物流倉庫の基礎知識
物流センターのKPI

「KPI」とは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と言います。このKPIは物流現場の効率化やコストマネジメントを行ううえで重要な基準となる数値となります。またKGI(key Goal indicator、目標達成指標)に向けたプロセスを数値で評価するために利用されます。一般的に評価の視点としては「財務指標」「コスト指標」「品質指標」などがあります。
物流業界においては国土交通省が公開している「物流事業者におけるKPI導入の手引き」という資料が公開されており、物流事業者の経営高度化などに役立ちます。「物流管理」が適切に実施されているかどうかを数値で評価できることを目的にしています。
WES(倉庫実行管理システム)はWMSでは管理しきれない物流現場のデータをリアルタイムに把握することができます。マテハン機器やIoT機器の制御を可能にし、作業と設備の稼働を一括管理を可能にします。
ここでは物流にテーマを絞り、物流のKPIについて説明をしています。
KPIを活用した物流倉庫の改善活動状況
富士電機が実施した「物流・倉庫部門における改善活動に関する動向調査」によると、KPIを活用した改善活動について「積極的に活用している」、もしくは「ある程度活用している」との回答は全体の28%という結果になりました。
物流倉庫の改善活動では5S活動が普及していますが、これと比較するとKPIを活用した取り組み状況はまだ浸透はしていないと考えることができます。一つの要因としては、KPI活用に関する知識がないことであることが調査結果から読み取れます。従業員規模別での集計では、従業員規模が大きい企業ほどKPIを活用した改善活動への取り組みが進んでいる傾向が見られました。
KPIを用いるメリット
国土交通省の「物流事業者におけるKPI導入の手引き」では物流現場においてKPIを用いるメリットを紹介しています。具体的には「問題の見える化」できること、「コミュニケーションの促進」されること、「合理的で公平な評価」につながること、の3つです。以下では、それぞれのメリットについて解説します。
・「問題の見える化」
物流倉庫の効率化や改善活動を進めていこうとした場合、現在の作業やプロセスの優劣を評価することは容易ではありません。感覚的な優劣が付けられる人がいたとしても、「どれぐらい優れているか」はなかなか説明ができないと思われます。また物流センターや物流倉庫は広く、もしくは在庫品やマテハン機器が多くあり、働く人々のスキルも一定ではありません。拠点や作業が増えれば、より評価が難しくなります。
KPIを用いることで、物流の作業やプロセスを定量的に評価できるようになります。数値化することで現状の問題点を正確に把握できるようになり、また目標指標を設けることで業務改善活動がしやすくなります。例えば、「誤出荷を減らそう」と目標を立てても、どれぐらい減らせばよいか明確ではなく、また改善前・改善後の比較も困難です。KPIが明確になれば「現状の誤出荷率は0.5%ある」「誤出荷率を0.2%減らすためにはどうすればよいか」と目標設定ができ、改善策も検討しやすくなります。
・「コミュニケーションの促進」
物流業務にはさまざまな人が携わります。業務改善を進めるためには、物流拠点ごと、従業員ごと、取引先や自社に関係するステイクホルダーなどさまざまな人たちとコミュニケーションをとる必要があります。すなわち現状の課題や改善目標を正確に共有・認識してもらう必要があります。
KPIを用いることで、関係者間での情報共有が容易になり、業務改善に向けた意識の統一、効率的な改善推進が可能になります。
・「合理的で公平な評価」
物流業務の改善活動を数値で客観的評価ができるようになります。KPIが設定されていなければ、物流業務に携わる人々がどこで努力をした評価できず、正しい人事考課が難しくなります。正しく評価されない場合は、改善活動の継続はきたいできず、結果として物流業務改善が進まないということになってしまいます。
KPIを設定した場合、データで結果が評価できるようになるため、人やチームなど改善活動にたいする努力を評価しやすくなります。また、KPIは評価方法が属人化しにくいため、長期的な改善活動を可能にします。
PDCAサイクルマネジメントとKPI
一般にPDCAサイクルマネジメントが業務改善に有効であることが知られています。計画・実行・チェック・評価にも数値化されたKPIが使われます。つまりKPIを設け、物流業務を数値化することで、物流業務の改善活動を進めることが可能になると言えるのではないでしょうか。
物流におけるKPIには以下のような項目があります。どのKPIが重要なのかは、業種業態、また荷主側・物流側の視点により適切な項目を選択する必要があります。
物流におけるKPIの例
コスト・生産性
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保管効率(充填率、坪効率等)
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人時生産性(庫内作業)
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数量当たり物流コスト
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日次収支(物流センター)
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実車率
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実働率
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積載率
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日次収支(トラック)
品質・サービス
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棚卸差異
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誤出荷率
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遅延・時間指定違反率
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汚破損率
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クレーム発生率
物流条件・配送条件
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出荷ロット
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出荷指示遅延件数
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配送頻度
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納品先待機時間
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納品付帯作業時間
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納品付帯作業実施率
一般的にこれらのデータの活用はリアルタイム性が求められますが、一方でKPI管理に必要な情報を集めるためにはそれなりの時間・労力が必要になります。近年では倉庫実行システム(WES)やWMSを活用することで、KPI管理そのものの効率化が進んでいます。上記KPIの詳細は国土交通省の「物流事業者におけるKPI導入の手引き」で詳しく紹介されています。