富士時報
第73巻第6号(2000年6月)

無線ネットワーク特集/YAGレーザ加工特集

無線ネットワーク特集

技術開発とコンセプトブレーキング

服部  武

無線ネットワークの現状と展望

山本  斉,小塙明比古

携帯電話に代表される無線通信技術の進歩がめざましい。普及に伴い端末価格と通信料の低下が促進され,無線通信が身近で必須(ひっす)のものになってきた。アクセス系でも無線サービスが検討されている。ケーブル置換えの低価格無線技術も開発が進んでいる。富士電機ではラスト100 m領域に着目し,小電力無線技術を使い,特定エリアに分散している各種の機器間を接続する無線ネットワークの開拓を進めている。小電力無線適用が有効なアプリケーション分野の現状と課題について概説した。

無線を利用した自動販売機システム

杉野 一彦

自動販売機の設置場所では,電話回線などの配線工事ができない場合が多い。このため,自動販売機とセンター装置間でデータ伝送を行う情報収集システムや電子マネーに対応した自動販売機システムの通信手段として無線の利用が増えつつある。本稿では,これまで開発してきた無線を利用した自動販売機システムについて紹介する。

無線ネットワークを利用したスキーゲートシステム

吉富喜一郎

スキー場では,リフト券にワイヤレスカードを利用したシステムの導入が進んでいる。富士電機では1993年の冬からスキーゲートシステム機器の提供を開始している。今やワイヤレスカードを使ったスキーゲートシステムは,スキー場にとって集客のためのサービス性向上,省力化による収益向上の必須(ひっす)アイテムとなりつつある。また,従来にも増して正確な「情報」が必要であり,機器間のネットワーク化が不可欠となっているため広大なゲレンデを結ぶネットワークとして,「無線ネットワークシステム」が注目されている。

無線方式による自動検針システム

福島 興人,松本 栄治

近年,ガス業界では,通信機能を有する「マイコンメーター」を利用し,双方向通信にて自動検針,保安監視,遠隔開閉操作などのサービスを行っている。本サービスの普及拡大をめざし,大手都市ガス3社〔東京ガス(株),大阪ガス(株),東邦ガス(株)〕と富士電機を含めた電機メーカー3社で,無線方式による経済的な自動検針システムの構築と低消費電力型無線機の開発を行ったので紹介する。

フレキシブル無線ネットワークによる」
「総合エコ監視システム"EcoEASIEST"

安東 伸彦,福田 英治,山野 博之

富士電機の総合エコ監視システムはAnalysis(データ収集・解析),Computerization(取りまとめ・活用),Transmission(伝送)という3パラメータで構成され,"現場に優しい""役立つデータベース化"および"フレキシブルなネットワーク化"というコンセプトで構築されている。ISO14001や改正省エネ法でいう環境改善や省エネルギー推進に最適である。

無線式個人線量モニタリングシステム

小林 裕信,河村 岳司,井上  貴

富士電機では原子力発電所内の高線量管理区域に関して胸,両手,両足の被ばく線量データを無線でデータ管理装置へ伝送することにより,リアルタイムで被ばく管理するシステムを開発した。無線には特定小電力を使用し,ほかの線量計との混信がないようにした。 データ管理装置は,受信した各線量計の線量データなどを自動保存するほかに,線量計の校正および無線の保守機能を有する。本稿では,胸部および局部線量計とデータ管理装置を用いた無線式個人線量モニタリングシステムについて述べる。

YAG レーザ加工特集

精密加工・非接触マーキング分野におけるレーザ技術の現状と展望

千葉 芳弘,折笠 親一,新妻 正行

電子機器は小型化・高機能化の波にさらされており,それに搭載される部品類にはより厳しい要求が出ており,それにこたえていくことが存亡の条件になっている。本稿ではこれらの製品,部品を製造,管理するために最近とみにニーズが増している精密加工・非接触マーキング分野と,そのレーザ技術について述べる。

エコロジー・リサイクル分野へのレーザの適用
二つのエコロジーへのレーザの適用

植田  進,松山 修也,池田 孝文

YAGレーザマーカの市場は,近年のエコロジー意識の高まりにより飛躍的な市場拡大が始まっている。製造現場における環境対策(プロダクツエコロジー)とリサイクル過程における環境対策(リサイクルエコロジー)に対し,新型YAGレーザマーカ「ドライライター2000シリーズ」を用い,「エコロジーテーマ対応型YAGレーザマーカ」を企画・開発した。これらの内容と実際の応用事例を紹介する。

プラスチック分野へのレーザの適用

山村 辰男,外山 公一,中下 義春

レーザを使った物質表面へのマーキングはさまざまな分野へ適用されている。富士電機ではすでにYAGレーザマーカを製品化し, 主に金属部品へのマーキングに適用してきた。最近は,材料の多様化によりプラスチックへのマーキングの需要も多い。このプラスチックへのマーキングのためには,レーザ出力を一定に制御することが求められる。そこで,均一マーキング,高速処理の機能を持たせたドライライターDW2200を開発した。これにより,プラスチック部品への直接マーキングが可能になった。

精密加工・非接触加工分野へのレーザの適用

川村 浩徳,佐々木光祐,牧絵 達弘

電子・半導体分野では,小型・高密度化により半導体デバイス,LCD(Liquid Crystal Display)などの穴あけ,切断,トリミングなどの微細加工技術の必要性が増大している。YAGレーザは,対象ワークに最適な発振波長・形態・出力を選択でき,微細加工を実現する有力な手段として広く市場に認知されている。本稿では,生産ラインでもっとも導入が進んでいる基本波レーザを用いた微細加工機への適用事例を紹介する。

刻印・捺印等マーキング分野へのレーザの適用

高田  憲,岩崎 唯信,神谷 正一

地球環境保護に関する意識の高まり,製品リサイクルの義務化, 融通性のあるマーキングエンジニアリングなどのために従来方式に代わって多くの分野でレーザマーカが活発に導入されている。本稿では,刻印・捺印(なついん)などの従来方式との比較を行いながら,金属や樹脂へのマーキング分野でのレーザマーカの応用例・導入メリットなどについて紹介する。

精密微細加工分野への短波長レーザの適用

新妻 正行,長嶋 崇弘,藤井 政義

近年,急速に高まりつつある電子部品の微細加工要求に対して,紫外線波長のYAG第三高調波レーザを搭載したレーザ微細加工装置「FAL-4000」を開発した。この装置には,精密XYテーブルと位置決め用ビデオセンサを搭載し,種々の 加工用途に対応できるようにした。加工性能として実施例を挙げると,ポリイミド樹脂には焼け焦げのない高品質の穴あけが可能であり,銅板やシリコンウェーハに,穴径φ30μmでアスペクト比16以上の穴あけ加工を行うことができた。

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