富士電機のSDGs
ものつくりマイスター

ESG 環境・社会・ガバナンス

技能人財に輝きを。
富士電機のものつくりにさらなる進化を。

2023年2月更新。所属・業務内容は取材当時のものです

すべての技能者の「目指すべき姿」を定め、そのために必要な能力を身につけるための教育を行い、認定する。2020年度からスタートした富士電機の「ものつくりマイスター」は、すべての技能者に「やりがい」と「幸せ」を届け、富士電機のものつくりをさらに強化するための制度です。そこで行われる教育はどのようなものか。講師たちはどのような想いでそこに向き合っているのか。その概要と成果を紹介します。

ゴール・手段・メリットを明確に、技能者たちに強烈なメッセージを

技術・技能研修所 所長 中村邦広
技術・技能研修所 所長 中村邦広

「『高い技能』と『優れた改善・合理化力』を有する人財」。それが、ものつくりマイスターの定義だ。日々の業務の中で己の技能を磨いている富士電機の技能者たちは、ものつくりマイスター教育によってIE(Industrial Engineering)・VE(Value Engineering)、生産管理、コスト管理などを学び、改善・合理化力を身につける。そして、ものつくりマイスターに認定された技能者は、毎年の改善・合理化の取り組み成果に応じて、賞与に最大20万円のインセンティブが支給されることになる。ものつくりマイスター教育を担う技術・技能研修所の中村邦広所長は、同制度の意義を次のように話す。

「ものつくり企業である富士電機にとって、大きな意味のある制度だと思っています。ポイントは、技能者たちに『会社が何を求め、どうすれば次のステップに進めるのか』という指針を明確に打ち出していること。そのための手段となる教育機会を設けていること。さらには報酬制度と連動させることでより強いメッセージ性を持たせていることです。ここで新たな強みを手にしたものつくりマイスターたちが主体的にものつくりに付加価値をもたらし、富士電機のものつくりをさらに強化してくれると確信しています」

「意味のある場」を設けるために、教育の立ち上げに全力を尽くした

技術・技能研修所 青木澄夫
技術・技能研修所 青木澄夫

ものつくりマイスター教育は「QC(Quality Control)」「IE」「VE」「生産管理」「原価管理」「富士電機生産システム(FePS)」「作業リーダー教育」という7つの科目を年5回・3年間にわたって実施する。その教育体制の立ち上げには大きな苦労が伴ったそうだ。同研修所の青木澄夫は、起ち上げ時の苦労をこう振り返る。

「これまでに実施していた研修に加えて、各工場から選ばれた1,000人近いマイスター候補社員に新たな教育機会を設けなければならないわけです。体制の整備だけでも、大きな苦労がありました。講師をどう確保するのか。どのような体制で研修を回していくのか。工場総務と連携し、業務や生産活動に影響のないかたちをどう実現していくのか。コロナ禍によってオンラインでの実施を強いられる中で、どのようにディスカッション機会を設け、理解度を把握していくのか。とにかく頭を悩ませたというのが正直なところです。ただし、私自身はかなりのモチベーションで準備に向き合っていました。この制度に大きな意味があることは理解していましたし、これほど多くの技能者たちを支えていけることに喜びを感じました」

部門の垣根を越えた議論が改善のヒントを与えてくれる

技術・技能研修所 池田慎司
技術・技能研修所 池田慎司

2020年からの3年間でものつくりマイスター教育を受講した全工場の技能者はのべ2700名。すでに336名のものつくりマイスターが認定されている(2022年12月現在)。参加者たちの改善に対する認識は確実に強化しており、治工具の改善をはじめとした小さな改善が活発化し、建設的な提案も生まれ始めているのだという。この教育のメリットは単なる知識の習得に留まるものではない。同研修所で講師をする池田慎司は、同教育がもたらしたものを次のように語る。

集合研修では各地区の技能者たちが知恵を出し合い課題に取り組む
集合研修では各地区の技能者たちが知恵を出し合い課題に取り組む

「生産拠点間の距離を越えたコミュニケーションが参加者たちの刺激になっているようです。パワエレ エネルギーとインダストリー、発電プラント、半導体、食品流通など多様な事業を持つ富士電機だけに、発電や受変電設備などの巨大な製品をつくっている人もいれば、小さな半導体部品を手がけている人もいます。お互いに製品サイズも違えば、製造期間も1日のものもあれば数年かかるものもあるなどまったく違う。そんな人たちがそれぞれに現場の課題や悩みを語り合うわけです。話を抽象化して話さなければ前提が異なる相手には伝わらないため、課題の本質をつかむいい機会にもなっているようですね。その傾向は、オンラインの研修から解放され、実際に集合して研修を行うようになって、より強くなったと思います。参加者たちの目が輝き出す瞬間を目の当たりにできることは、私たち講師にとっても最高の瞬間です」

