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富士電機製品コラム

産業分野で使われる飽和蒸気とは何か? 過熱蒸気との違いは?

蒸気は、私たちの日常生活に欠かせない身近なものですが、産業分野でも縁の下の力持ち的な存在として幅広く使われています。例えば食品・飲料業界、化学・石油業界、紙・パルプ業界、鉄鋼業界などの現場で、とても重要な役割を担っているのです。

蒸気には、その状態によって「飽和蒸気」と「過熱蒸気」があります。まずは、この違いについて押さえておきましょう。

飽和蒸気は、一定の圧力のもとで水を加熱し、水と蒸気が平衡状態になったものです。つまり、ごく簡単にいうと「水を沸騰させて得られる水蒸気のこと」です。飽和蒸気には少量の細かいミスト(水滴)が含まれています。そのため「湿り蒸気」と呼ばれており、加熱・加湿用などによく使われている一般的なものです。この湿り蒸気をボイラーで再加熱して、ミスト分を蒸発させたものが「乾き蒸気」です。

過熱蒸気のほうは、飽和蒸気をさらに加熱し、沸点よりも温度の高い状態にして、タービンなどの動力源として活用します。なお、これ以降は過熱蒸気には言及せず、飽和蒸気の利用法を中心に紹介します。

例えば食品・飲料業界の現場では、下記のような目的で、主に飽和蒸気を利用しています。

利用シーン 目的
加熱 茹でる、煮る、フライなど調理のために、生産物もしくは使用水・油などに熱を加えて所定温度に昇温させる。
乾燥 熱風などで食品の水分を蒸発させ、乾かす。
蒸し・加湿 湯気をあててふかす。乾燥を防ぎ、湿度を保つ・高める。
焼成 高熱で焼く。
濃縮 煮詰めて濃度を高める。
蒸留 混合物から特定の成分を加熱・分離して取り出す。
滅菌/殺菌 細菌・微生物を加熱により死滅させる・除去する・不活性化する。
洗浄 洗い、すすぎ、清める。

このように飽和蒸気は、加熱、乾燥、蒸し・加湿、焼成、濃縮、蒸留、滅菌/殺菌、洗浄といった各種の生産工程で欠かせないものになっているのです。

工場や設備において、なぜ飽和蒸気が重要なのか? その主な理由とは?

では、なぜ飽和蒸気が産業分野で、これほど重宝されるのでしょうか? その理由は、蒸気の熱によってモノが加熱されると、素早く均一に熱が加えられ、品質や生産性が向上するからです。これによりムラのない加工や滅菌などが行えるようになります。

また飽和蒸気は、温度と圧力をコントロールしやすい点も、産業界で活用される理由に挙げられます。温度が決まれば圧力が決まる、あるいは圧力が決まれば温度が決まるため、温度と圧力の調整により、容易に目的の圧力や温度にすることができます。

さらに、水を使うことにより、低コストで済みますし、安全というメリットもあります。水蒸気は、液体の状態(水)よりも熱伝達率が高いため、熱を加える際には伝熱面積を小さくすることが可能です。そのため設備に対する投資も抑えられるわけです。

飽和蒸気を工業分野で上手に活用する3つのポイント

飽和蒸気には多くのメリットがありますが、蒸気を産業分野でうまく活用するために、

1.適正圧力での蒸気供給
2.良質な蒸気供給
3.蒸気流量の計測

という3つのポイントを押えておきましょう。

まず1つ目のポイントですが、これは前節でも触れましたが、蒸気を使う各種機器に対して、適切な条件(温度と圧力)で、蒸気を効率よく制御して、供給することが大事です。例えば、温度を一定に維持するためには、「減圧弁」と呼ばれる装置を使い、変動する飽和蒸気の圧力を一定に保つ必要があります。

また2つ目のポイントでは、機器の損傷や振動、騒音などのトラブルが起きないようにするために、良質な蒸気供給が求められます。飽和蒸気は、冷えるとお湯(これを「ドレン水」と呼ぶ)に戻りますが、それが配管や熱交換器などの設備に滞留すると、加熱を妨げてしまったり、「ウォータハンマー」と呼ばれる現象が起きて、機器を損傷させるリスクがあります。そこで、ドレン水を適切に排出する必要があります。

3つ目のポイントでは、流量計測の精度、測定レンジ、取り付けやすさ、メンテナンス性がポイントになります。流量計測については、省エネの観点からも重要です。蒸気の状態を把握して、もし配管などから漏れがあった場合には、対処する必要があります。

なお、運用面では、これまで蒸気流量計を設置する際は配管を切らなければならなかったため、一時的に設備を止める必要があり、設備の改修時などのタイミングで取り付けていました。そこで、いつでも簡単に流量計を設置できるような仕組みが求められています。

蒸気計測で使われる流量計の主な方式には、どんなものがある?

前出の3つのポイントのうち、特に重要な点が蒸気流量の計測です。蒸気流量の状態を「見える化」できれば、省エネやコストの削減につながるからです。そこで、蒸気の流量を測定する装置「蒸気流量計」が使われるわけです。

蒸気流量計には多くの種類がありますが、主な測定方式を大別すると、次のように「超音波式」「渦式」「差圧式」に分類できます。

方式 超音波式(クランプオン) 渦式 オリフィス式(差圧)
計測の種類
配管工事 ○ 不要 × 必要 × 必要
精度 △ ±3〜5% rdg. ◎ ±1〜2% rdg. ○ ±2% rdg.
圧力損失 ○ 無し × 有り × 有り
最小流量 ○ 流量ゼロから測定可能
(不感帯なし)
× 最小流の量制限あり
(不感帯あり)
× 最小流の量制限あり
(不感帯あり)
レンジアビリティ ◎ 2レンジ切替機能あり ▲ 広い × 狭い

※赤い網掛の箇所はウイークポイント

よく使われているのが「差圧式」や「渦式」による蒸気計測です。差圧式は、蒸気が通る管路に「オリフィス式」と呼ばれる絞りを挿入し、その前後の圧力差から流量を測ります。また渦式は、管路内に発生する渦(「カルマン渦」と呼ばれる)の状態(周波数)を計測して流量を求めます。超音波式は、管路を流れる蒸気に超音波を伝搬させ、流れの順/逆方向の伝搬時間の差から、流量を算出する方式です。

これらの計測方式には一長一短があり、自社の生産物や設備に適した流量計をチョイスすることが重要になります。例えば、差圧式/渦式は、計測精度は比較的よいものの、管路の蒸気と接触して流量を測定するため、計測時に圧力の損失が生じたり、低速レンジでの計測が難しい(不感帯の発生)という点が課題として残っています。運用面では、流量計を配管内に設置するため、取り付けやメンテナンスに手間がかかります。

一方、超音波式は、超音波を伝搬させる非接触型の測定法になります。特にクランプオン式では、配管外側からクランプで挟めばよいので設置が簡単です。なによりも蒸気に対して非接触で測定するため、圧力損失がなく、流量がゼロの状態からでも測定できる(不感帯なし)というメリットがあります。また、メンテナンス時もクランプオン式なので設備を停止する必要はありません。測定精度は、差圧式/渦式より若干落ちますが、蒸気計測では±3~5%でも特に影響がない範囲といえます。むしろ、それよりも不感帯がなく、低速での流量をしっかり計測できる点が、超音波流量計のポイントと言えるでしょう。

超音波式流量計は、流れの状態を把握するための「優れた第三の選択肢」となるものです。さらに詳細について知りたい方は、こちらの記事をご覧いただければ理解が深まるでしょう。

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