富士電機製品コラム
インバータの仕組み?

インバータの仕組み?

その基本構造と「何を・どう制御するの?」を簡単に解説

インバータ装置の理解はコンバータ回路/インバータ回路から

ここではインバータ装置の仕組みについて、詳しく解説します。インバータ装置は電源の電圧や周波数を制御し、家電製品や産業用機械に使われるモータの回転速度などを無段階で連続的に変化させる装置です。

インバータ装置の内部構造について、まず押さえておきたい点は、電源から入ってきた交流(AC)を直流(DC)に変換する「コンバータ回路」と、変換された直流を再び交流に戻す「インバータ回路」がセットになって使われていることです。以下、両者の役割と原理について、その流れを追ってみましょう。

インバータ装置の仕組み

まず、前段で使われるコンバータ回路で一定の交流を直流に変換します。これを「整流」と呼びます。交流は正弦波なので、時間とともに波の向きと大きさが周期的に変化します。そこで、直流に変換するために順方向の電流を通し、逆方向の電流を通さない半導体素子のダイオードを使います。

ダイオードに交流を流すと、順方向のみ電流を通し、正方向の山の部分が現れます。ただし、これでは負方向の山を通さないため、半サイクルぶんが無駄になってしまいます。そこで、これも通せるようにダイオードをブリッジ構成にして、負方向の山の部分も順方向に流れるようにするのです。正と負すべての波の山を変換するので、これを「全波整流」と呼びます。

しかし、まだ全波整流しただけでは、キレイな波形とは言えません。交流の名残があり、さざ波状の電圧変動が含まれています。そこで、これらをキレイに整えるために、コンデンサによって充電と放電を繰り返しながら、なだらかに平滑して、直流に近い形に変えます。

次に、インバータ回路で電圧や周波数を変えた交流を出力します。直流/交流変換の仕組みは「IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)」などのパワートランジスタをスイッチングし、そのON/OFFの間隔を変えて、幅の異なるパルス波を作ります。それらを合成し、疑似的な正弦波にするのです。これは、「パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)」と呼ばれています。

パルス幅の制御は、コンピュータが自動で実行。モータを制御する専用ワンチップ・コンピュータの中には、あらかじめPWM機能が組み込まれた製品もあります。これにより、パラメータを指定するだけで、様々な周波数の疑似的な正弦波を作り出し、モータの回転速度を自在にコントロールできるのです。

PWM:パルス幅の制御イメージ

インバータ装置や回路の利用事例を、電圧と周波数で分類する

インバータの回路や装置は、家庭用のエアコンや冷蔵庫、IH調理器、蛍光灯、コンピュータ用の電源装置(無停電電源UPSも含む)、産業用のファン、ポンプ、エレベータ、クレーンなど、様々な用途で幅広く利用されており、私たちの生活に欠かせないものになっています。

このうち冒頭で触れたように、家庭用のエアコンや冷蔵庫、産業用のポンプ、エレベータなどは、モータの回転速度を調整するために、インバータ回路や装置が活躍しています。このケースでは、インバータが電圧と周波数の両方を変えるために使われており、可変電圧・可変周波数という意味で「VVVF(Variable Voltage Variable Frequency)」と呼ばれています。

また、IH調理器、蛍光灯にモータは内蔵されていませんが、インバータ回路で周波数を変えることで、発熱や明るさを微妙に調整しています。

例えば、IH調理器は鍋を発熱させるコイルに高周波を使っており、そこにインバータ回路が活用されています。蛍光灯も交流を高周波にして点灯速度を早め、低消費電力でも明るさを保ち、チラツキを抑えています。この時、インバータ回路は周波数のみを変えているため、一定電圧・可変周波数という意味で「CVVF(Constant Voltage Variable Frequency)」と呼ばれています。

最後になりますが、コンピュータ用の電源装置でもインバータ回路が働いています。一定の交流(直流もあり)の電圧や周波数から、一定の交流の電圧や周波数を出力するために用いられるので、あまり意味がないと思われるかもしれません。しかし、交流の商用電源の周波数が変動したり、停電が起きた場合に、安定電源として利用できます。こちらは一定電圧・一定周波数なので、「CVCF(Constant Voltage Constant Frequency)」と呼ばれています。

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