッチング用MOSFET内蔵の3チャネルDC-DCコンバータ用IC「FA3629V」を開発したので,その概要を紹介する。

6チャネルDC-DCコンバータ用IC

遠藤 和弥

ビデオカメラなどの携帯形電子機器には小形・軽量化と,バッテリーによる長時間動作が求められている。これに伴い,これらの機器に内蔵されるスイッチング電源装置にも,小形・軽量・低消費電力化が要求されている。富士電機では,これら市場要求に対応して,多出力電源装置の構成に適した,6チャネルスイッチング電源用制御IC「FA3621F」を開発した。本稿では開発した制御ICの定格,特長,応用例を紹介する。

小形オートフォーカスモジュールの高性能化

森  賢一

カメラの自動焦点に用いられるオートフォーカス(AF)モジュールに適用した逆光対策技術,測距時間短縮技術について紹介する。逆光対策技術は,AFIC内部で逆光部分の高輝度データを除外することにより,被写体像データを得られるようにしたものである。また,測距時間短縮技術は,コントラストの高い領域のセンサ応答を除外して,ダイナミックレンジの幅を小さくすることにより,AFモジュールの測距時間を自動的に短縮するものである。

MOSアナログセンサを適用したオートフォーカスモジュール

田中  誠,小松 幸哲,榎本 良成

カメラの自動焦点に用いられるオートフォーカス(AF)モジュールに適用したMOSアナログセンサ技術,モジュールの小形化技術について紹介する。従来のディジタルデータ出力タイプのAFモジュールに対して,アナログタイプのAFモジュールはセンサピッチの縮小が可能となり,モジュールの体積が約1/2ながらほぼ同等の測距精度を実現できた。

誘電体分離プロセスを用いたカラーPDPドライバIC

澄田 仁志,平林 温夫,島袋  浩

張合せ基板とトレンチ技術を用いた誘電体分離プロセス(DIプロセス)による高耐圧化技術を紹介するとともに,カラープラズマディスプレイパネル(カラーPDP)ドライバICにおけるDIプロセス適用の利点と,DIプロセスを用いて開発したカラーPDPスキャンドライバICの概要について説明する。本ICはDIプロセスによる高密度集積を達成するとともに,高耐圧横形IGBTを搭載している。これにより,pn接合分離プロセスを用いた従来のICと比較して高性能化だけでなく,低コスト化をも達成している。

小形LCDコントローラ

加茂 宏明

情報・通信関連機器の表示部に使用されている液晶ディスプレイは情報伝達の手段,マンマシンインタフェースとして広く利用されている。本稿ではキャラクタ表示タイプの小形液晶パネル表示用コントローラドライバICを取り上げた。表示容量の多様化に対応した製品の系列について,その特徴,主要特性,応用例を挙げ概要を紹介する。

高耐圧CMOSプロセス技術

熊田恵志郎,横山  聡

液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ駆動用,電源制御用などのICに必要とされる高電圧,高出力,アナログ制御といった特性と小形化,低消費電力化といった要求を満足し得るプロセスとして,高耐圧デバイス,バイポーラデバイス,ロジックデバイスを1チップに集積可能とするCMOSプロセスの開発を行った。本稿では,このCMOSプロセスの概要と要素デバイスについて紹介する。

システムIC設計技術

吉田  豊,中原  健

半導体技術の発達により,複数の機能マクロから構成されるシステムを1チップに搭載するシステムICが実現可能となり注目されている。一方,複雑・大規模化したシステムICの開発期間短縮への要求は強まり,設計の自動化や実績のあるコア回路の再利用など,より一層の合理化が必要である。本稿では富士電機における設計の自動化への取組みについて説明し,実際の適用例としてUSBハブコントローラの開発を紹介する。

ディーゼルエンジン用圧力センサ

村上 忠義

RV(Recreational Vehicle),MPV(Multipurpose Vehicle)の拡大でディーゼルエンジン車市場が好調ななか,地球環境の面から燃費の向上によるCO2の削減,NOxおよび粒子状物質の排出削減が課題で,燃料噴射システムの最適制御がますます重要になってきている。燃料との混合ガスを作る空気量を精密に測定するために半導体式圧力センサが使用されるが,今回,ガソリンエンジン車用に続いてディーゼルエンジン車用を製品化したのでその概要を紹介する。

ICの品質保証

片岡 孝三

ICの品質保証に関して,基本的な考え方を新製品開発,生産準備,生産,納品までの4段階に分けて説明する。そのなかで,解析データを源流へフィードバックすることにより,製品の品質・信頼性の維持向上を図っている。重要なデータとなるICの故障解析データについて解析方法と解析例,故障モードと原因を一覧表にして紹介する。

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