ものつくりは変化する。だからこそ、歩みは止められない

サプライチェーン改革からデジタル改革へと富士電機のものつくりは進化している
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サプライチェーン改革からデジタル改革へと富士電機のものつくりは進化している

数多の困難を乗り越え、新たな教育を立ち上げた。単なる知識の習得に留まらず、活きたコミュニケーションと主体性を育んだ。技術・技能研修所の面々は、その取り組みに確かな手応えを感じている。だが、彼らは現状に満足し、停滞することをよしとしない。絶え間なく変化し続けるものつくりに資する教育を実現するには、教える側も変わり続ける必要があることを知っているからだ。

「現場で活きるものを提供しなければ、この教育に意味はなくなってしまいます。だからこそ、私たちも変わり続けていかなければなりません。『改善・合理化の事例を知りたい』といった現場からの声を踏まえながら、教育内容もアップデートを続けているところ。すべての技能者に変革の機会を届けていきたいですね」(青木)

「ここで教えている基礎を現場でどう活かせるかは本人次第。だからこそ、『ここだけは覚えておいてくれ』といった勘所を伝えることを心がけています。この教育はリーダー層になるための必須研修となっていますが、義務感からは何も生まれません。現場のアクションにつながるような機会をみんなでつくりあげていきたいですね」(池田)

「富士電機は、ものつくりマイスター制度の他にも、技能者の力量を可視化し、より効果的な活躍機会と教育を提供するチャレンジを行っています。ものつくりの源泉はやはり人。富士電機の技能者を支え、確かな『芯』をつくりあげ、その飛躍を促すことで、一人ひとりの充実したキャリアと会社の成長を支えていきたいと考えています」(中村)

ものつくりマイスターの声

パワエレ インダストリー事業本部 東京工場 製造部 作業長 浅野淳志

パワエレ インダストリー事業本部 東京工場 製造部 作業長 浅野淳志

私は、東京工場の主力機種である制御機器や計測機器に搭載されるプリント基板の自動実装工程を見ています。マイスター教育では他工場のマイスターと班を組み、いろいろな意見交換をできたことで知識が広がりました。自分の現場に戻ると、今までと違う考え方で改善にアプローチできるようになりましたね。「従来通り」を疑い、非効率な作業はないか、他部署との連携でもっと効率が上がるのではないか、こうしたことを現場のみんなと共に考え、改善に取り組んでいます。

かつて、物量が多い時期には作業者は長時間労働が続き、職場全体が悲鳴を上げているように感じたことがありました。「作業者が健康でないとよい製品は作れない」。作業者の健康を守ることも作業長である私の仕事だと考え、活気ある職場で富士電機で一番の高品質な製品を効率的に作っていきたいと考えています。

パワエレ エネルギー事業本部 千葉工場 製造部 製造主任 兼 作業長 長谷川勝裕

パワエレ エネルギー事業本部 千葉工場 製造部 製造主任 兼 作業長 長谷川勝裕

千葉工場では、変圧器や開閉装置など特高から低圧までさまざまな受変電設備を製造しており、私は現在、絶縁加工の工程で作業長をしています。マイスター教育で他工場の方とのグループ討議や苦労話などを通じて、悩みや課題を共有できたことはよい機会でした。まったく違った製品を製作していても共通している課題も多く、自分と異なる考え方をする皆さんの話を伺っていくなかで、自職場の解決の糸口につながることも多くありました。マイスター教育で学んだ物事を数値で捉ることの重要さなどを活かし、数値化されていない熟練作業の自動化などに取り組んでいるところです。

「同じ作業なら楽をする、させる」。これは新人だったころ訓練校の先生から教えてもらったこと。私はこの言葉の中に、無理、無駄なく、安全に、的確に、素早くなど、ものづくりの大切な要素が詰まっていると考えています。これを体感できる職場にしていけるよう、改善活動を進めていきます。

貢献するSDGs目標

働きがいも経済成長も

当社は、行動規範「企業行動基準」の中で、「人を大切にします」と宣言し、社員一人ひとりの成長とチームの総合力の発揮を実現する人財育成の強化を表明しています。これは当社のSDGs目標「8.働きがいも経済成長も」に貢献するものであり、ものつくり教育では、職種や階層、個人の技能レベルに応じた教育を計画的に行い、グローバル競争力につながる生産技術者、技能者の育成を目指しています。