e-自治体 文書管理システム
事例:神奈川県庁様

機能改善と現場の働きかけで電子決裁率80%超を達成
引き続き完全電子化による紙文書からの脱却を目指す

神奈川県庁の皆様

2011年の東日本大震災で公文書の毀損・滅失を目の当たりにし、紙から電子的文書への本格移行を検討しはじめた神奈川県庁。全庁規模で利用できる電子決裁・文書管理システムとして、富士電機の「e-自治体 文書管理システム」を導入。2022年3月末の電子決裁率100%目指し、取り組んでいます。

背景と課題
20年前に導入した文書管理システムは、利用範囲が限られ紙中心から脱却できず

2011年3月の大震災が契機となり、全庁で本格的に利用できる文書管理システムを模索

神奈川県庁における文書管理システム導入の歴史は1999年にまで遡ります。当時はまだパッケージ製品などもなくスクラッチ開発したものの、ネットワークを含め庁内のIT環境が現在と比べ貧弱だったこともあり、システムのレスポンスが遅い状態でした。このため、全庁規模で一般文書の電子決裁を利用することは難しく、会計システムと連携した一部用途に限定して利用していました。そうしたなか2011年3月の大震災で被災した役所において、紙で保管していた公文書の毀損や滅失が広範囲に発生。このような事態を回避する意味でも、電子化の領域・対象をより拡大しようという機運が生まれました。

文書保管にともなう工数・コストの削減や業務効率改善のためにも、全庁規模の電子化が必要に

神奈川県 総務局 組織人材部 文書課 課長 山田 博久 様
神奈川県 総務局
組織人材部 文書課 課長
山田 博久 様

もちろん、ペーパーレス(紙文書の削減)によってコストを削減したいという狙いもありました。われわれ文書課が管理する書庫には、毎年段ボール2,500箱にのぼる公文書が運び込まれますが、運び込みの工数はもちろん保管のためのスペースも必要で、廃棄まで含めたライフサイクルを考えると相当なコストがかかります。こうした工数やコストの削減には電子化による紙の文書削減が効果的です。保管する公文書が増え続けて書庫がパンクするのを回避するためにも対策が急がれていました。
さらに、昨今の“働き方改革”の潮流のなかで県庁全体の業務効率向上を目指すうえでも、より多くの職員が利用できる文書管理システムの必要性が高まっていました。

解決と効果
初年度から紙を1割削減+電子決裁率も30から40%から80%超に拡大

他自治体での豊富な導入実績や県の業務との適合性などを重視し「e-自治体 文書管理システム」を選定

スクラッチ開発した以前のシステムはレスポンスに難があり利用が広がらなかったこともあり、確実性を重視し、多くの自治体で導入実績が豊富なパッケージ製品を比較検討しました。県の業務との機能適合性やコストなど20項目以上で総合的に評価した結果、もっともすぐれていた富士電機の「e-自治体 文書管理システム」を選定し、2016年12月に契約を締結しました。もともと「e-自治体 文書管理システム」の業務適合性は非常に高かったのですが、一部県独自の業務(公文書館への引渡し)について開発(カスタマイズ)を富士電機さんにお願いし、2018年4月から本稼働しています。

併用決裁の仕組みを追加し、トップダウンとボトムアップの両方で働きかけた結果、電子決裁率80%以上を達成

実際の目に見える効果としては、1年間で書庫に持ち込まれる箱が約1割削減されました。初年度はこの程度の実績ですが、システムの利用拡大により、今後、削減量は徐々に増大していくと考えています。電子決裁率という点では、コロナ禍が拡大し始めた2020年春までは、研修や操作方法の動画公開などで利・活用促進を図ってきましたが、30~40%で推移していました。その後の緊急事態宣言発令でテレワーク対応が必要になったこともあり、同年9月にトップダウンで「電子決裁率100%を目指す」方針とし、原則電子決裁の利用を全職員に対し打ち出し、紙で回ってきた起案文書については所属長から「なぜ電子決裁でまわせないの?」と聞いてもらうようにした結果、電子決裁率が急上昇し今では80%超に達しています。

神奈川県 総務局 組織人材部 文書課 主査 長沼 俊行 様
神奈川県 総務局
組織人材部 文書課 主査
長沼 俊行 様

電子決裁率の向上については、富士電機からの提案を受けて“併用決裁”の仕組みを追加したことも大きかったと思います。決裁業務では、起案書のほかに資料など大量の文書を添付するケースがほとんどですが、起案と決裁だけ電子化して添付文書は紙のまま回す方式が併用決裁です。ペーパーレスの効果は限定的ですが、まずは電子決裁に慣れてもらうという意味では有効だと判断し導入した結果、電子化のハードルが下がり電子決裁率の急上昇につながったというわけです。当初は新たな電子決裁の半分以上は併用決裁になってしまうだろう…と考えていたのですが、蓋を開けてみると併用決裁は3割程度にとどまり、7割近くが添付文書も電子化された完全な電子決裁でした。

今後の展望
継続的な改修で機能・利便性を向上させ、紙の完全電子化を目指す

2021年3月末の電子決裁率100%を目標に、現場主体で運用の工夫を呼び掛け紙の削減を目指す

神奈川県 総務局
組織人材部 文書課 主事
鈴木 淳希 様

併用決裁を認めたことで電子決裁率80%超を達成しましたが、神奈川県では、2022年3月までに電子決裁率100%を目標に掲げています。この目標達成を目指すと同時に、紙の廃止という究極の目標を目指すうえでは、併用決裁率を減らして、添付文書も含めた完全に電子化を推進していく必要があります。そのためには、たとえば工事図面など一部専門的な添付文書(資料)については、起案時に複数の技術職員があらかじめチェックすることで紙の添付を不要にするなど、現場主体の運用の工夫を呼びかけ、紙の削減を推進していきたいと思います。

アンケートで好意的な声が多数を占めるが、引き続きシステム改修による利便性向上で利用拡大を目指す

2020年末に全所属を対象にアンケートを実施し、文書管理システムの導入によってどういう恩恵があったかを聞いたところ、「物理的に離れている場所の決裁をとりやすくなった」「回議の状況が把握しやすくなった」「テレワーク対応がしやすくなった」「過去の文書をベースに簡単に起案できるようになった」などの声が多数寄せられ、全体として好意的な感触が得られました。我々としてはこうした結果に満足することなく、利用が増えることで見えてくる課題や要望に対し、毎年予算を確保してシステム改修を進めています。富士電機さんとは月次でミーティングしており、ちょっとした改善要望などを伝えるとすぐに対応してくれるの大変で助かっています。今後も機能改善を含め積極的にご提案いただきつつ、より使い勝手の良いシステムに育てていきたいと思います。

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